CedegaとLinux: Windows用ゲームをLinuxでプレイする

LinuxディストリビューションがWindowsに後れを取っている領域があるとするならば、それはゲームの領域だ。PCゲームのほとんどはWindows用に作られている。では、Linuxユーザはどうしたらいいのか? 答えはCedegaだ。TransGamingが開発したCedegaは、WineとDirectXを融合させた技術である。現在、Cedega 5.2.3は約50本のゲームを公式にサポートしているが、実際に動くゲームの本数はもっと多いはずである。

1月あたりわずか5ドルで(最短のサブスクライブ期間は3ヶ月)、最新版のCedegaとサポートを利用することができ、さらに「TransGamingはCedegaの改良にあたってどのゲームを重視するべきか」という投票に参加する権利が得られる。

TransGaming.orgのゲームデータベースを見てみると、公式にサポートされているタイトルだけでも、「World of Warcraft」、「Civilization 4」、「Battlefield 2」、「Need for Speed Most Wanted」、「Half Life 2」、「Counter Strike」、「Fifa 2006」といった超大作の名前が並んでいる。さらにこのデータベースには、ほぼ問題なく動作することが確認されているゲームが1,300本以上掲載されている。「ほぼ問題なく」という但し書きがあるのは、Cedegaは単なる変換レイヤであり、DirectXおよびWindows APIの呼び出しをOpenGL、OSS/ALSA、およびLinux APIに変換するだけなので、すべてのものが完全に動作する保証はないからだ。

Cedegaのインストールは簡単だが、Cedegaの環境下にゲームをインストールするのは常に簡単であるとは限らない。たとえば「Civilization 4」をプレイするためには、Windows 98をエミュレートするようにCedegaを設定した上で、ゲームをインストールしなければならない(これにより、インストール時に追加のDLLがコピーされるようになる)。さらに、ゲームに同梱されているバージョンのDirectXをインストールする必要があり、その後、Windows XPエミュレーションを使用してゲームを実行することで、ようやくプレイできる状態になる。「Civilization 4」を最新パッチでアップデートしたいと思っても、気軽にアップデートしてはいけない。バージョン1.61にアップデートするとクラッシュしやすくなるので、可能であればバージョン1.52のままにしておくのがよい。実は、私は未だに「Civilization 4」をCedega環境でプレイできずにいる。メニューはきちんと機能するし、イントロのムービーも正しく表示されるのだが、シナリオやクイックゲームの読み込みが終わったとたんにクラッシュし、うんともすんとも言わなくなる。

プラス面も紹介しておこう。「Doom 3」はCedega環境でも問題なく動作し、画面のぎこちなさやバグも一切ない。しかし、現在ではID Softwareが「Doom」のLinux用バイナリを提供しており、動作の安定性は当然ながらネイティブの方が優れているわけなので、わざわざCedegaを使って「Doom」をプレイしたがる人がいるかどうかは疑問だ。

では、「Need for Speed Most Wanted」はどうだろうか。動作上の問題はないが、画面のぎこちなさを避けたい場合は、インストールした後に(インストールの際は、「Civilization 4」やその他の多くのゲームをインストールするときと同様の注意が必要)、シャドウの設定を最低にし、精細表示を避けることをお勧めする。この点を除けば、このゲームは問題なく動作するし、実際にプレイできるレベルである。

ライセンスの問題

Cedegaはさまざまなソースのコードを使用しており、数多くのライセンスの混合体の下でリリースされている。これはつまり、Cedegaのソースコードの大部分はCVSを通じて入手できるということだ。現在、WineはLGPLの下でリリースされているが、Cedegaはプロプライエタリソフトウェアである。当然ながら、この点はTransGamingと同社のフラッグシッププロジェクトの周辺に議論を巻き起こしている。CedegaはWineプロジェクトの一部を使用しているが、同プロジェクトに十分な還元をしていないというのだ。理由はもちろん、Cedegaはフリーソフトウェアではないからである。しかし、フリーの代替ソフトウェアを作ればビジネスに悪影響が出る。

さらに重要なことに、Cedegaのソースコードからコンパイル済みバイナリを作成することは可能かつ合法であるが、TransGamingは、「(そのような行為は)TransGamingが本コードを継続的に改良および開発していく能力を損なうものである」として強く反発している。「TransGamingは弊社の著作権コードを公開しているライセンスを変更する権利を持っており、もしも非営利ディストリビューションのコンパイル済みバイナリパッケージが弊社の継続的開発の資金調達に悪影響を及ぼすようなことがあれば、ライセンスの変更も辞さない」とTransGamingは述べている。実際、GentooとDebianがそれぞれのディストリビューションにCedegaを含めようとしたときに、その一歩手前まで行ったことがある。

古いゲームの中には、Wineだけを使用した方がよいものもあるが、そうでないものもある。たとえば「Pocket Tanks」は、Cedegaでは完全に動作するが、Wineではサウンド面に大きな問題がある。「Jazz Jackrabbit 2」は、Cedegaでは一応動作するがフルスクリーンモードが機能しないという問題があり、その一方で、Wineでは完全に動作する。「Atomic Bomberman」は、Cedegaではうまく動作しないが、Wineでは完璧なパフォーマンスを発揮する。

総じて、Cedegaでは数多くのゲームを実行できるが、たいていの場合は(公式にサポートされているゲームであっても)精細表示を避けた方が賢明であり、クラッシュの可能性もある。しかしそれでも、Linuxではゲームを一切プレイできないという状況に比べればましである。

商業的な問題

デスクトップOSとしてのLinuxの改良が進み、デスクトップOSの寿命においてエンターテイメントが大きな役割を果たすようになる一方で、ゲーム会社とユーザの間ではある種の「悪循環」が生じていた。ゲーム会社はLinux人気が高まるのを待ち、ユーザはゲーム会社がLinux用ゲームをリリースしてくれるまでLinuxディストリビューションへの乗り換えを控える、という構図である。

この悪循環を打破する最初の試みとして、たとえばID Softwareが「Quake 3」、「Return to Castle Wolfenstein」、「Doom 3」、「Quake 4」といったゲームのLinux用バイナリを提供し始めた。それに続くのがCedegaである。しかし、何人かのユーザは同意してくれるだろうが、Cedegaはゲーム会社にとってLinux用のゲームを開発しようという動機にはならない。

なにはともあれ、Cedegaはハイブリッドであり、最近のハイブリッドカーによく似た性質を持っている。ハイブリッドカーは、環境破壊に対する根本的な解決策ではないが、普通のガソリン使用車に比べればましであり、もっと良い解決策が見つかるまでの一時的な代替策にはなる。同様に、Cedegaは、Linuxでゲームをプレイできるようにするための根本的な解決策ではないが、まったくプレイできない状態よりはましであり、ゲーム会社がLinuxユーザの市場に気付いてLinux用ゲームをリリースしてくれるまでの一時的な代替策にはなる。

残念なのは、いくらさしあたりの解決策とはいえ、Cedegaが未だに「Plug and Play(つないだらすぐ動く)」ではなく「Plug and Pray(つないだら無事に動くよう祈る)」であることだ。しかし、PCゲームに夢中な人にとっては試してみる価値があるだろう。

NewsForge.com 原文