「インターネットサービスのビジネスでの活用」- ヤフー、井上氏が情報化月間記念講演で講演

「リアルでもバーチャルでも大勢の人が集まる場所にはビジネスチャンスが生まれる。」
10月2日、東京・全日空ホテルで「情報化月間記念講演」が開催され、ヤフー株式会社 代表取締役社長の井上 雅博氏がインターネットのビジネスにおける活用事例について講演した。

はじめに井上氏は、インターネットの利用者数の増加についてふれた。現在の利用者は国内で約7000万人。日本の人口の半数以上が利用している。また、この10年間で女性の利用者が増え、職種による利用者の偏りもなくなってきた。

「使って欲しい人の大半が既にインターネットを利用している」と井上氏は述べ、「今のインターネットはマスメディアに近づいている」と指摘した。メディアという観点で見ると、インターネットは家庭からだけではなく、オフィスから利用されることが多いのが一つの特徴。今までは、メディアがビジネスマンへリーチするには深夜、休日などの広告枠を利用していたが、インターネットでは、ビジネスマンへ比較的容易にリーチできるという利点があるという。

また、ブロードバンドの普及も、インターネットのビジネス活用を後押しした。ビジネスの視点で考えると、ブロードバンド化は、回線速度が増したことよりも、定額制になり利用者がより頻繁に、長時間のアクセスを行うようになった点が大きいという。

これから、パソコン、携帯、テレビと、どんな端末からでもアクセスできるという状況になると、接触時間はますます長くなり、インターネットの閲覧数は増加するであろう。

井上氏は、「大勢の人が集まる場所には何らかのビジネスチャンスが生まれる。インターネットでも同じ発想を持っている。」と考えを述べ、以下にインターネットビジネスの具体事例を挙げた。

インターネットがマスメディアとして成立
すでに4マス広告のうちのラジオを抜いている。
 利用者の接触時間数からみると、インターネットへの広告はまだ相対的に少なく、伸びる余地が大きい。
 レスポンスが求められる求人広告などに有効。
バーチャルとリアルの融合
今までは、インターネットで検索する情報は、Webサイトの情報などバーチャルな情報だった。
 今後は、生活圏などのリアルな場所の情報をインターネットで調べる時代。
 近所の医療機関を調べて予約、出前のネット注文など
利用者がそこでお金を使うようになる。
eコマース取扱高が増えている。
 現在、ヤフー上では20,000店舗程度が出店している。
 2005年度のヤフーのeコマース取扱高7800億円
利用者による情報発信
消費者が発信する情報を活用し「yahoo! 地図情報」を運営
ロングテール
ヒット商品以外にもビジネスチャンスが
インターネットの活用で、テール部分のビジネスでも採算が取れるようになってきた。
ロングテールビジネスでは、ピンポイントで集客をする必要があり、検索連動型広告が有効になってくる。

広告ビジネスでは、最近ではインターネットというメディアでしかできない「行動ターゲティング」というものに取り組んでいるという。

最後に、「大事なことは今、既に行っているリアルな事業のためにインターネットをどう活用するか?」であると述べ、インターネットの中で閉じたビジネスだけを考えないようにと指摘した。

インターネットを利用した新しいサービスを考える場合、ついバーチャルなものに頭がいきがちである。しかし、リアルなビジネスにインターネットをうまく利活用する方が成功への近道であろう。

情報化月間は、経済産業省をはじめ関係6府省(内閣府、総務省、財務省、文部科学省、国土交通省)により推進される政府行事として設置されて、今年で35回目を迎える。今年度の月間テーマは、「改革への新たなる挑戦~IT経営による生産性の向上~」。「IT新改革戦略」における重要な課題である「IT経営」がフューチャーされた。

(濱本秋紀 e-side)

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情報化月間2006

提供:ITセミナーの情報バンク「Is It」