欧州議会の3会派、特許訴訟協定を条件付きで認める

 欧州議会(EP)の3つの大きな会派が、物議を醸している特許協定を条件付きで認める決定を下した。これにより今後、欧州連合(EU)におけるソフトウェアの特許政策に大きな影響が出る可能性がある。

 EPの保守系会派「EPP-ED」、社会民主主義系会派「PES」、自由主義系会派「ALDE」の3会派は、今週合意された決議案の中で、一定の留保を付けながらも、論争の的になっている「欧州特許訴訟協定(EPLA)」に関する議論を今後も継続することに同意した。

 EPLAは、欧州特許裁判所のような統一された機関を設置し、EU域内における特許の施行方法を大幅に変更するよう提案している。特許については、域内各国の裁判所がさまざまな規定を施行しているのが現状だ。

 EPLAに反対する人々は、特許の問題を取り扱う権限が民主的に選ばれたEPの手から取り上げられるうえ、EU域内におけるソフトウェア特許権の法的強制力が高まると批判している。EPはこうした批判に配慮し、欧州委員会と、IBMやMicrosoftなどの大手多国籍企業が強く推していたにもかかわらず、昨年上程されていた特許に関する指示を否決した。業界専門家によると、EPLAを巡って対立している勢力の構図もおおむね同じだという。

 PES、Greens/EFA、GUE/NGL、IND/DEMなどの会派は、このところEPLAへの批判を強めており、この協定を明確に廃案とする決議の承認を求めていた。一方、EPP-ED、ALDEなどの会派は、EPLAを明確に指示するよう求めていた。

 今回双方の間で成立した妥協は、「EPLAに関する今後の議論に欧州委員会が参加することを含め、EUにおける特許と特許訴訟制度を改善するためのあらゆる方策を検討」するよう欧州委員会に求めており、EPLAをさらに発展させていくことにEPが条件付きで支持を与えるということを意味している。

 しかし、今回の決議には、「案文の大幅な改訂、およびEPLA裁判所の手続き規則に関する満足の行く提案が必要」との留保が付けられている。  EPの3会派は、732議席の絶対多数を持っているため、来週行われる採決で波乱が起こる可能性は低い。しかし、たとえ今回可決されても、EPLAが最終的に成立するのは、2年先になる見通しだ。

 ソフトウェアの特許強制力強化に反対する活動を行っているフロリアン・ミュラー氏は、「反対勢力にとって、今回の決議は致命的な打撃ではないものの、クリスマス・プレゼントとも言えない」と指摘している。同氏は自身のブログに、「もう少しわれわれの立場に近い明確な決議を求めていたが、これが人生というものだ。とりあえず、今回の結果は受け入れられる」と書いている。

 ミュラー氏は、今回の決議について、ソフトウェアの特許がEUにとって大きな問題であるということが喚起されれば良いと語っている。一方、同氏は、「EPはあいまいな態度を取っているが、はっきりノーと言わなければ、EUにおけるソフトウェア特許の強制力が強まってしまう」との懸念を示している。

 ソフトウェアの特許は、リサーチ・イン・モーション(RIM)やMicrosoftを相手取った訴訟など、大きな注目を集める前例のない訴訟がこの数カ月間に起こった原因となっている。しかし、一般にソフトウェアの特許は、大手企業が比較的規模の小さい企業にライセンス料を支払うよう強要することによってライバルの参入を防ぐ手段に使われている。

(マシュー・ブールスマ/Techworld.com)

欧州議会(EP)
http://www.europarl.europa.eu/

提供:Computerworld.jp