IBM、ハイエンドのストレージ新製品を投入──EMCからのシェア奪取に本腰
同製品はFICON接続をサポートし、従来モデルの「DS8000」の2倍に相当する4Gbpsのスループットを実現する。また、最新のPOWER5プロセッサを搭載し、パフォーマンスが15%向上したとしている。さらに階層ストレージ機能の搭載により、第1層は高速なファイバ・チャネル・デバイスを使って利用頻度の高いデータを保存し、第2層は低コストのATAドライブを使って利用頻度の低いデータを保存することが可能となっている。
そのほかの特徴としては、3つのサイトを使った業務継続/障害復旧機能の搭載が挙げられる。これにより、メイン・サイトがダウンした場合に、自動的に他の2つのサイトでバックアップが行われる。
同製品には4年間の保証が付いている。これによりIBMでは、従来モデルよりも導入する際の保有コストを引き下げられるとしている。
ライバルに追いつけるか
ストレージ市場をリードするEMCにIBMが追いつくとすれば、今回投入した新製品がその原動力の1つとなるはずだ。EMCは今年6月にネットワーク・セキュリティ企業のRSAセキュリティを21億ドルで買収すると発表するなど、最近はストレージ以外の分野への拡大に力を注いでいるが、その一方で主力事業であるストレージ・システムの分野では市場シェアを失いつつある。
IBMのシステム・ストレージ部門で製品マーケティング担当ディレクターを務めるチャーリー・アンドリューズ氏は、「われわれは今日までにEMCの市場シェアを大きく奪ってきた」と力説する。
事実、米国IDCの調査を見ると、2005年第4四半期の全世界外付けディスク・ストレージ・システム市場におけるEMCのシェアは、前年同期の21.8%から20.6%に下がったが、IBMは前年同期の12.8%から15.9%にシェアを伸ばした。
しかしながら、同市場をリードしているのはEMCであることに変わりはない。同社の2005年第4四半期における外部ディスク・ストレージ製品の売上高は33億6,000万ドルで、2位のヒューレット・パッカード(29億7,000万ドル)、3位のIBM(22億ドル)を引き離した。
シェア奪取に向け、新製品を相次ぎ投入
IBMは今回の発表に合わせて、小規模企業から大規模企業まで幅広い構成に対応し、データセンター業務の統合を支援する機能を搭載した新型ストレージ「System Storage N7000」シリーズも発表した。同製品はDS8000 Turboと同じく、2005年4月に締結された米国ネットワーク・アプライアンスとのOEM提携の下に開発されたものだ。アンドリューズ氏によると、ネットワーク・アプライアンスはN7000シリーズをIBM製品として製造する一方、同製品よりも小型のモデルは自社ブランドで販売することになっているという。
ガートナーのアナリスト、ロジャー・コックス氏は、今回のIBMの新製品投入により、これまでEMCの中核的なストレージ製品ラインが押さえてきた市場でIBMの競争力が高まるとの見方を示している。
コックス氏は、「ハイエンド向けのディスク・アレイ市場ではEMCが現在もIBMのライバルとして存在している。しかし、EMCは最近、市場シェアを大きく減らしており、その間に最も大きくシェアを伸ばしたのはIBMだった」と指摘している。
(ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局)
提供:Computerworld.jp