Google、書籍検索技術ではMicrosoftに敗北

MicrosoftとGoogleは、書籍のオンライン検索の技術に関しては、いつもと逆の役割を演じることになった。今回は、MicrosoftとオープンテクノロジーのコミュニティがGoogleに対抗しており、Google側は、攻撃的で、尊大で、強引に自分たちの主張を通そうとしているように感じられる。

Google Print(Book Searchに改名)への野心は衰えたとはいえ、インターネット検索の成功者であるGoogleは、出版と最新技術が交錯する場では、今だに多くの人々に軽蔑の目で見られている。

Googleは、問題をGoogleの野心とオープン技術陣営との対立として取り上げられたことに驚いているという。Googleは基本的にオープン技術には好意的であり、自社の開発でも、Summer of Codeでも、大学への寄付でも、オープンソースへの支援においても、そうした態度を取っている。

IDCのアナリストSue Feldman(著作権と使用許可の問題に出版業界やコーネル大学で取り組んでおり、書籍などのデジタル化に関する問題に詳しい)によれば、Googleはキーワード検索と同様の簡単さで書籍を検索するアイディアで他に先んじようとしたためにその代償を支払う羽目になっているという。

「いいアイディアを思いついたら、迷わずとにかくやってみる」というのが、今回のGoogleの姿勢だと彼女は説明する。

GoogleはYahooとMicrosoftが支援するOpen Content Alliance(OCA)とも争っている。OCAはオープンソースの考え方に基づいた組織(技術系、非営利団体、政府など)により、マルチメディアの保存技術に共同で取り組んでいる。

技術をリードするよりも追随したり調整したりすることの方が多いMicrosoftは、OCAのメンバーになることの重要性をすぐに指摘し、書籍の検索結果をオンライン化するための支援を広く求めた。「我々はこの技術を重要な戦略と考えています」とJustin Osmer(MSNのプロダクトマネージャー)は言う。「書籍のデジタル化技術に取り組む企業が増えるのは良いことで、OCAはデジタル化を実現するための技術について誰もが納得できるフレームワークを提供します」

GoogleはOCAに加わっていないものの、OCAの活動は支持すると言っている。「素晴らしいことです」とGoogleのAlex Macgillivray(シニアプロダクトマネージャーで知的財産担当)は言う。「我々はOCAに賛同しています。どうして誤解されているのか不思議です」

なぜ「GoogleはOCAに加わっていないのか」との問いに、同氏は「GoogleはOCAと話し合っています」と言ったが、OCAは「世界中の書籍にどのようにインデックスを付けるかということに対する部分的な解決でしかありません」と付け加えた。

「OCAとは全く違った技術と方法なのです」と彼は言う。「我々は世界中の情報をもっと見つけやすくしようとしています。孤立しているとは考えていません。この分野で先頭に立つ大きなチャンスだと考えているのです」

MicrosoftのOsmerによれば、Microsoftとしては、OCAとMicrosoftの活動を通じて著作権の保有者と協力しあい、書籍のデジタル化を有益なものにしたいと考えているという。「我々は明確にすべての著作権を尊重し、各パートナーと協力し合って、著作権に関して互いに合意できる保護方法を実現するための情報を提供しようとしています」

これはGoogleの言っていることに非常に似ているが、Googleの臆面もないやり方と壮大なビジョンは出版業界の神経を逆なでしかねない。Jonathan Spira(BasexのCEOでチーフアナリスト)によれば、対抗勢力と同じような手法をとっているにもかかわらず、GoogleのBook Searchの周囲に多くの批判を引き起こしているのは、Googleの尊大さとその姿勢である。

「彼らは基本的に最良と考えられる態度を取りました。これも良い教訓です」とSpiraは、Googleがパブリックドメインの書籍を使ってスタートする縮小プランは彼らが当初から予定していたことだと現在主張していることに言及している。

Spiraは「Googleは先ごろ300万ドルを米国議会図書館のWorld Digital Libraryのキャンペーンに寄付したが、書籍をオンライン化することの意味を著作権の保有者たちに理解させることはできませんでした」と指摘した。さらに「彼らはそれを伝える能力を欠いています」と付け加えた。

OCAの旗揚げパーティに参加したGoogleのMacgillivrayは、Googleはまだ批判にさらされていると述べた。Googleに対抗するグループも書籍をデジタル化するというアイディアには賛成していると彼は主張する。「圧倒的な支持を受けており、我々を批判する人の中にも、社会に大きな利益をもたらすという点では賛成してくれています。一部の人たちが批判的なコメントをしているからといって、ユーザーに恩恵をもたらすサービスをやめさせることはできません」と述べた。

主導権争いと訴訟問題

「知的所有権の問題は本当に厄介です」とIDCのFeldmanは言う。彼女によれば「作者は自分の作ったものにできるだけ多くの人が触れて欲しいと考えているが、同様に報酬も必要だと考えています。少なくとも重視しています。このことは、情報は無料であるべきだという議論では見落とされがち」なのだという。

Feldmanの指摘では、この問題に絡んでいるのは、誰がどんなコンテンツをオンライン化するか、どのようにそれを行うか、インターネットユーザーの考え方にどんな影響を与えうるかであり、法廷闘争ではどの問題も解決できないのだという。

彼女は、著作権保有者の報酬と責任について「まだ仕組みができていないのです」と言う。「にもかかわらず訴訟合戦が繰り広げられているわけです」

Feldmanは、サードパーティが運営するある種の貨幣化プラットフォームを挙げ、より大規模な組織がより多くの書籍のデジタル化に取り組むことが望ましいと述べている。

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