FOSSソフトウェアしか使わない簡単なビデオ製作

今日、デジタルビデオ編集はすっかり身近になり、趣味のコンピュータを楽しむ人やアマチュア映像作家にとって当たり前のものになったが、多くの人はLinuxを使ったビデオ製作は平均的なコンピュータ・ユーザには不可能だとか、難しすぎると思うようだ。そんなことはない。ビデオのキャプチャを手始めに、編集、DVDのオーサリングやエンコーディングに至るまで、高品質のビデオをフリーのオープンソース・ソフトウェアで簡単に製作できる。

必要なのは、以下のアプリケーションである。
Cinelerra – ノンリニア・デジタルビデオ・エディタ/コンポジッタ
Kino – FireWire対応DVビデオ・キャプチャ
Xawdecode – アナログ(VHS/カムコーダー)ビデオ・キャプチャ、DVBキャプチャ、ストリーミング、TV/DVR機能
MEncoder – ビデオ変換
DeVeDe – DVD/VCD製作を簡単にするMEncoder GUI
MPlayer – DVDおよびビデオの再生
dvd::rip – DVDビデオのリッピング
Firefox(含Flash 9プラグインおよびVideoDownloaderエクステンション) – Webからのビデオ・キャプチャ
K3b – DVD/VCDイメージの書き込み

上記のツールをまとめて一度に入手するには、Debianベースのフリー・ディストリビューションEliveをダウンロードし、インストールするとよい。多くの場合にビデオ・プログラムはサイズが大きく、依存関係が多いため、ディストリビューションに最初から組み込まれたパッケージがない場合は難しいコンパイルの実行を迫られるが、Eliveを使うことでこの手間が省ける。Eliveでは、最新バージョンのCinelerra、高機能のビデオ・エディタ、ビデオ・コーデック、プロプライエタリのグラフィックス・ドライバ、ビデオ/DVDの再生ソフトウェアがあらかじめインストールされ、すぐに使用できる。CDに収録されていないビデオ関連ソフトウェアが必要な場合もダウンロードによる入手は簡単だ。Eliveのパッケージ・マネージャから、Christian Marillat氏が作成したDebian用マルチメディア・ソフトウェアの優れたリポジトリにアクセスできる。

ビデオ編集の最初のステップは、フッテージをキャプチャ、リッピング、またはダウンロードしてハードディスクに保存する作業である。Cinelerraを使ったキャプチャはうまくいかなかったが、素晴らしいキャプチャ用FOSSツールが他にある。Kinoやdvgrabは、FireWireリンクからDVフッテージをキャプチャできる。また、Video4Linux対応デバイスがあれば、XdTV(別名Xawdecode)を使ってアナログ・ビデオ・ソースからキャプチャできる。XdTVで高品質のアナログ・ビデオ・キャプチャを得るには、FFMpeg Mjpegコーデックを指定してAVIコンテナを使い、品質設定を”Full”に設定する。このオプションは、”Record Movie”のビデオ・パラメータ・メニューにある。最良の画像を得るには、輝度(brightness)、コントラスト(contrast)、色相(hue)、カラー値を調整することが必要だ。VHSからキャプチャする場合、ビデオデッキにコンポジット映像端子やS-Video端子がなければ、SCARTをコンポジットやS-Videoに変換するケーブルが必要になる。

dvd::ripを使うと、映像用DVDからのリッピングはあっと言う間だ。DVDを丸ごとリッピングすることも、チャプターを選んでリッピングすることもできる。dvd::ripの出力は.vobファイルに保存されるが、このファイルは変換せずに直接Cinelerraにインポートできるので、リッピング後にDivXやXvidにエンコードするために時間を浪費することも、その変換でビデオの画質を損なうことも避けられる。

LinuxでDVDの再生やリッピングを行うには、libdvdcss2という名のパッケージをインストールする必要がある。法的な理由で、このパッケージをデフォルトのインストール構成から除外したディストリビューションが多いので、注意が必要だ。

YouTubeのようなWebサイトにあるビデオをCinelerraにインポートするのは、ややトリッキーな作業である。.flv形式のFlashビデオ・ファイルがCinelerraでサポートされないからだ。このファイルをインポートするには、Flash 9プラグインとFirefox VideoDownloaderエクステンションをインストールする必要がある。ビデオが再生されるWebページからそのビデオをダウンロードするには、Firefoxウィンドウの右下にある2つの青い四角形をクリックすればよい。これで、ビデオの保存場所を指定するダイアログが表示される。ファイルは、.flv拡張子付きで保存する。

VideoLANの”File”メニューから起動できるビデオ変換ウィザードを使うと、FLVファイルをCinelerraにインポート可能な形式(MPEGなど)に変換できるが、今回試してみたバージョンでは出力ビデオの最初の数秒に邪魔な緑色の異物が映り込んだ。結局、MEncoder用のスクリプトを使って、FLVファイルをXvid形式のAVIファイルに変換することに成功した。

Cinelerraのユーザインタフェースは、使いにくいわけではないが、PremiereやAvidのデッドコピーではない。Rob Fisher氏の素晴らしいチュートリアルを利用すれば、約15分でCinelerraの基本をマスターできる。Cinelerraを標準の1024×768 SVGAディスプレイで使うことは可能だが、狭すぎると感じるかもしれない。ビデオの編集作業よりもウィンドウの切り替え作業に時間を取られるだろう。最大の生産性を得るため、マルチヘッドのディスプレイをセットアップすることを強くお勧めする。

作品の編集が終わった後、ファイルを映像用DVDに焼いて保存できる。Cinelerraはさまざまなビデオファイル形式をレンダリングできるが、残念ながら映像用DVDで使われるMPEG2-PSはサポートされていない。私の場合、映像品質の低下を最小に抑えるためにRaw DV形式でレンダリングすることが多い。品質の低下は、圧縮比率の高い他のビデオ・コーデックでよく起こる。レンダリングの終了後、.dvファイルが生成される。これはMPlayerで再生できる(dvコーデックがインストールされている場合。このコーデックはw32codecsパッケージに含まれる)。再生したビデオのできばえに満足できれば、DeVeDe変換ツールを使って、DVD、VCD、SVCDはもちろん、CVCDディスクにもビデオの書き込みが可能だ。DeVeDeで生成される.isoファイルは、K3bなどの書き込みアプリケーションを使ってディスクに書き込める。

Linuxが大手映画スタジオで人気を博しているのには、当然の理由がある。ほとんどのプロプライエタリのオペレーティングシステムと比べて技術面で優位にあり、データの処理は高速で、しかも信頼性が高い。DeVeDeのようなツールの登場と、CinelerraやXdTVなどの主要アプリケーションの顕著な進歩のおかげで、過去12か月の間にLinuxのビデオ製作は容易になり、成熟度を増した。今や平均的なコンピュータ・ユーザでも、LinuxとFOSSのビデオ・ソフトウェアがもたらすパワーを存分に活用できるのである。

NewsForge.com 原文