エンタープライズユーザの望むサポートに異変 -- 最新の調査より
この「エンタープライズユーザはスタック提供会社のサポートには興味がない」という考え方は、「エンタープライズユーザはソフトウェアのサポートサービスに関して、『問題が起きた場合に最終的に問責されるべきただ 1人の人物』(すなわち、ただ一カ所の責任の所在)を必要としている」という広く認められている説と真っ向から対立する考え方だ。報告書によると、ユーザの大多数は、ベンダによるサポートは絶対的に必要ではあるものの、スタック中の全コンポーネントに対してサポートを提供する単一のベンダに依存するよりも、複数の経路を通してそのようなサポートを得ることを望んでいるのだという。この調査結果は、特にしがらみなどがなく取引先を自由に選ぶことのできる、スタックの顧客 70社に対して調査を行なった結果、明らかになった。
今までの説と相反することになるこの結果に対し、The 451 Group 社の上級アナリスト兼オープンソース営業統括の Raven Zachary は、特に驚きを感じないと言う。「これらの調査結果は、もともと報告書に盛り込まれるだろうと思っていた考えと一致し、そのような考えをデータで裏付けるものです」と彼は言う。「エンドユーザが求めているのは非常に細分化された高度な知識であり、そのような専門的な知識を確実に得るためには、(コンポーネントごとに、それぞれのコンポーネントに精通した)複数の人に相談する必要があるとエンドユーザは感じているのです」。Zachary によれば、「スタック提供会社が、ユーザのただ一カ所のサポート窓口であるべき」という概念は、おそらく、ソフトウェアにまつわる技術的な問題を解決する内部リソースを持たない、設立間もない小規模な企業が言い出したことであると言う。一方、企業が大きく成長し、オープンソースソフトウェアの使用についての経験を積むにつれ、複数のサポート窓口を利用したいと思う傾向がより強くなると言う。
「『問責されるべきただ 1人の人物』というのは、企業の内部社員である場合が多いのです」と Zachary は言う。「一方、企業が 20個のコンポーネントを使用している場合に、 20人の開発者を雇うというわけには行きません。そのため企業は、コンサルティング契約を結ぶか、外部のサポートを求めます」。報告書によると、大企業のエンタープライズ顧客は、「オープンソースについての自社の内部的なノウハウを蓄積する傾向が高く、また、そのようなノウハウには、『それぞれのソフトウェアコンポーネントの開発元』に直接的に相談することによって得られたノウハウが多く含まれる」と言う。 同報告書では、この傾向の結果として、今後、「スタック提供会社」がエンドユーザ向けの高レベルなサポートを提供するという需要は減少するだろう、としている。
しかし、そのような予測に異を唱えるスタック提供会社もいる。
OpenLogic 社のマーケティング担当副社長であるKim Weins によると、「弊社のユーザからは、一本化されたサポート提供元が望ましいと伺っています。(答えを見つけるために)100ヶ所ものベンダに聞いたりはしたくないのです」。
スタック提供会社の中には、コンポーネントのサポートをそのソフトウェアの開発元である企業へとアウトソースしているところもある。また別のスタック提供会社の中には、自社で内部的にきちんとサポート可能であると考えるコンポーネント数に基づいて、提供するオープンソースプロジェクトの数を制限しているところもある。Weins によると、Novell 社、 Red Hat と JBossといったスタック提供会社は、10~20種前後のオープンソースソフトウェアのコンポーネントを提供している。一方、コロラド州に本拠地を置く OpenLogic 社は、160 種ものオープンソースソフトウェアの選択肢を、様々なレベルのサポートサービスと共に提供している。
Weins によると、OpenLogic 社がこれほどまでに多くのコンポーネントを提供することになったのは、顧客の声に耳を傾けた結果だと言う。「弊社の顧客企業に対して(顧客のスタックに含めるものとして)どれを望むのかを伺うと、何十、場合によっては何百ものコンポーネントの長いリストを渡されます。そしてそういう場合が日常的であり、特別な場合ではありません」。Weins はさらに、一企業が望むソフトウェア数が膨大であることが多い理由を「一組織内と言っても、あるいは、個々の部門内と言っても、(システムが統一され一様となっているわけではなく)多様性に富んでいるから」だと説明する。そしてそのためエンタープライズユーザにとって必要なのは、「選択の幅広さ」(多くのオプション(取捨選択可能なコンポーネント/サービス))と「選択の豊富さ」(特定の一つのことに関して複数のオプション)であり、そのような幅広さや豊富さが必要であるからこそ、サポートが重要になってくるのだと Weins は主張する。
Weins は、カスタマーサポートが重要な論点であるという点には同意し、また、スタック内のソフトウェアコンポーネント数が増大するにつれて十分なサポートの提供は難しくなるという The 451 Group 社の指摘に対しては事実であると認めている。しかし Weins によると、OpenLogic 社の独特のビジネスモデルのおかげで、同社は、ユーザが期待するサポートの質の高さを保ちながらも、前述の 160 個ものソフトウェアスタックコンポーネントのサポートを提供することが可能になっているのだという。(なお、OpenLogic 社のサービスでは、 固定の組み合わせのスタックを提供するのではなく、顧客に自らの必要性に基づいた独自のスタックを作成・カスタマイズさせ、そうして選ばれたコンポーネントに対してサポートを提供する、というアプローチをとっている。)
OpenLogic 社の、160 個ものコンポーネントのサポートを可能にしたビジネスモデルとは次のようなものだ。OpenLogic 社の内部サポートチームが取り扱うのは、一般的な保守問題に対しての、ありふれた、第 1レベル、第 2レベルのサポートだけだ。それ以上の、バグや相性といった第 3、第 4レベルの問題点は、ソフトウェアの開発元の企業へと送られる。その後 OpenLogic 社は、ユーザとソフトウェアベンダとともに解決に向けて取り組むことになる。「ユーザはただ 1つのサポート窓口というものを求めているのではありません。かと言って、160 も欲しいわけでもありません」と Weins は言う。「私達は、その両方の世界の最も良いところを提供しています」。
さらに Weins は、実際のところ、中には自分が必要とするオープンソースのサポートに関するニーズすべてについて頼れる単一の窓口が必要だと言って譲らない顧客もいる、と言う。「ユーザ自身のスタックについて、作成から利用、保守まで、さまざまな種類のサポートを必要とするユーザもいます」。
流行り廃り
エンタープライズユーザにとって高品質なサポートは重要であるが、その一方、認定試験、インストール、配布、トレーニングは、どうやらそうでもないようだ。これらのサービスは、The 451 Group 社の調査への回答者によると、スタック提供会社選びの際の顧客の関心事の中でも、下の方にランクする。Zachary は、これらのサービスは、企業がオープンソース環境の中での作業に慣れてくるに従い、より重要性が下がってきているのだと言う。「彼らには手取り足取り懇切丁寧な指導はもう必要ではなくなっているのです。開発者達はすでにオープンソース環境での居心地に特に問題を感じておらず、そのようなサービスにはあまり必要性を感じないのでしょう」。
Zachary は、スタック提供会社が競争力を保ち続けるためには、顧客に提供するサポートの質に重点をおくべきだと言う。また、既存のスタック提供会社は、自分たちのビジネスモデルを再考し、長期的に成長するためにサポートの提供体系を改良し方向性を正すことをいとわないようにするべきだと言う。そして Zachary によると、これはすでに業界内で始まっていることだと言う。
「OpenLogic 社は新しいビジネスモデルに取り組みました。SpikeSource 社はエンドユーザに重点を置くのをやめました。Unisys 社は、サポートビジネス全体の構築をしようと検討しています」と Zachary は指摘する。
同報告書はまた、いくつかのトレンドを明確にした。The 451 Group 社によると、それらのトレンドは、スタック提供会社にとってもエンドユーザにとっても、オープンソースソフトウェアの眺望を変化させることになると言う。まず、市場に参入するベンダの数が増え続けると、その結果として、合併や買収の起こる可能性が非常に高くなると言う。次に、各組織がオープンソース技術へとより馴染むにつれ、サポートのプロセスの内のより多くの部分を自前で確保できそうだと思い、スタック提供会社からの「懇切丁寧な指導」を必要とする割合は減少する可能性が高くなると言う。また、同報告書は、ベンダがより多くのオープンソース製品を提供し、エンタープライズユーザが自社内でより多くのオープンソースソフトウェアを実装するようになると、ベンダもユーザもどちらも同様に、コア開発者の雇用を急激に増加させる可能性が高くなるだろう、とも述べている。
Zachary は、エンドユーザを惹き付けようとするオープンソースのスタック提供会社間で、ある程度の競争が起こることは予想していたものの、実際にはかなりの割合の提携関係も生まれていることに驚いたと言う。「競争関係と同じくらい多くの提携関係が生まれたことに驚いています。これにははっとさせらせましたね。誰もが誰ともと協力したがっているということです。立場はあまり選ばず、皆、様子見している状態です」。
Zachary は、近年現われたスタック提供会社の数の多さにも驚かされたと言う。「昔は『スタック提供会社』と言うと Novell、Red Hat と JBoss、Sun Microsystems、OpenLogic あたりしか思い当たりませんでした。(弊社の報告書では)この分野に進出しようとしているベンダを 17 社、取り上げました。オープンソースベンダにとっては、競争に参加するいいタイミングだと思います」。
「変化は、目前に控えています」と Zachary は言う。
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