SambaがNovellにMicrosoftとの提携解消を要請
SambaチームはNovellとMicrosoftの提携を非難している。そこで我々はSambaのメンバーであるAndrew Tridgell氏に、Microsoftが真剣にフリーソフトウェアコミュニティとの間の緊張緩和に取り組むとしたら、フリーソフトウェアコミュニティとの間でどのような交渉が可能だっただろうか、と尋ねた。
「まずはSFLCとの話し合いを始めるべきだっただろう。NovellがSFLCとEben Moglen氏に相談もせず、何ヶ月もMicrosoftと交渉して今回の提携に至ったことに、私は非常に失望している」(Tridgell氏)。
Sambaチームは前述の声明発表の前に非公式にNovellとの話し合いを持ったそうだが、Tridgell氏はこれについて「Novellにも、より広い範囲にわたるフリーソフトウェアコミュニティにも、我々の懸念を確実に理解してもらいたかったのだ」と話している。
Tridgell氏によると、Sambaチームは声明に対する具体的な回答をまだ受け取っていないという。ただし、Sambaチームは「特許に関する合意についてはNovellの何人かと話し合った」と彼は述べている。SFLCのEben Moglen氏もまた、「NovellがMicrosoftとの提携を発表して以来、Novellとは広い範囲で協議を重ねてきた」と語っている。
Moglen氏によると、SFLCはNovellとMicrosoftとの提携内容の確認を終えてNovellからは「全面的な協力」を得ており、また現在SFLCはNovellとの調整に向けて作業を進めているという。
「Novellは我々が目を通す必要のあるものを提示してくれたし、こちらからの質問に答えてもくれた。それにSFLCはNovellの上級役員たちにも何の制約もなく自由に連絡を取る許可も得た。現在、我々はクライアントの法的な利益を守るための平和的交渉を進めており、法的な強制措置が絡むような手順を踏む可能性は皆無だと見ている。ただし、我々がこの事態を平和的に収拾できなかった場合には、状況は変わるかもしれない」(Moglen氏)。
何が問題なのか
Moglen氏によると、NovellとMicrosoftとの間の特許の合意が問題となっているのは、それが差別的な内容であり、商用フリーソフトウェアのコミュニティと非商用フリーソフトウェアのコミュニティとの分断をはかる脅威になるからだという。
「Microsoftが純粋かつ真摯にこうしたフリーソフトウェアコミュニティの輪に加わりたいと考えているかどうかは別にして、Microsoftがあるディストリビューションにフリーソフトウェアの配布に対してロイヤリティを支払わせることに成功すると、他のディストリビューションもそれに倣うことになる。いや、そうしなければならなくなる。こうして首尾よくフリーソフトウェアコミュニティの商用セクタに入り込んで非商用セクタを分離してしまえば、Microsoftは自社の特許を活用し、自らの顧客を訴える心配なしに非商用セクタにおけるソフトウェアの開発を阻止する訴訟を起こすことができる。今までMicrosoftが特許資産を用いて不当な行為に出られなかったのは、自分たちの顧客に対して訴訟を起こしてしまうリスクがあったからだ」(Moglen氏)。
Microsoftのねらいが、フリーソフトウェアコミュニティとの友好関係を築いてLinuxを求める顧客の声に応えることではなく、今回の提携を利用してLinuxコミュニティを分断することにある、という疑いが少しでも出てくれば、シアトルで行われたProfessional Association for SQL Server(PASS)カンファレンスで昨日Steve Ballmer氏(米MicrosoftのCEO)が述べたコメントなど気にする必要はなくなる。Linuxworld.com.auによれば、Ballmer氏は次のように語ったという。「Novellは当社に相当な額を支払うことで、SUSE Linuxのユーザは誰であれ(Microsoftからの特許侵害訴訟に際して)適切に扱われることを顧客に伝える権利を手にした。すべてのLinuxユーザは、バランスシート上の負債(訴訟を受けるリスク)を抱えていることを基本的に知らされていないのだ、と我々は考えている」
こうした問題の根源になっているのはNovellとMicrosoftとの特許協定である。一方でMoglen氏は、まだ公になっていない「今回の提携における特定の箇所」に対してもSambaチームは懸念を抱いている、と述べている。しかし、提携内容の全面開示と引き換えにNovellとの間に結んだ秘密保持契約を理由に、Moglen氏はSambaチームに影響するその他の提携事項について具体的に言及することを避けた。
Moglen氏やSFLCが今回の提携に関してMicrosoftと話し合っているかどうかについても尋ねたところ、Moglen氏は、自身とMicrosoftとの協議については肯定も否定もしなかった。「具体的にこの場で言及した組織についてどのようなことを述べようと、私はこうした議論を急いで進めるつもりはない。ただ個人的な経験から、Microsoftがフリーコミュニティとの直接交渉にあたって早くから自らの真意を明確にしたことは一度もなかった、ということだけは言える。ただ全体として、この事態を平和的に解決するために必要と思われるすべての意見交換はオープンに行われていること、話し合いを行なうのが賢明または建設的だと我々が考えていた組織にはある程度アプローチできていることは、この時点で話しておくべきだろう」(Moglen氏)。
残念ながら、Novellがこの記事に間に合うように広報担当者を立てて我々のインタビューに応じてくれることはなかった。しかし、Novellでマーケティングディレクタを務めているJustin Steinman氏は次のように語り、Novellが進んでMicrosoftとの提携に応じたわけではないことをほのめかしている。
「NovellはSambaコミュニティとオープンソースに対する彼らの貢献をこの上なく尊重している。我々は現在、Sambaチームが表明した懸念に対する公式な回答を作成中だ。Sambaチームが基本的な要求事項として掲げていたMicrosoftとの提携解消については、当社にその意向がないことは確認できるが、それ以外の回答をまとめるのにあと2日ほど猶予をもらいたい」(Steinman氏)。