Lotus Notes on LinuxをIBMが公開

IBMは本日、同社の販売するコラボレーション/電子メールシステムであるLotus Notesについて、そのLinuxデスクトップ版のリリースをアナウンスした。今回のLotus Notes on Linuxの登場は、同シリーズのビジネス向けコラボレーションソフトウェアにおいて、Linuxオペレーティングシステムが正式にサポートされたことを意味する。従来バージョンのLotus Notesは、WindowsあるいはMacintoshプラットフォームでのみ使用できた。

同アプリケーションはLotus Notesバージョン7の一部として提供され、価格は140ドルとされている。Lotus Notes on LinuxでサポートされているのはRed Hat Enterprise Linux 4, Update 3であり、Novell SUSE for Enterprise 10については90日以内のサポートが予想されている。IBMによると、現状でその他のRed Hat系列のプラットフォームおよびDebianベースのディストリビューションの将来的なサポートに関する正式な計画はないものの、各種のテストは今後も継続するとのことである。

今回のリリースに対するLinuxコミュニティの反応は様々だ。Lotus NotesおよびLinuxのユーザたちは、長年待ち望んでいたサポートをIBMが正式にアナウンスしたことに喜びを感じていると言う。その一方で、今回のリリースは内容的に限られたものであり、またWineやCrossover Officeなどのアプリケーションを介してLinux上でLotus Notesを使用しているユーザが既に多数存在していることから、時期的にも遅すぎるとの声を上げている者もいる。なおIBMの広報担当者によると、製品リリース前に正式なベータテスト版が公開されたことはないので、現状で同製品の詳細はユーザ側に伝わっていないはずとのことだ。

Lotus Notes on Linuxのデザインには、オープンソース系の開発ツールであるEclipseフレームワークが用いられている。同じく、2007年に予定されている次回リリースの“Hannover”でも、Eclipseテクノロジによるデザインが行われているとのことだ。IBMの説明では、マルチプラットフォーム用の機能を装備する関係上、今後のLotus Notesすべてのリリースにおいて、Eclipseテクノロジが使用される予定だと言う。

Lotus Notesは教育現場、金融サービス、製薬業界など、様々な実務現場で使用されている。具体的な用途としては、在庫目録、営業情報、コールセンタなどのデータ管理を始め、性質的に体系化することが難しい情報の処理に適しており、また企業レベルでの電子メールインフラストラクチャとしての使用にも耐える作りになっている。

IBMによると今回のLotus Notes on Linuxのリリースは、Linuxベースのアプリケーション開発者にとっては新たな可能性を提供することを意味し、他のオペレーティングシステムからLinuxへの乗り換えを検討しているビジネスユーザにとっては、1つの障壁が取り除かれたことを意味するはずだとしている。「本製品は、単に電子メール、ドキュメント、スクリーンショット、メモなど複数のデータを扱えるだけでなく、これらを1つのグループとして共有することができます。これこそが“オープンなコンピューティング活動”です」と、IBM Lotusのシニアオファリングマネージャを務めるArthur Fontaine氏は説明する。

「本製品の真価が発揮されるのは、企業内で特定の問題にアクセスする際のプラットフォームとして使用する場合です」とFontaine氏は語る。Lotus Notes on Linuxは、ビジネス現場固有のニーズに則した形にカスタマイズした上で、複数のシステムでこうしたアプリケーションを使用することが可能である。

「現在多くのビジネス現場では、本当にVistaやOffice 2007のカスタマになる必要性はあるのか、という疑問が交わされており、その結果としてオープンソースソフトウェアに対する認識が高まりつつあります。今後もWindowsベース製品に縛られ続けるのも、オープンソース系Linuxに乗り換えてMicrosoftのくびきから脱するのも、カスタマの自由裁量です」。

将来的な動向

IT業界の動向調査およびコンサルティング業務を生業とするGartnerの予測によると、コラボレーションテクノロジは将来的に注目を浴びる分野だと見込まれている。Gartnerの予測は、「企業内で行われる作業の80%は、従業員が個人単位で行う作業ではなく、コラボレーション環境下での作業になる」というものである。またLinux Counter Projectの予測では、Linuxユーザの数は2900万程度に達しているという。業界アナリストたちの見解では、IBMはこれら2つの成長著しい分野のニーズを統合することで、競合他社よりも一歩抜きんでた存在となる可能性があるとのことである。

「エンタープライズ用コラボレーションプラットフォーム市場におけるIBMにとって最大の競争相手はMicrosoftです。そしてMicrosoft製のメッセージングおよびコラボレーション用クライアントは、Windows上でしか使用できません。IBMによる非Windows系デスクトップのサポートは、コラボレーションプラットフォーム市場においてMicrosoftとの差別化を図るのに寄与するはずです」というのが、Forrester Researchの主任アナリストを務めるErica Driver氏の説明である。

今回IBMが公式にオープンソースソフトウェアの価値を認める発言をしたことを受けて、多くの人々の頭に浮かんだ疑問は、これは将来的にIBMがWindows系製品への依存関係を完全に排除するための布石なのだろうかということだ。「NotesがLinuxをネイティブにサポートしたことで、IBMはWindowsデスクトップへの依存状態を緩和できるようになった訳であり、つまりはMicrosoftとの関係を清算する可能性を開いたことを意味します」とDriver氏は語る。

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