Berylがコミュニティによって構築された見事な3Dデスクトップを披露

9月に報告した通り、ある開発者グループがSUSEのコンポジティングウィンドウマネージャCompizをフォーク(派生)させ、Berylと呼ばれるコミュニティベースのプロジェクトを創設した。この新プロジェクトは、最近Linuxのデスクトップ環境を熱くしている3D効果をサポートするための選択肢としてたちまち評判になった。今回、Ubuntu EdgyにBerylをインストールしてこの1週間をかけて使ってみたところ、確かに感銘深いものだが、予想された通り、幾分不安定なことがわかった。

揺れるウィンドウ、回転するキューブ、デスクトップに降り注ぐ雨滴など、すべての3Dデスクトップの効果には次の3種類のコンポーネントが必要になる。3D効果を可能にするXサーバのOpenGL拡張機能、OpenGLによって可能になった特殊効果の処理を行うコンポジティングマネージャ、そしてウィンドウマネージャだ。

NovellのDavid Reveman氏は、XサーバにOpenGL機能を提供するために別途インストールが必要なアドオンとしてXglを開発した。彼はCompizの開発者でもある。Compizというのは最初に登場したコンポジティングウィンドウマネージャ(コンポジティングマネージャとウィンドウマネージャの機能をまとめたもの)の1つである。こうしたツールによって実現された3D効果のデモを今年春のDesktop LinuxショーでNat Friedman氏がSUSE 10.1ベータのデスクトップ上で行った際、Compizはその揺れる動きなど大いに目を惹くアイキャンディで見る者に感銘を与えたのだった。

一方、Red Hatは3Dデスクトップに対して異なるアプローチを取ろうとしていた。必要な機能をXサーバ上に固定するのではなく、Red HatはX.Org Foundationの方針に従い、AIGLXを用いてXglの機能をXに取り込もうとしたのだ。当初Red HatなどSUSE以外の主要なディストリビュータは皆、3Dの領域でSUSEに追いつかなければならなかったが、今ではその目標を達成しているように見える。最近のインストール大会で最も大きな驚きの声が上がったのは、Fedora 6上で3Dデスクトップが動作しているときだった。

インストール

こうした特殊効果を見てきた私は、自分でその動きを試さずにはいられなかった。UbuntuのWebサイトにはDapperとEdgy向けのXglとAIGLXの双方についてのインストールの詳しい手順が記されているが、IRCで見かけた意見から判断すると、こうした手順で常にうまくいくわけではないようだ。私のUbuntu Edgyデスクトップでも、必要なものすべてを「正常に」インストールするにはちょっとした手間が必要だった。

EdgyにはOpenGLがビルトインされたX.Orgのサーバの最新版が入っているため、どちらの方法でOpenGL機能をXに追加するかで悩むことはなかった。実は最新のNvidiaベータ(9625)も実行していたので、XにGLサポートはまったく必要なかったのだ。だが、プロプライエタリなNvidiaドライバのベータ版を実行していなければ、OpenGLをサポートするソフトウェアをインストールする必要がある。

念のために警告しておくが、このドライバはプロダクション環境で使えるレベルにはなっていない。バグもあればも見過ごされている部分もある。その点に注意して利用しなければならない。あとは自己責任で行ってもらいたい。

3-D desktop cube
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利用しているディストリビューションから、デスクトップ環境、ビデオカード、それにデスクトップテーマに至るまで、すべてはインストールの作業中やBerylの利用中にうまく機能するようになる。ただし、あるときにうまくいったことが他でもうまくいくとは限らない。どうしても3Dデスクトップが必要だというのなら、最初からそうした機能をサポートしているディストリビューションへの乗り換えをお勧めする。しかし私のように、回転するキューブやその他の3D機能に魅入られたギーク諸氏はそのまま先に進むといいだろう。

最新のNvidiaのベータ版ドライバをインストールする際には、Nvidiaの非プロプライエタリパッケージを事前にUbuntuにインストールしてあったため、いくつか問題が発生した。そうした問題はNvidia関連のパッケージをすべてシステムから削除した後でこのベータ版ドライバをインストールすることで解決され、Berylをインストールする準備が整った。Berylの取得に必要なリポジトリを追加する手順に従った後、berylemerald-themesの両パッケージに対してapt-get installを実行した(EmeraldはBerylのウィンドウ装飾)。

Berylのインストールが終わると、beryl-managerと入力することで3Dデスクトップの起動を行う。すると図1のような揺らめくスプラッシュ画面が現れた。こうして私は感動の世界に浸った。ウィンドウは細かく揺れ、最小化すると煙のように一番下のパネルに吸い込まれていく。ビューポートを変えると、キューブ状のデスクトップが希望したビューに切り替わる。だが、すべて順調だったわけではない。

Berylのせいで、すべてのウィンドウからタイトルバーが消えてしまったのだ。ウィンドウに対する閉じる、最小化、最大化の操作は、GNOMEパネル上の対応ボタンを右クリックしてから希望の操作を選ぶことで実行できたが、すぐにそうした操作が面倒になってきた。また、GNOMEターミナルにも問題があった。gnome-terminalと入力して起動したところ、ウィンドウは開いたがボーダーもコンテンツも表示されないのだ。対処策としてxtermで代用したが、やはり物足りなかった。

Nvidiaのベータ版ドライバをインストールしたときと同様、これら2つの問題に対する解決策は、BerylとEmeraldに関係するすべてのパッケージを一度完全に削除してからインストールをやり直すことだった。これでようやく調査を始める準備が整ったわけだ。

Berylの設定

場合によっては再インストールの作業も含め、Berylのインストールには苦労を強いられるかもしれないが、それさえうまく行けば後の設定はきわめて簡単だ。デスクトップテーマを例にとって説明しよう。Emeraldのテーマは約40種類あり、そこから好きなものを選ぶことになる (実際には、Emerald以外に別のウィンドウ装飾が存在することは承知しているが、この時点ですでに確認すべき内容が十分すぎるほどあり、それ以上の時間はとれなかった)。テーマを選ぶには、タスクバーにある「Beryl Manager」アイコンを一度クリックしてから「Emerald Theme Manager」を選択すればよい。すると図2に示すようなウィンドウが現れるので、好きなテーマをクリックして終了のボタンをクリックするだけで済む。

使用するテーマの変更のほか、Emerald Theme Managerでは色、スタイル、透明度、動作タイミングなど多くの設定項目を調整できる。効果的で使いやすいテーママネージャだ。

Beryl Setting Managerもまた同じように使いやすい。図3に示すように、すべてのオプションはウィンドウ左側の欄に表示される。オプションを選ぶと、有効/無効の切り替えのほか、そのオプションの有効化に使うキーボードおよびマウス操作の割り当ても設定できる。

Berylの使用感

現状では、一日ずつゆっくりと時間をかけながらBerylを使っていかなくてはならない。毎日のSVNアップデートが円滑に途切れることなくインストールされる日もあれば、デスクトップが激しいフリーズに見舞われ、リブートを余儀なくされる日もある。こうした状況は、アルファ/ベータ版の開発段階では当然予想しておくべきものだ。

Beryl化したデスクトップで友人たちをあっと言わせてLinuxユーザへの妬みを覚えさせた後は、しばらく時間が経つとたくさんのアイキャンディにも飽きてしまう可能性がある。しかしBerylデスクトップには、単にギークを魅了する以上の重要な機能がある。

たとえば、デスクトップのズーム機能だ。私の場合、オンラインのコマ割り漫画の小さな字が読めなくて困ることが多いのだが、Firefoxにある通常のズーム機能だと、フォントのサイズが大きくなるだけで画像は拡大表示されない。これに対し、Berylのズーム機能は漫画の吹き出し内のテキストも含めてすべてを拡大してくれるので、台詞も見出しと同じくらい読みやすくなるのだ。

Berylのコミュニティは、プラグインやテーマ、そしてBerylのコアそのものと、あらゆる領域でめざましい発展を遂げつつある。この1週間で私はすっかりBerylの大ファンになってしまった。Berylプロジェクト内部の開発ペースには驚嘆させられるが、まだBerylではクラッシュが頻発しており、すんなりとLinuxユーザに受け入れられる状態ではない。何年かXサーバを見てきたが、今回ほど多くのクラッシュが発生したことはなかった。Xをkillすれば済むこともあるが、どうしてもリブートが必要になることもある。それはもう大変な苦痛で、作業の生産性はすっかり損なわれてしまう。

結論として、BerylはLinuxデスクトップの人気上昇に貢献しつつある。クールさではWindows VistaやMac OS Xをも凌ぎ、利用可能なデスクトップ環境としてはきわめて刺激的なものだと言える。

NewsForge.com 原文