2038年問題に対応した「OpenBSD 5.5」リリース

 OpenBSD開発チームは5月1日、UNIX系OSの最新安定版「OpenBSD 5.5」をリリースした。2038年問題に対応するためのtime_t型の64ビット化が行われている。

 OpenBSDはセキュリティや安定性、移植性の高さなどを特徴とする4.4BSDベースのUNIX系OS。i386やsparc/sparc64、arm、alpha、powerpcなど多数のアーキテクチャに対応する。

 年2回のリリースサイクルで開発が進められており、2013年11月1日に公開された「OpenBSD 5.4」に続くリリースとなる。恒例の「リリースソング」は「Wrap in Time」。

 本バージョンでの大きなトピックとして、2038年問題への対応がある。主としてUNIXでは32ビット符号付き整数型であるtime_t型を使って1970年1月1日からの経過秒数を扱っているが、2038年1月19日3時14分7秒(UTC)で32ビット符号付き整数型で扱える値の上限を迎えることになる。そのため、それを超えた時刻を扱う場合オーバーフローによる不具合が発生する可能性がある。

 OpenBSD 5.5ではカーネルやライブラリ、ユーザーランドプログラムなどソースツリー全体で64ビットのtime_tをサポートすることで、2038年問題に対応した。ネットワークやディスク、データベースなどに関連するデータやコードからもtime_t型を削除し、time_t型へのキャストもできる限り除去したという。このほかにも、文字列で%lld(long long)キャストを利用するよう変更するなど、多面的に2038年問題の回避策を講じた。これによりバージョン5.5以降は2038年問題の影響を受けず、2038年1月19日を過ぎても問題は発生しないとしている。

 このほか、インストーラーを強化し、自動インストールをサポートした。USBドライブ向けディスクイメージでは、amd64とi386をサポートした。リリースとパッケージの安全性を強化し、signify(1)ツールを利用した暗号で署名されるようになった。

 OpenSMTPDが5.4.2は、OpenSSHは6.6にアップデートされた。OpenSMTPDではDSN拡張の初期サポート、SNIサポートなどが新たに加わり、設定ファイル、SMTPサーバーなども強化した。OpenSSH 6.6は、sshとsshdでのJ-PAKE認証コードの削除、sshでのMatchブロック処理の改善、sshdでのsshd_configのAcceptEnvパターンでのワイルドカードを利用した環境変数受け渡しに関するセキュリティ修正などが変更点となる。

 そのほか、各種パッケージも「GNOME 3.10.2」や「KDE 3.5.10」、「KDE 4.11.5」、「Kfce 4.10」、「PostgreSQL 9.3.2」、「MySQL 5.1.73」、「GCC 4.6.4」、「GCC 4.8.2」など最新のものに更新されている。ハードウェアサポートも拡大し、VMware Paravirtual SCSI向けドライバや、Xbox 360コントローラに対応したuhidドライバなど多数のドライバが更新・追加されている。パケットフィルタ、ルーティングデーモンなども強化されている。

 OpenBSD 5.5は各FTPサイトよりダウンロードできるほか、CD-ROMセットも注文できる。

 OpenBSDプロジェクトは先に、OpenSSLのHeartbleed脆弱性問題を受けてOpenSSLのフォークとなる「LibreSSL」プロジェクトを立ち上げた。LibreSSLが導入されるのは、11月に公開予定の次期版「OpenBSD 5.6」の予定となっている。

OpenBSD
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