GNU GPLv3 Discussion Draft 2 日本語訳

ドラフト1の日本語訳に続き、現在改訂が進められているGNU GPLのバージョン3 (GPLv3)、ディスカッション・ドラフト2の日本語全訳を公開する。この訳に関する意見や誤訳の指摘は、本記事へのコメントとして寄せて頂けるとありがたい。

GNU 一般公衆利用許諾書 (GNU General Public License)

バージョン3のディスカッション・ドラフト2、2006年7月27日
日本語訳、2006年9月26日

これは草稿です。GNU 一般公衆利用許諾書の、正式に発表されたバージョンではありません。

Copyright (C) 2006 Free Software Foundation, Inc.
51 Franklin Street, Fifth Floor, Boston, MA 02110-1301 USA
Everyone is permitted to copy and distribute verbatim copies of this license document, but changing it is not allowed.

(訳: 本契約書の内容を、逐語的に複写し頒布することは許可する。しかし変更は認めない。)

This is an unofficial translation of the GNU General Public License into Japanese. It was not published by the Free Software Foundation, and does not legally state the distribution terms for software that uses the GNU GPL–only the original English text of the GNU GPL does that. However, we hope that this translation will help Japanese speakers understand the GNU GPL better.

(訳: 以下はGNU General Public Licenseの非公式な日本語訳です。これはフリーソフトウェア財団 (Free Software Foundation)によって正式に発表されたものではなく、GNU GPLが適用されたソフトウェアの頒布条件を法的に有効な形で述べたものではありません。頒布条件としては、GNU GPLの英語版テキストで指定されているもののみが有効です。しかしながら、私たちはこの翻訳が、日本語を使用する人々にとってGNU GPLをより良く理解する助けとなることを望んでいます。)

翻訳は八田真行 <mhatta@gnu.org>が行った。原文はhttp://gplv3.fsf.org/gpl-draft-2006-07-27.htmlである。誤訳の指摘や訳の改善案を歓迎する。なお、日本語訳の利用条件は原文に準ずる。

日本語訳を用意するに当たっては、独立行政法人 情報処理推進機構 (IPA)の支援を得た。

前文

ソフトウェア向けライセンスのほとんどは、あなたからそのソフトウェアを共有したり変更したりする自由を奪うように設計されています。それとは対照的に、GNU 一般公衆利用許諾書では、フリーソフトウェアを共有し変更するあなたの自由を保証し、そしてソフトウェアが、そのユーザすべてにとって自由なものであることを保証することを目的としています。私たちフリーソフトウェア財団は、私たちのソフトウェアの大半にGNU 一般公衆利用許諾書を適用しています。その作者に適用しようという意志があれば、他のいかなるプログラムにも適用することが可能です。あなたが、あなたのプログラムに適用することもできます。

私たちがフリーソフトウェアについて語るとき、それは自由について言及しているのであって、価格についてではありません。私たちがいくつか有する一般公衆利用許諾書のそれぞれは、あなたがフリーソフトウェアのコピーを頒布する(そして、希望によっては頒布サービスに対して課金する)自由を有するということ、あなたがソースコードを受け取るか、あるいは入手したければ入手できるということ、あなたがソフトウェアを変更でき、あるいはその一部を新たなフリー・プログラムで利用できること、そしてあなたが、そういったことができると知らされることを保証すべく設計されています。

あなたの権利を守るため、私たちは、誰かが上記のようなあなたの権利を否定したり、あなたに権利を放棄するように求めることを禁止することを義務づけなければなりません。そこで、あなたがソフトウェアのコピーを頒布したり改変したりする場合、あなたにもある種の責任が発生することになります。

たとえば、あなたがGPLが適用されたプログラムのコピーを頒布する場合、それが無料であろうと手数料を取るものであろうと、あなたは受領者にあなたが持つすべての権利を与えなければなりません。あなたは、彼らもまた、ソースコードを受け取るか後に受け取ることができることを保証しなければなりません。そしてあなたは、彼らにこうした条項を示し、彼らの権利について彼らに知らしめなければなりません。

GNU GPLを利用する開発者は、あなたの権利を二つの手順を踏んで守ります。その手順とは、(1) ソフトウェアに著作権を主張し、(2) この許諾書を提示して、あなたにソフトウェアを複製、頒布、あるいは改変する法的な許可を与える、というものです。

開発者や作者を保護するため、GPLでは、このフリーソフトウェアには何の保証もないということを明確に説明します。ユーザと開発者両方の便宜のため、GPLでは改変されたバージョンには変更された旨印付けることを要求しており、改変されたバージョンの問題が誤ってオリジナルのバージョンに帰せられることがないようにしています。

一部のコンピュータは、ユーザに対し、コンピュータ内のソフトウェアの改変されたバージョンをインストールしたり、実行したりするためのアクセスを拒否するように設計されています。これは、ユーザがソフトウェアを変更する自由を守るというGPLの目的とは根本的に相容れません。そこでGPLは、GPLが保護するソフトウェアは、このような方法で制限されることがないということを保証します。

最後に、すべてのプログラムはソフトウェア特許によって絶え間なく脅かされています。国家は、特許が汎用コンピュータにおけるソフトウェアの開発と利用を制限することを認めるべきではありません。しかし、そういったことを認めてしまっている地域においては、私たちは、フリーなプログラムの再頒布者が個々にパテントライセンスを入手し、実質的にプログラムをプロプライエタリにしてしまうという特別な脅威を避けたいと思います。こうした事態を防ぐために、GPLでは、特許がプログラムを非フリーとするために使われることがないということを保証しています。

(訳注: 本契約書で「プロプライエタリ (proprietary)」とは、ソフトウェアの利用や再頒布、改変が禁止されているか、許可を得ることが必要とされているか、あるいは厳しい制限が課せられていて自由にそうすることが事実上できなくなっている状態のことを指す。詳しくはhttp://www.gnu.org/philosophy/categories.ja.html#ProprietarySoftwareを 参照せよ。)

規約と条件

0. 定義

本許諾書において、個々のライセンシーは「あなた」として表現される。また、「『プログラム』」(Program)とは、本許諾書に従って許諾された、作者性(authorship)が存在する著作物のすべてを意味する。「改変された」(modified)著作物には、その内容が翻訳された、あるいは追加されたバージョンが含まれるが、この二つに限定されない。他の著作物を「基にした」(based on)著作物とは、その成立に適用可能な著作権法の下での許可を必要とする改変されたバージョンすべてを意味する。「『保護された著作物』」(covered work)とは、改変されていない『プログラム』か、『プログラム』を基にした著作物の一つのことである。

著作物を「伝播」(propagate)するとは、適用可能な著作権法の下で許可を必要とする行為を行うことを意味する。コンピュータ上で実行すること、あるいは他者と共有せずに改変を加えることは除く。「伝播」には、複製、頒布(改変の有無を問わない)、公衆への利用可能化が含まれ、またいくつかの国々では他の活動も含まれる可能性がある。著作物を「伝達」(convey)するとは、第三者がコピーを作成あるいは受領するのを可能とする伝播のすべてを意味するが、再許諾は除く。

ある著作物におけるある当事者の「主要パテントクレーム」(essential patent claims)とは、すでに取得しているか取得する予定であり、著作物を作成、利用、販売することによって侵害される可能性がある、当事者が行使する許可を与え得るすべてのパテントクレームを意味する。

1. ソースコード

著作物の「ソースコード」(source code)とは、著作物に改変を加えるに当たって好ましいと考えられる形式のことである。「オブジェクトコード」(object code)とは、著作物のソースコード以外の形式を取ったバージョンすべてを意味する。

実行可能な著作物の「『システムライブラリ』」(System Libraries)には、以下に合致する下位ユニットのすべてが含まれる。そのような下位ユニットとは、(a)同一の下位ユニットが、オブジェクトコードが実行される(もし必要なら)特定のオペレーティングシステムの重要かつ主要なコンポーネント(カーネル、ウィンドウシステムなど)としてか、オブジェクトコードを作成するのに使われるコンパイラか、それを実行するのに使われるオブジェクトコード・インタープリタかの付属物として通常含まれているもの、あるいは(b)(付随的な拡張がある可能性は別として)下位ユニットが、そのシステムコンポーネントかコンパイラかインタープリタでの著作物の利用を可能とするためにのみ機能するか、広く使われている、あるいは標準的なインターフェースを実装するためのみに機能し、その実装が、ソースコード形式で公衆に対して利用可能となっているものである。

オブジェクトコード形式の著作物に「『対応するソース』」(Corresponding Source)とは、その著作物を生成、インストール、(実行可能な著作物に関しては)オブジェクトコードを実行、または著作物を改変する上で必要とされるソースコードすべてを意味する。ただし、『システムライブラリ』や、いま列挙した活動を行う上で利用はされるが、著作物の一部ではない汎用のツール、あるいは一般的に利用可能なフリープログラムのうち、そうした活動で改変されずに利用されるものは除外される。『対応するソース』には、例えば上記の活動をコントロールするために使われるスクリプトや、プログラムのソースファイルと関連づけられたインターフェース定義ファイル、加えて共有ライブラリや、著作物のその他の部分との間の複雑なデータのやりとりやコントロールフローなどのためにその著作物が設計上明確に必要とする、動的にリンクされた下位プログラムのソースコードなどが含まれる。

また、『対応するソース』には、著作物の改変されたバージョンをソースコードから、推奨される、または主要とみなされる利用形態でインストール、実行し、それによって同じ範囲の状況下においては完全に同じ機能性を実現するのに必要な、すべての暗号化または認証キーも含まれる(例えば、著作物がDVDプレーヤであり、あるDVDを再生することができた場合、改変されたバージョンもそれらのDVDを再生できなければならない。著作物がオンラインサービスと通信する場合、改変されたバージョンも同じオンラインサービスに同じように通信でき、サービス側からは見分けがつかないようになっていなければならない)。著作物の利用自体が、通常ユーザが必要なキーをすでに持っており、読み込んだり複製したりすることができる、あるいはプライバシー用アプリケーションの場合にはユーザが自分自身の鍵を生成できるということを暗に示している場合には、そのようなキーを含む必要はない。ただし、著作物のオブジェクトコードを基にキーが生成されたり、キーがその利用を制限するハードウェア上にある場合には、『対応するソース』にキーを含むと言う要件は変更されない。

『対応するソース』には、正式には本許諾書をそのライセンスとして指定していないが、第7項に従い本許諾書に従った著作物に含める資格のある部分を含んでいる可能性がある。

『対応するソース』には、ユーザが『対応するソース』の他の部分から自動的に再生成できるものを含む必要はない。

2. 基本的な許可

本許諾書の下で認められたすべての権利は、『プログラム』に主張される著作権の条項に基づき与えられるものであり、ここで述べられた条件が満たされている限り覆すことはできない。本許諾書は、あなたが改変されていない『プログラム』を無制限に実行する許可を明示的に肯定する。『プログラム』を実行することによる出力結果は、それが内容として『保護された著作物』を構成する場合のみ本許諾書で保護される。本許諾書は、あなたの「フェアユース」またはその同等物の権利を、著作権法によって提供される通りに承認する。

本許諾書はあなたに、『プログラム』の私的に改変されたバージョンを作成、実行する許可、または他者に対してあなたのために『プログラム』の改変されたバージョンを作成、実行させる許可を与える。ただし、あなたが誰かに対し、そのような改変されたバージョンのどれかにおいて、あなたの主要パテントクレームのいずれかに関し、本許諾書に準拠した、『プログラム』を基にした著作物の一つを作成、利用、販売、その外伝達したということに対して特許侵害訴訟を提起した場合、そのような改変されたバージョンすべてに関してここで与えた許可は終了する。

伝達以外の『保護された著作物』の伝播は、制限なく認められる。再許諾は認められない。第10項の規定により、再許諾は必要ないからである。伝達は、以下の諸条項で示す条件の下で認められる。

3. ユーザの権利を技術的手段によって否定してはならない

本許諾書の他の条項に関わらず、『保護された著作物』を実行するユーザが、本許諾書によって認められた法的権利を最大限に行使することを拒否するような伝達形態には、一切の許可を与えない。

『保護された著作物』は、 合衆国法典第17編第1201項における効果的な技術的「保護」手段 (effective technological “protection” measure)の一部を構成してはならない。あなたが『保護された著作物』を伝達する場合、あなたは『保護された著作物』の利用を含む技術的手段回避を禁止する法的権力をすべて放棄し、また第三者が著作物のユーザに法的権利を行使する手段として著作物の実行や改変を制限するという意図をすべて放棄することになる。

(訳注: 合衆国法典第17編第1201項の日本語訳については、 http://www.isc.meiji.ac.jp/~sumwel_h/doc/code/bill-1998-b.htmなどを参照せよ。)

4.[1] 逐語的な複製

あなたは、『プログラム』のあなたが受領したのと同じソースコードの逐語的な複製を、いかなる媒体でも複製、伝達してよい。ただしその場合、あなたはそれぞれのコピーにおいて顕著でかつふさわしく、適切な著作権告示を掲載しなければならない。また、すべての許諾告示、あらゆる保証の不在の告示をそのまま保全し、そして『プログラム』の受領者すべてに、『プログラム』といっしょにこの許諾書のコピーと(もしあれば)第7項で義務付けられた中央リスト(central list)を渡さなければならない。これらのコピーの受領者は、本許諾書(と第7項に従った追加的条項のすべて)で与えられたすべての権利を保有することになる。

あなたは、伝達するそれぞれのコピーに関していかなる価格を付けても良いし、無料で行っても良い。また、手数料を取ってサポートや保証保護 (warranty protection)を提供しても良い。

5.[2] 改変されたバージョンのソースの伝達

あなたは、『プログラム』を基にした著作物の一つ、あるいはそうした著作物を『プログラム』から作成するための改変点を、上記第4項の規定に従ってソースコードの形式で複製、伝達することができる。ただしその場合、あなたは以下の条件すべてを満たさなければならない。

a) 改変された著作物に、あなたが著作物を変更したということと、あらゆる変更の日時を述べた目立つ告示を載せること。

b) 著作物全体を、全体として、本許諾書の下で、コピーを手に入れた人全員に許諾すること。本許諾書は、下記第7項で許可されているものを除き、改変されることなく著作物全体に、すなわちその全部分に、それがどのようにパッケージされているかに関わらず適用されなければならない。本許諾書ではこの他に著作物を許諾する手段を認めていないが、あなたが本許諾書以外で別途そのような許諾を得ていた場合には、それによって得られた許可まで無効とするものではない。

c) 改変された著作物が対話的なユーザインターフェースを有していた場合、適切な著作権告示を表示する便利な機能を搭載し、それによってユーザに対しプログラムには何の保証も存在しないこと(あるいはあなたが保証を提供するということ)、ユーザは改変された著作物を本契約書に従って伝達することができるということ、そして本許諾書のコピーと(もし存在するならば)第7項に合致したその他の条項をまとめた中央リストを見るにはどうしたら良いかを伝えること。特に、そのようなインターフェースがメニューのようなユーザコマンドやオプションの一覧を表示する場合、上記の情報を表示するコマンドは目立つように配置されていなければならない。さもなくば、改変された著作物はこの情報を起動時に表示しなければならない。ただし、『プログラム』に、この小項の指定に当てはまらない対話的なインターフェースがある場合、あなたは改変された著作物が起動時に上記の情報を表示するようにする必要はない。

あなたによって追加された、改変された著作物における区別可能な一部分が、『プログラム』から派生したものではなく、それ自身として独立の分離した著作物と合理的に考えられる範囲において、あなたがそれらを特に『プログラム』と結合させて利用せず、分離した著作物として伝達するならば、そのような部分には本許諾書やその条項は適用されない。

一巻の記憶装置の中か頒布媒体上にある、『保護された著作物』とその他の分離あるいは独立した著作物との編集物は、その本質からして『保護された著作物』の拡張ではない。このようなものは、編集作業とそれに由来する著作権が個々の著作物が許可する権利を越えて編集物のユーザの著作物へのアクセスや法的権利を制限するのに使われない限り、「集積物」(aggregate)と呼ばれる。『保護された著作物』を単にそのような集積物に含めるだけでは、その集積物の他の部分にまで本許諾書が適用されるということにはならない。

6.[3] ソース以外の形式における伝達

あなたは、オブジェクトコード形式の『保護された著作物』を、第4項並びに第5項の規定に従って複製、伝達することができる。ただしその場合、あなたは機械読み取り可能な『対応するソース』も本許諾書の規定に従って、以下のいずれかの方法で伝達しなければならない。

a. オブジェクトコードを物理的製品(物理的頒布媒体を含む)で伝達する。その際、『対応するソース』を、ソフトウェアのやりとりで一般的に使われる耐久性のある物理的媒体に固定していっしょに頒布する。

b. オブジェクトコードを物理的製品(物理的頒布媒体を含む)で伝達する。その際、最低でも3年、あるいはあなたがその製品モデルに補修用部品やカスタマーサポートを提供する限り有効な、書面による申し出を添付する。その申し出には、全ての第三者に対して、その製品に含まれるソフトウェアのうち本許諾書で保護されるものすべてに『対応するソース』のコピーを、ソフトウェアのやりとりで一般的に使われる耐久性のある物理的媒体で頒布する旨を記載する。この際、物理的にこのソースの伝達を行うのにかかる合理的なコスト以上の価格を要求してはならない。

[b1. オブジェクトコードを物理的製品(物理的頒布媒体を含む)で伝達する。その際、最低でも3年、あるいはあなたがその製品モデルに補修用部品やカスタマーサポートを提供する限り有効な、書面による申し出を添付する。その申し出には、『対応するソース』を無料でネットワークサーバから複製するためのアクセスを提供する旨を記載する。]

c. オブジェクトコードの個々のコピーを、対応するソースを提供するという書面による申し出のコピーといっしょに伝達する。この選択肢は特別な場合、かつ非商業的な場合のみに、そしてあなたがオブジェクトコードを上記小項b6bまたは6b1に合致した申し出といっしょに受領した場合にのみに認められる。

d. オブジェクトコードを、指定の場所から複製するためのアクセスを提供することによって伝達し、『対応するソース』に対しても同じ場所を通じて同じ方法かつ追加的費用無しで複製するための同等のアクセスを提供する。受領者が、『対応するソース』をオブジェクトコードといっしょに複製することを義務づける必要はない。

[オブジェクトコードを複製する場所がネットワークサーバの場合、対応するソースは同等の複製機能をサポートする異なったサーバ上にあっても良い。ただし、あなたはそのサーバの運営者と交渉し、対応するソースを上記の要件を満たすのに必要な期間利用可能にしておくよう、明示的に取り決めておかなければならない。また、オブジェクトコードの傍らに、『対応するソース』はどこで見つけられるかを明確に指示しておかなければならない。]

e. オブジェクトコードをピア・ツー・ピア伝送を使って伝達する。ただしこの場合、その著作物のオブジェクトコードと『対応するソース』は一般公衆に小項6dの下無料で提供されるということをあなたが知っており、また他のピアにも知らせておかなければならない。

この節に合致して伝達される『対応するソース』は、公衆に仕様が公開されており、ソースコード形式で公衆が利用可能な実装があり、展開や読み込みや複製に特別なパスワードやキーを必要としない形式で伝達されなければならない。

オブジェクトコードの分離した一部であり、そのソースコードが『対応するソース』から『システムライブラリ』として除外されているものを、オブジェクトコードの著作物を伝達する場合に含める必要はない。

7. 追加的条項

あなたは『プログラム』、あるいはその一部を、本許諾書の条項を補完するような条項の下で受領したかもしれない。このような追加的条項には、小項7aで提供されるような追加的許可と、小項7bで提供されるような追加的要件がある。あなたが保護された著作物のコピーを伝達する際には、その著作物が本許諾書の以前のバージョンの下での利用も許可していない限り、ソースコードのどこか中心的な一点において、その著作物の全体あるいは一部を管轄する追加的条項をすべて列挙しなければならない。

a. 追加的な許可

追加的許可は、本許諾書の要件に一つかそれ以上の例外を設ける。本許諾書の下での再許諾や伝達を許可する条項を含むライセンス文書は、追加的許可のリストとして扱われる。ただしその場合、ライセンス文書はそのような再許諾や伝達を経た後も残存するライセンス文書中の要件が存在しないということを明確にしていなければならない。

『プログラム』全体に適用可能な追加的許可は、それらが本許諾書に含まれているかのように扱われ、適用可能な法の下で有効である限りにおいて、すべて本許諾書の条件への例外とみなされる。追加的許可が『プログラム』の一部にのみ適用される場合には、その部分を別途使う場合はそれらの許可の下で利用できるが、『プログラム』全体はあくまで本許諾書により追加的条項無しで管轄されたままとみなされる。

b. 追加的な要件

追加的要件は、保護された著作物の利用、改変、伝播にさらなる制約を課す条項である。本許諾書は追加的要件の行使に関する手続きにのみ影響し、それらが著作権者によって成功裡に行使可能であることは主張しない。本許諾書で認められるのは以下に示す追加的要件のみである。

0) 指定された合理的な法的告示、あるいは作者特定(author attributions)の保全を義務づける条項、あるいは

1) それらの条項が保護する内容の起源が誤って表示されることがなく、その内容の改変されたバージョンがオリジナル・バージョンとは異なるということが特定の合理的な手段で印付けられていることを求める条項、あるいは

2) 本許諾書のそれとは異なる保証や責任の否認。あるいは、

3) 指定されたライセンサーや作者の名前の宣伝目的での利用を禁止あるいは制限するか、または、指定の商品名、商標、サービスマークは、明示的な許可がある場合を除き、宣伝目的では適用可能な商標法の下でのフェアユースとして認められた方法でのみ使うことを義務づける条項。あるいは、

4) それが保護する内容の改変されたバージョンがコンピュータネットワークを介してユーザとやりとりすることを意図した著作物だった場合、そうしたユーザが『対応するソース』のコピーを同じネットワークセッションを通じて入手できるようにすることを義務づける条項。あるいは、

5) 以前に提起された他のソフトウェア特許訴訟への報復ないし防御として起こされたものか、あるいは侵害したとされるソフトウェアに、保護された内容の一部が、おそらくは他のソフトウェアと結合した形で含まれている場合を除き、ソフトウェア特許訴訟(すなわち、あるソフトウェアがある特許を侵害していると主張する訴訟)を提起したユーザに対してそれが保護する内容の利用許可を完全あるいは部分的に終了、あるいは終了させうるとする条項。あるいは、

6) 本許諾書で明示的に述べられた要件と種類や範囲が正確に同等な条項、あるいは本許諾書によって、明示的かそうでないかを問わず、許可されていないことが明確な活動への許可を否定するような条項。

弁護士費用に関する条項、法や裁判所(forum)、裁判地(venue)の選択に関する条項、仲裁裁判(arbitration)に関する条項、必須契約受諾条項(mandatory contractual acceptance clause)、著作物の名称変更に関する要件、伝達されたコピーが本許諾書以外のライセンスによって管轄されることを要求する条項など、他のすべての追加的要件は禁止される。

c. あなたによって追加、あるいは削除される条項

あなたが保護された著作物のコピーを伝達するとき、あなたはそのコピーから、あるいはその一部から追加的許可を削除することができる。いくつかの追加的許可は、あなたが著作物を改変した際にはそれら自身の削除を要求することがある。

追加的要件は小項7bで述べられたもののみが認められる。あなたが受領した『プログラム』がほかの追加的要件を課そうとしていた場合には、あなたはそういった要件を削除して良い。

あなたは追加的許可、あるいは小項7bで認められた追加的要件を、あなたによって保護された著作物に追加され、あなたに著作権許可がある、あるいはあなたが許可を与えることができる内容に適用してもよい。小項7bで認められていない要件を追加するのは本許諾書への違反であり、第8項によるあなたの権利の終了につながる。

本節に従い保護された著作物に条項を追加する場合、あなたは関連したソースファイルにそれらのファイルに適用される追加的条項の告示を載せるか、適用可能な条項が見つけられる場所を示す告示を載せなければならない。

8.[4] 終了

あなたは『プログラム』を、本許諾書が明示的に規定している場合を除き伝播、あるいは改変してはならない。それ以外に『プログラム』を伝播、あるいは改変しようとする試みはすべて無効である。あなたが本許諾書に違反した場合、著作権者は誰でも、最後に違反が行われたときから60日以内であれば、あなたに違反について知らせる告知を、いかなる合理的手段でも通告することができる。通告することにより、著作権者はあなたのライセンスをいつでも終了することができる。しかしながら、コピーや権利をあなたから本許諾書の下で受領した当事者に関しては、彼らが完全に本許諾書に準拠している限り、彼らの許諾まで終了させられることはない。

9.[5] コピーの所有に必要とされない受諾

あなたは、『プログラム』のコピーを受領あるいは実行するために本許諾書を受諾する必要はない。単にピア・ツー・ピア伝送を使ったコピーの受領によって起こされる保護された著作物の副次的な伝播も、同様に受諾を必要としない。しかしながら、本許諾書以外に、あなたに対して『プログラム』やその他『保護された著作物』の伝播や改変をする許可を認めるものはない。これらの行為は、本許諾書を受諾しないのであれば著作権侵害である。そこで、『プログラム』(か他の『保護された著作物』)を改変あるいは伝播することにより、あなたはそうするために本許諾書とその規定や条件を受諾したということを示したとする。

10.[6] 下流ユーザへの自動的許諾

あなたが『保護された著作物』を伝達するたびに、受領者は自動的にオリジナルのライセンサーから、本許諾書、あるいは第7項で導入される追加的条項の対象としてその著作物を実行、改変、伝播する許諾を得る。あなたは、受領者に与えられた、あるいは肯定された権利の行使に対してこれ以上制限を課してはならない。ただし、第7項によって認められた、限定された方法による制限はこの対象外である。そこで、あなたは本許諾書の下で認められた権利の行使に対してライセンス料、ロイヤルティや他の料金を課してはならない。なお、あなたには本許諾書への第三者による準拠を強制する責任はない。

伝播がある組織の支配権の譲渡取引の結果として発生する場合、著作物のコピーを受領するそれぞれの取引当事者は、利害関係のある当事者の前任者から著作物の『対応するソース』の所有に関するライセンスと権利も得る。

11. 特許

あなたが『プログラム』を受領する際には、『プログラム』や、本許諾書の下で伝達され『プログラム』が基にしたいずれかの内容の、それぞれの作者あるいは伝達者との約款(covenant)も結ばれる。その約款では、約款を結んだ当事者は、当事者が伝達した内容に存在する自らのすべての主要パテントクレームを、あなたに対して、あなたが本許諾書の下で権利を行使することに関して主張する(あるいは他者に主張させる)ことがないということを述べていなければならない。あなたが保護された著作物を伝達する場合、あなたもまた、保護された著作物を基にした著作物の受領者を含むすべての受領者に対して、あなたが保護された著作物にある自らのすべての主要パテントクレームを主張しないという同様の約款を結ばなければならない。

もしあなたが、『保護された著作物』が再許諾できず一般にすべての人にとって利用可能ではないあるパテントライセンスに依存するのを知っていながら故意に伝達するならば、下流のユーザを、(1)あなた自身はあなたが得たライセンスで守られた、ありうべき特許侵害クレームから防衛するよう行動するか、(2)保護された著作物の『対応するソース』を、本許諾書の条項の下で無料で、公衆に利用可能なネットワークサーバかその他の容易にアクセスできる手段を通して誰もが複製できるということを保証しなければならない。

本許諾書は、適用可能な特許法の下であなたが利用可能な暗黙的許諾、その他の侵害への防御手段を排除したり制限したりするように構成されたものではない。

12.[7] 他者の自由を明け渡してはならない

何らかの条件(裁判所の指令や協定など)があなたに課せられ、それが本許諾書の条件と矛盾したとしても、あなたが本許諾書の条件を免れることにはならない。あなたが、『プログラム』やその他本許諾書によって『保護された著作物』を、本許諾書が課す義務と他の関連した義務を同時に満たすように伝達できないのであれば、結果としてあなたはそれを伝達することは全く不可能である。例えばあなたが、直接的あるいは間接的にあなたから受け取ったコピーを持つすべての人によるロイヤルティフリーな伝達を禁止するパテントライセンスを受諾したのであれば、あなたがそれと本許諾書の両方を満たす唯一の方法は、『プログラム』の伝達を完全に止めてしまうことであろう。

[13.[8] 地理的な制限

ある国において、『プログラム』の伝達や利用が特許やインターフェース著作権かによって制限されていた場合、『プログラム』を本許諾書の下に置いたオリジナルの著作権者は、それらの国々を明示的に除外する地理的伝達制限を付けてもよい。こうすることにより、除外されていない国々の中でのみ伝達は許可される。このような場合、本許諾書は制限を本許諾書の本文に書かれているかのように取り込むものとする。]

14.[9] 本許諾書の改訂されたバージョン

フリーソフトウェア財団は、改訂されたあるいは新しいバージョンのGNU 一般公衆利用許諾書を折りに触れて発行することができる。そのような新バージョンは、その精神においては現在のバージョンと似たものになるだろうが、細部については新たな問題や懸念を解決すべく異なるものになるだろう。

それぞれのバージョンには、区別のつくようなバージョン番号が振られている。『プログラム』において、ある特定のバージョン番号が振られた本許諾書「かそれ以降のいかなるバージョン(or any later version)」が適用されると指定していた場合、あなたは指定の番号のバージョンか、それ以降にフリーソフトウェア財団によって発行されたバージョンのいずれかの規定と条件に従うか選ぶことができる。『プログラム』が本許諾書のバージョン番号を指定していなかった場合、あなたはフリーソフトウェア財団によってかつて発行されたどのバージョンを選択してもよい。

(訳注: 日本語訳のバージョンは日付で管理している。冒頭を見よ。)

15.[10] 例外の要請

『プログラム』の一部を他のライセンスの下にある他のフリーなプログラムに取り込みたい場合、作者に連絡して許可を求めよ。フリーソフトウェア財団が著作権を保有するソフトウェアに関しては、フリーソフトウェア財団に連絡せよ。私たちは、時折そのような例外を設けることがある。私たちは、私たちのフリーソフトウェアのすべての派生物がフリーな状態に保たれること、そして一般にソフトウェアの共有と再利用を促進するという二つの目標を鑑みて判断を下すだろう。

無保証

16.[11] 保証の否認

『プログラム』には、適用可能な法で許可されている範囲において何の保証もない。書面で述べられていない限り、著作権者やその他の主体は『プログラム』を「あるがまま(as is)」で、明示的暗示的を問わず、いかなる種類の保証もなく提供する。この保証には、商用可能性や特定目的への適合性の暗黙的保証が含まれるが、これらに限定されない。『プログラム』の質や性能に関するリスクはすべてあなたに帰属する。『プログラム』に問題があると判明した場合、あなたは必要なすべての対応、補修、修正にかかる費用を負うものとする。

17.[12] 責任の限定

適用可能な法において義務づけられるか、書面による同意がない限り、著作権者あるいはその他『プログラム』を上記で許可された通りに改変あるいは伝達する当事者は、たとえ損害が発生する可能性について事前に通知されていたとしても、あなたに対して損害賠償責任を有しない。ここでの損害には、『プログラム』の利用あるいは利用できないことから発生した一般的、特殊的、偶然的、必然的な損害のすべてが含まれる(データの消失やデータの不正確な解釈、あなたや第三者によって被った、あるいは『プログラム』が他のプログラムといっしょにうまく動作しなかったために引き起こされた損害などが含まれるが、これらに限定されない)。

規約と条件はここまで