AMD、グラフィックス・チップ・ベンダーのATIを54億ドルで買収

 米AMDは7月24日、カナダのグラフィックス・チップ・ベンダー、ATIテクノロジーズを買収することで合意したと発表した。買収金額はおよそ54億ドルであり、現金と株式で決済される。

 AMDは、今回の買収について、モバイル・コンピューティングと家電市場に対応する統合製品を提供するためと説明している。

 ATIの副社長で、欧州/中東/アフリカ担当常務取締役のピーター・エディンジャー氏によると、合併後の新会社は、2008年以降、グラフィックス・チップとプロセッシング・チップを緊密に統合し、データ、グラフィックス、メディア、汎用アプリケーションなどに対応する製品を開発するという。

 新プラットフォームは、グラフィックス・ユニットとCPUユニットのパワーを関連づけることで差別化を図ることになっており、また2つのユニットがシングルチップ製品に統合される可能性もあるという。

 今後の手続きは、株主と規制当局の承認を得て進められるが、買収が成立した場合、AMDは、グラフィックス・チップの分野で世界最大級のプロバイダーになると見られている。

 ATIは、今年5月31日までの同社第3四半期決算で、売上高6億5,230万ドル、純利益3,190万ドルを計上し、第4四半期には売上高が6億2,000万ドルから6億9,000万ドルになるとの見通しを示していた。AITとAMDの昨年度の売上高を合わせるとおよそ73億ドルとなる。

 両社は、合併により、人員削減を行うことなく、1年目で7,500万ドル、2年目には1億2,500万ドルの業務経費を節減できるとしている。

 AMDの会長兼CEO、ヘクター・ルイス氏は、7月24日に行われた電話会見で、「人員削減については考えてない」と強調した。

 両社は、ATIの株主、および米国とカナダの規制当局の承認を得たうえで、今年第4四半期中に買収手続きを完了させることができると予想している。

 ルイス氏は、「われわれは、何年も前からいっしょに仕事をしており、両社の間には共通の文化がある」と語り、両社の合併が円滑に進むとの見通しを示した。

 AMDがATIを買収するのではないかといううわさは、数カ月前からささやかれていた。買収が承認されれば、最新のグラフィックス・チップや統合グラフィックス機能を搭載したチップセットのラインアップが加わることになり、AMDの製品ラインが大幅に強化される。

 AMDの製品ラインにATIの製品が加われば、グラフィックス機能を搭載したチップセットの製品ラインを持つライバル企業のIntelへの対抗力も強まると見られている。

 一方、ATIのCEO、デーブ・オートン氏によると、同社はIntelのマイクロプロセッサとともにPCのマザーボードで使用される統合グラフィックス・チップセットの販売で、四半期当たり8,000万ドルから1億ドルの売上げを上げているという。これは、5月31日までの四半期に同社が計上した売上高6億5,200万ドルの中で7番目に多い額だ。

 しかしIntelは近年、自社のグラフィックス・チップセットに注力する姿勢を強めており、AMD側もIntelプロセッサ向けチップセットの売上げを当てにしているわけではないという。ルイス氏は、「当社は慎重に予測を立てており、今後このビジネスは消滅すると考えている」と語っている。

 ただし同氏は、ATIチップの性能に満足しているマザーボード・メーカーが、引き続きインテルのプロセッサとともにこれらのチップ製品を使い続ける可能性があるため、AMDも自社のマイクロプロセッサとともに使用するチップの販売を継続する可能性があるとしている。

 AMDのCFO(最高財務責任者)、ボブ・リベット氏によると、今後拡大する可能性が最も高いのは、モバイルPC市場向けマイクロプロセッサだという。現在AMDが最も強いのは、サーバと消費者向けPCの分野だ。

 AMDの幹部は、ATIの買収がAMDとNVIDIAとの関係に悪影響を与える可能性はないとしている。同社は、グラフィックス・チップ分野におけるATIの主なライバルであり、AMDの重要なパートナーだ。今のところAMDとしては、NVIDIAを排除する計画はないという。

 AMDの社長兼COO(最高業務責任者)、ダーク・メイヤー氏は、主要ライバルであるIntelのアプローチと対比させながら、「当社のプラットフォーム利用を促すため、インタフェースは常にオープンにしておくつもりだ」と強調した。

 AMDは、買収に必要な資金を調達するため、新たにおよそ25億ドルを借り入れる予定だ。また、買収が撤回された場合、ATIが契約解除料としてAMDに1億6,200万ドルを支払うことで合意しているという。

(ピーター・セイヤー、サムナー・レモン/IDG News Service パリ支局)

AMD(米国)
http://www.amd.com

ATIテクノロジーズ(カナダ)
http://www.ati.com/

提供:Computerworld.jp