JBoss、“Web 2.0対応”フレームワークを発表──オープン化へ戦略転換

オープンソース・ミドルウェア・ベンダーの米JBossは6月13日、今回で3度目となる年次ユーザー・コンファレンス「JBoss World 2006」(6月12〜15日:ラスベガス)において、Web 2.0対応をうたった同社初のアプリケーション・フレームワーク「Seam 1.0」を発表した。

 JBoss World 2006では、ベンダー認証プログラムをSaaS(Software as a Service)プロバイダーに拡張し、エンタープライズ向けオープンソース製品のサポート基盤を強化していくこと。JBoss Operations Networkに含まれるコア・システム管理エージェントをオープンソース化し、独立系ソフトウェア・デベロッパーへのオープン管理プラットフォームの普及促進を図ることも明らかにされた。

 JBossの製品管理担当副社長ショーン・コノリー氏によると、これらの発表には、自社ソフトウェアの管理、変更、構成、およびRed Hatのソフトウェアを含む各種製品との連携を容易にすることにより、ビジネス・コンピューティング分野に攻勢をかける同社の戦略を補強するねらいがあるという。

 JBossは、JBoss Operations Networkに対応するソースコードを公開することによってオープンソース・コミュニティを育成し、同社の環境を他のさまざまな管理アプリケーションや機器と連携させることができるソフトウェア・エージェントの開発を刺激したいと考えている。

 「コードを完全に公開し、データベースやスタックの各部分に対応するエージェントの開発を促すことで、利用を拡大することが可能になる。またオープンソース・コミュニティ側も、各種のエージェントを拡張し、さまざまな要素を組み込むことができる」(コノリー氏)

 JBossの方針転換は、システムとソフトウェアを結び付ける新たな方法を求めるユーザーの要望に答えたものだという。「顧客は、エンド・ツー・エンドの管理機能を使えるようにしてほしいと求めていた。今回の方針転換は、こうした要望に答えるための大きな一歩になる」とコノリー氏は強調している。

 JBossは、コードをオープンソース化することで、主力製品であるJBoss Enterprise Middleware Suite(JEMS)とOperations Network上で稼働するアプリケーションの管理機能を改善できると期待している。

 すでに同社は、エージェント技術を使ってLinuxやWindows、UNIX(一部バージョン)などのOS、同社ミドルウェアやApache Web Server、Apache Tomcatなどを管理している。今後は、オープンソース開発コミュニティの中で、他のミドルウェア製品やデータベース・ソフトウェアに対応する管理エージェントが開発されるようになると期待している。

 また、サードパーティ・ディベロッパーが拡張機能を認証し、JEMS対応Operations Networkへ接続するのに使用できるブループリント、認証ツールキット、手法などもリリースするとしている。

 なお、JBossのエージェント技術で使用されるオープンソース・ライセンスの方式についてはまだ明らかにしていない。

 JBoss Operations Networkに搭載されている内蔵ソフトウェア・エージェントを使えば、システムの管理、監視、パッチ適用が可能になる。オープンソース開発者が開発した追加エージェントと組み合わせることで、その機能は大幅に強化されるという。

 さらに、Seam 1.0の出荷が本格化すれば、AJAX、JavaServer Faces、Enterprise JavaBeans(EJB)3.0、Javaポートレット、ビジネス・プロセス管理/ワークフローなど多彩なSOA(サービス指向アーキテクチャ)技術を容易に組み合わせることが可能な継ぎ目のない開発プラットフォームを提供することができる。

 Seam 1.0は、アーキテクチャとAPIレベルの面倒な作業が不要な設計になっており、Webアプリケーション・スタック全体を通じて単純なJavaオブジェクトやXML、EJB 3.0を使った各種の手段などを活用することにより、複雑なWebアプリケーションを構築することが可能だ。

 コノリー氏は、「これまで、J2EEやWeb 2.0のAPIは非常に複雑だった。Seam 1.0は、必要なコーディング作業を減らすことに貢献し、ポータル統合やビジネス・プロセス管理などの課題を容易に実現することができる」と語っている。

 またJBossは、SaaSプロバイダーにベンダー認証を与えることにより、顧客が最良の環境で同社の製品を使えるようになると期待している。

 これまで、JBossのベンダー認証プログラムにアクセスできたのは、独立系ソフトウェア・ベンダーとプラットフォーム・ベンダーだけだったが、これからは、アプリケーションのホスティングを行っているベンダーも認証を受けてサービスやサポートを強化することができる。

 この措置について、コノリー氏は、「顧客にとっての品質と可用性を向上させることができる」とメリットを強調する。

 JBossは現在、LinuxベンダーであるRed Hatの傘下に入っている。同社は、ラスベガスで開催中のJBoss World 2006におよそ900人の来場者を見込んでいる。

(トッド・ワイス/Computerworld オンライン米国版)

米JBoss:http://www.jboss.com/

提供:Computerworld.jp