通信・放送の連携とデジタルコンテンツ創造──「デジタルコンテンツにおける取組み」
9月16日、広島・広島市まちづくり市民交流プラザで、通信・放送の連携とデジタルコンテンツ創造について市民向けに講演・ディスカッションを行う「CSI ネットワークマスター 虎の穴 市民公開講座」が開催され、特定非営利活動法人CANVAS 副理事長の石戸 奈々子氏がデジタルコンテンツ創造における子供教育の現場について講演した。
はじめに石戸氏は、CANVASの設立趣旨を説明。こども向け創造・表現活動を全国的に展開しているCANVASは、ワークショップという手法を用いて、全国各地でこども達の創造活動を支援している。今後のデジタル社会を支えるこども達がアニメや音楽など様々なコンテンツを創造する支援が必要であり、「情報の要となるようなセンター」の必要性を感じCANVASを設立したとのこと。
石戸氏は「CANVASの活動はデジタル化とはきっても切り離せない。」という。PCは創造活動を今までよりもずっと容易にしてくれたし、ブロードバンド化は創造活動におけるコミュニケーションの手助けをしてくれている。誰しもが簡単にコンテンツを作成することができ、流通することができる。「コンテンツを消費するだけではなく、生産にも参加することができることを感じて欲しい」と石戸氏は述べた。
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特定非営利活動法人CANVAS 副理事長 石戸 奈々子氏 |
次に、様々なこども向けワークショップの中で幾つかの具体事例を紹介された。
「おとコトひろば(http://www.otokotohiroba.com/)」という事例は、こども達による作詞作曲コンテスト。Webサイトを通じて、こども達から歌詞を募集し、寄せられた作品を公表。さらにそれぞれの歌詞に付けられるメロディーを募集し、Webを通じて見知らぬ人同士のコラボレーションでひとつの楽曲を作成するというもの。取組の最後にはお披露目のライブが行われ、優秀な作品が演奏された。この事例では、音楽制作への敷居を下げ、音楽を自ら作るものへと変えて行きたいという願いが込められているという。
「こどもどこでもものがたり(http://www.k-dcm.net/J/)」というワークショップは、携帯電話を使った国際交流プログラム。携帯で写真を撮り4コマの写真を用意。日本とフランスそれぞれで同じ4コマの写真にものがたりをつけるという取組である。ここで非常に興味深いのは、フランスのこども達は4コマの写真にロマンチックなストーリーをつけるが、日本のこども達は最後に”オチ”をつけようとするというところ。文化の違いがこのような場面で表現され、こども達は、創造活動を通じて国際的な文化交流も体験することが出来る。
CANVASではデジタル化の恩恵を最大限に活かしながら、一方では、ワークショップの材料に粘土や水を使ったり、リアルな空間でワークショップを開催するなど、こども達がデジタルに偏らないように、「アナログとデジタル」「バーチャルとリアル」のバランスを常に念頭に置きプログラムを検討しているという。社会が益々デジタル化していく中では非常に大切な視点である。
本市民講座には教育現場で活躍する方の参加者も多く、CANVASの活動に対して評価の声が挙がったが、一方では、同様な子供教育の重要さを認識しつつもコーディネーター不足などで中々具体的な活動を実施するのは難しいとの声も挙がった。まだ教育現場のハード環境の整備がじゅうぶんではないということもあるし、そもそも従来の学校教育でこのような取組を行うのは非現実的であろう。資金的な面での障害も大きい。しかしながら、日本の国力を左右するかもしれない創造活動に対する教育がこれからもっと活性化しなければならないということは皆が思っていることでもある。CSRの観点で企業が積極的に活動支援してくれることを願う。
「CSI ネットワークマスター 虎の穴」は、特的非営利活動法人 中国・四国インターネット協議会(所在地:広島市中区上八丁堀、理事長:椿 康和 以下、CSI)がインターネット技術に関する人材育成や地域活性化を目的として開催している定期セミナー。CSIは、中国・四国地域における情報通信基盤の発展に貢献することを目指して普及・啓蒙活動を行っている。
(濱本秋紀 e-side)
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