REALbasic 5.5のドイツ人ディストリビュータに話を聞く

Real Software, Inc.は最近、REALbasic 5.5のリリースを発表した。これは、GTKベースのネイティブLinuxアプリケーションをコンパイルすることのできるWindows用およびMac OS X用のRAD開発環境である。

この新しいソフトウェアについてReal Softwareにいろいろ話を聞いてみたいと思った。Real Softwareはドイツ人の私にハイデルブルク(ドイツ)のパートナー企業、Application Systemsを紹介してくれた。私が話を伺ったのは、同社CEOのVolker Ritzhaupt氏だ。

STIBS: REALbasicの機能で特に注目すべきものは何でしょうか。

Ritzhaupt: REALbasicで最も重要な機能は、誰でも1つのコードベースからLinux、Machintosh、Windows用のソフトウェアを簡単に作成できるということでしょう。

STIBS: Linux用の開発環境がまだ存在していないため、現在、開発はWindows環境下で行われていますね。Linux用のネイティブな開発環境については今後の予定はどうなっているのでしょう。

Ritzhaupt: 年末に向けて、REALbasic IDEのネイティブLinux版のリリースを予定しています。

STIBS: REALbasicには、Microsoft Visual BasicコードをREALbasicに変換するためのウィザードが付いていますが、Visual BasicはDLLとOCXに大きく依存しています。このウィザードを使ってVBの機能をLinuxに移植するのはどの程度のレベルまで可能なのでしょうか。

Ritzhaupt: ほとんどのVBアプリケーションはさほどDLLは使用しません。DLLを多用するVBアプリケーションは少数派と言えるでしょう。また、DLLを多用するVBアプリケーションにしても、すでにREALbasicのネイティブな機能として実装されているものを使用しているだけにすぎません。プロジェクトの70%は移植可能だと考えています。

STIBS: Linux用にコンパイルされたアプリケーションはランタイムライブラリを必要としますか。あるいは、REALbasicはスタンドアロン実行可能ファイルを生成するのでしょうか。

Ritzhaupt: REALbasicはスタンドアロン実行ファイルを生成します。ライセンス使用料は常に無料です。

STIBS: アプリケーションを移植することのできるProfessional版のライセンスは、Linux用で400米ドル、ドイツでは369ユーロです。これは、余暇にオープンソースプロジェクトに参加する開発者がポケットマネーで買える金額ではありませんね。なぜ、Linuxアプリケーション用のライセンスをこれほどまで高めに設定しているのですか。Linuxアプリケーションのコンパイルに特化した廉価のStandard版をリリースする予定はありますか。

Ritzhaupt: Standard版は100米ドルです(国によって若干の差はあります)。REALbasic IDEのLinuxへの移植が終われば、オープンソース開発者はLinuxアプリケーション用のStandard版を購入できるようになるでしょう。

STIBS: Linux用のツールキットとしてQtではなくGTKを選ばれたのはなぜですか。

Ritzhaupt: Qtは高価だからです。非商用ソフトウェアを作成するのであれば無償バージョンを使用することができます。しかし、商用ソフトウェア用のライセンス使用料は開発者1人あたり1000米ドルを超え、しかも、1つのプラットフォームにしか使用できません。BorlandはTrolltech(QT開発元)の一部を所有していて、同社のCEOがTrolltechの役員会に乗り込んでいます。このような事情があるということをお察しください。一方、GTKはオープンソースです。したがって、仮にGTKにバグがあったとしても、私たちがそれを修正し、それによってコミュニティに貢献することができます。

STIBS: Windowsの開発環境下でLinux用のBASICコンパイラをビルドした最初の人物の1人がWilliam Yu氏です。彼の開発したRapidQにはいまだに多くのファンがいます。そのWilliam氏をReal Softwareに招かれたわけですが、Linuxの機能とREALbasicの開発における彼の全般的役割はどのようなものでしょうか。

Ritzhaupt: WilliamはREALbasic全般を担当していますが、何と言っても彼の貢献が大きいのは、Linuxのサポートです。


私はREALbasicを実際にテストするチャンスにはまだ恵まれていない。代わりに、いとこのMarc Stibane(ベルリンのMacソフトウェア会社のオーナー)の意見を紹介しよう。「REALbasicは、サポートしている3つのプラットフォームのすべてを対象としたプロジェクトに使用するのなら便利だが、あるプラットフォームの利点を他のプラットフォームに移植しようと思うと苦労させられるね。現状では、各プラットフォームに共通する基本機能をサポートするので手一杯という感じかな」

数か月も経てば、REALbasicで書かれたLinuxデスクトップ用の商用ソフトウェアが出回り始めるだろう。よく知られたWindowsアプリケーションも、Visual Basicアシスタントにより簡単に移植できるはずだ。今あるLinuxフリーソフトウェアプロジェクト以外に、新たに追加すべきプログラムは何だろうか。Linuxで利用できるならお金を払ってもよいと思えるような優れたソフトウェアはあるだろうか。