「OSSコミュニティの仕事はソフトだけでは終わらない」──著作権研究の権威がLinuxイベントで強調:LinuxWorld San Francisco 2006リポート
レッシング教授は、厳格な著作権法によってコンテンツの作成と利用が阻害されない自由な文化を構築するための戦いが展開されていると指摘。Amazon、Apple、AT&T、コムキャストなどの大手メディア企業やネットワーク企業がコンテンツの利用方法を管理しようと試みる一方で、インターネットを介してコンテンツの修正や共有が可能な「リード・ライト」文化が育ちつつあるとの見方を示した。
同氏は、アニメーション、ニュース、音楽付きのビデオ映像などを駆使しながら、人々がコンテンツを再利用して政治的なメッセージやユーモラスな作品を制作する様子を紹介し、著作権の規制によって、こうした創作活動が海賊行為にされてしまうことが大きな問題だと指摘した。
そのうえで同氏は、オープンソース・コミュニティに対し、フリーソフトウェアの考え方をコンテンツの枠組みの中に持ち込み、革新に向けたより自由な環境の実現に貢献する必要があると強調し、Creative Commonsライセンスの利用を提唱した。
これは、「すべての」権利を留保したり、「一部の」権利を留保するのではなく、オープンソース・コミュニティ内でソフトウェアのコードを利用したり、共有したりするのと同じように、コンテンツの再利用や修正を可能にするという考え方だ。
この取り組みは決して容易ではないが、10年前にLinuxを生み出した運動も、決して簡単ではなかったと、レッシング氏は強調する。
「(Microsoftが勢力を伸ばしていた10年前は)営利企業の独自技術に制約されることなくOSを開発することができるなど想像もできなかった。しかし、それが十分可能だっただけでなく、独自技術の制約を離れて誕生した優秀なOSが生み出されるという成果がもたらされた」(同氏)
レッシング氏は、満員の聴衆に向かって、「かつて、独自技術の制約を受けないOSを開発するなどと言う人がいれば、頭が変になったと思われただろう。今こそ、私を含め多くの人々が、(オープンソースにかかわる)皆さんの教えを請う必要がある」と参加者に語りかけた。
同氏は、法律家、国会議員、ロビイストでは「このビジョンを実現することはできない」としたうえで、「リード・ライト・インターネットは、経済成長に有益な貢献ができる」と強調した。
仮想化技術のオープン化も議論に
仮想化技術の導入は、ITマネジャーにとって最優先課題の上位に位置づけられる課題であり、同様にオープンソース・コミュニティ内でも注目が集まっている。今週開催されたLinuxWorld Conference & Expoでも、仮想化に関する多くのセッションが開かれ、AMD、IBM、VMware、XenSourceなどのベンダーが同技術についての議論を繰り広げた。
AMDは、最新型Opteronチップの発表こそ行わなかったものの、仮想化技術をハードウェアに組み込んだ新しいプロセッサによって、オープンソース仮想化技術「Xen」の機能が強化されることを示すデモを行った。
ハードウェアの支援を受けた仮想化機能により、OSに変更を加えることなく、対応の仮想環境で稼働させることができる。ハードウェアの助けがないと、修正されたLinuxカーネルを使わなければならない。
AMDのコマーシャルISVマーケティング担当ディレクター、マーガレット・ルイス氏は、「当社がオープンソース・コミュニティに提供しているのは、将来業界のリーダーであるVMwareと同じ土俵で戦う能力だ」と語っている。
なお、Intelの最新型プロセッサも、仮想化技術を内蔵している。
一方、VMwareの幹部は、同社の仮想化技術「VMware」をより身近なものにする取り組みを推進するため、「Virtual Machine Interface(VMI)」の開発に向け、IBMやXenSourceと提携したと発表した。ハイパーバイザーとOSを連携させ、VMwareやXenなどのプラットフォーム上で複数の仮想マシンを稼働させるための標準的な手段を開発するのがその目的とされている。
VMwareの研究開発担当上級ディレクター、ジャック・ロー氏は、「(VMIにより)管理が容易になる」と語っている。
(Network World 米国版)
提供:Computerworld.jp