Ubuntuへの乗り換えを検討するMEPIS

MEPIS(人気があるDebian系ディストリビューションのひとつ)が、まもなく新たな方向へ歩もうとしている。MEPISの創設者Warren Woodfordは、MEPISの今後のリリースのビルドソースをDebianからUbuntuに切り替えることを検討している。

Woodfordによれば、SimplyMEPIS 3.4-3(本日リリース予定)のビルドは相当大変だったようだ。「Etchプールとの戦いにすっかり時間を取られてしまった。随分苦労した。Debianコミュニティがかなり忙しくなってきたためだが、やっとリリースにこぎ着けた。そんなこともあって、安定版リリースのために別の道を検討している」

例として、WoodfordはEtchの至る所でudevサポートの安定化が遅れていると指摘する。そのせいで、Etchベースの安定版MEPISディストリビューションをビルドするとき苦労したという。「これは責めるべきことでもなんでもない。Debianがエンジニアリングを益々意識し、より組織的なやり方で一年半ごとにリリースを出すようになった。ただそれだけの話だ。Etchが破綻したのでなく、大きく変貌しつつあるということだ」

Woodfordは、Debianで進行しつつある急激な変化はDebianプロジェクト自体にとってよいことと前置きしながらも、Debian Etchをディストリビューションのベースとする者をより手こずらせることになると指摘する。

かつてDebianプロジェクトはもっとゆっくり動いていた。WoodfordがMEPISへの取り組みを始めたのは2002年11月。2002年7月にDebian Woodyがリリースされてから数ヶ月間、Debian Sargeは開発段階にあった。そして、その状態がほぼ3年続くことになる。Xandros、Linspire、MEPISといった会社がSargeベースのディストリビューションをビルドするとき比較的苦労せずに済んだのは、その開発ペースに遅れずついていくことがそれほど大変でなかったからだ。

一方、Ubuntuのリリース・サイクルとロードマップは、先がよく見えるのでディストリビューションのベースとしては、より向いているかもしれない。

MEPISはDCCA(Debian Common Core Alliance)のメンバでもあり、Woodfordは同プロジェクトに関与しているが、MEPISディストリビューションをDCCAベースでビルドするつもりはないと言う。「DCCAの向かおうとしている先がはっきりしないからだ」

ディストリビューションをゼロからビルドするのは問題外とWoodfordは言う。「DebianやUbuntuやFedoraと同じことをやろうとしたら、多分10人か15人か20人がパッケージのビルドにかかりきりになるだろう」

Woodfordによれば、MEPISはたった3名のパートタイム社員でマーケティング、サポート、受注活動をこなしており、MEPISの実際の開発はWoodfordがすべて行っているという。つまり、MEPISとしては、Debianや Ubuntuのような土台となるものが必要なのだ。

Ubuntuの開発者Jeff Waughは、UbuntuベースのMEPISというアイデアに理解を示しているようで、「Ubuntuはプラットフォームとしてもコミュニティとしても付き合って損はない。より多くの開発者が参加し、Ubuntuを各自のニーズやユーザーのニーズに合わせて変えてくれて大いに結構」と述べている。Guadalinex、Impi Linux、MoLinux、VMwareのBrowser Appliance、そしていくつかのLive-CDもUbuntuをベースにしているという。

MEPISはMEPISであり続ける

Woodfordは、ディストリビューションのカーネルをUbuntuベースに変更することの可否について、MEPISユーザーを対象に既に投票調査を行っている。約半数のMEPISユーザーは彼の考える方向に賛成している。残りのユーザーは「Debianの好きな人とUbuntuが嫌いな人に分かれている」という。しかし、彼は、この調査結果が事実を正確に反映していないかもしれないと認めている。Ubuntuファンの多くがサイトを訪れて投票に参加する可能性は低いからだ。

また、UbuntuベースにすることがMEPISにとってどんな意味を持つか誤解されている面もあると指摘する。「ディストリビューションのベースがDebianからUbuntuに切り替わってもエンドユーザーにはほとんど影響しない。ユーザーの使い慣れたツール類、インストーラ、その他MEPIS固有の機能は変化しないからだ。MEPISはDebianを微調整したものではない。中身がDebianでもユーザーが触れる部分は違う。GUI好きのユーザーには衣の下がDebianであることはわからないだろう」

MEPISとしては、Debianに対するのと同じやり方でUbuntuのパッケージ・リポジトリを使い始めるだけの話なのである。ある意味で、MEPISはUbuntuがDebianに持つのと同じ関係をUbuntuに対して持つことになる。

今後への期待

MEPISにとってUbuntuベースのメリットのひとつは、現在のx86版に加えてAMD64版を容易に提供できることだ。Woodfordは、以前にもAMD64版を検討したが、その当時「Debianは64ビット環境で32ビット・アプリケーションをどう扱うかということでまだ揺れ動いていた」と言う。しかし、Ubuntuに移行すれば、「すぐにでも」AMD64版を提供できるはずと言う。

MEPISユーザーは、リリースがもっと定期的に行われると期待してよい。Woodfordは、現在Ubuntuが行っているように半年サイクルへの移行を考えている。

MEPISは、そのスクリプトとインストーラのライセンスをめぐって、Linuxコミュニティの一部からたびたびケチをつけられている。Woodfordによれば、次期バージョンまでにインストーラをGPLのもとでリリースすると表明したそうである。「スクリプトがまだGPLに適合していないというのは初耳だ。いずれのスクリプトもプロプライエタリだとは考えてない。ライセンス・ステートメントの記載漏れがあれば、必ず次期リリースまでに修正する」

現段階でWoodfordはUbuntuを選択肢のひとつと見て評価するつもりだが、完全にコミットしたわけではない。「まだ100パーセントUbuntuに決めたわけでない。現在、Ubuntuを調査している。詳しく調べなければ、確定的なことは言えない」

「しかし、一連のテストでよい結果が出れば、MEPISユーザーは5月には、つまりUbuntuのDapper Drakeがリリースされてから約30日のうちにMEPISの新しいリリースが提供されるものと期待してよい」

MEPISユーザーのためになることをすべく努力すると彼は言う。「普段からMEPISコミュニティとMEPISユーザーのニーズに機敏に対応するよう努めており、今回の決定に際してもユーザーの意見を尊重するつもりだ」

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