HDR画像を簡単に作成できる「Luminance HDR」――SourceForgeが選ぶ今月のプロジェクト
米SourceForgeでは毎月1つのプロジェクトを投票で選び、「Project of the Month(今月のプロジェクト)」の栄冠を与えている。2012年5月に選ばれたのは、HDR(ハイダイナミックレンジ合成)を行うためのツール「Luminance HDR」だ。HDRは露出を変えながら撮影した複数の画像を合成することで、より広いダイナミックレンジの画像を作成する手法である。以下では、米SourceForgeがLuminance HDRの開発者らに行ったインタビューの模様をお伝えしよう。
プロジェクトの開発者であるDavide Anastasia氏、Daniel Kaneider氏、Franco Comida氏に、同プロジェクトやHDR処理について聞く事ができた。彼らのソフトウェアを使った作品は、Flickr groupまたはFacebookページで見ることができる。
――まずは、Project of the Monthの受賞おめでとう。そしてSourceFourgeコミュニティーの一員でいてくれることに感謝している。
Davide:このコミュニティの一員でいることは実に素晴らしいことだよ!
――まずはあなた方のプロジェクトについて聞かせて欲しい。どういった機能があるのか、そしてこのプロジェクトがどのようにして始まったのかなど。
Davide:このLuminance HDRはHDR画像を作成するための完全なソリューションなんだ。HDRが何かって? 要するに、理想的な広い帯域、多彩な色を持つ画像作成を可能にするものだね。同じシーンを撮影した複数の画像を組み合わせて処理を行い、新たな画像を作成するんだ。これがプロジェクトの簡単な紹介さ。
――こういった画像を見るようになったのはここ数年のことだが、この技術が開発されてからどれくらい経つんだい?
Davide: この分野は90年前半から研究が始まっているから、実は結構昔からある。2000年代初めには既にプロダクトが出来上がっていたんだ。素晴らしいことに、Luminance HDRはこの分野において特殊なオープンソースソリューションみたいなんだ。だから、多くの注目を集めている。
――あなた方の開発者コミュニティーの規模はどれくらい?
Davide: 基本的には私たち3人でやっている。
プロのカメラマンもあなた方のソフトウェアを使ってたりするのかな、それとも趣味で写真を撮っている人達とか……。
Davide: 私たちはFacebookやFlickrの両方にとても素晴らしいコミュニティーを持っているし、またLuminance HDRを使用しているプロのカメラマンもいる。多くの場合、彼らは最初の画像を作成するのにLuminance HDRを使って、そのあとで商用ソフトウェアとかGIMP、それからあえて言うならそのほかのオープンソースツールなどで後処理を行うという感じだ。Flickrには面白い画像がたくさんあるから、ぜひFlickrグループへのリンクを貼ってもらいたい。
――HDR処理について知りたいんだけど、複数の画像が必要だと言うチュートリアルを見たことがあるいっぽうで、その必要はない、という話もある。これについて詳しくきかせて欲しいんだが。
Davide:一概には言えない。何がしたいか次第なんだよ。多くの人はHDR的な見た目を求めている。そういう場合は通常、1つの画像で始めるんだ。だがシーンのダイナミックレンジ全体を網羅したいなら、通常は複数の画像をベースにHDR処理を行うことになる。たとえば前景と背景の明るさが大きく異なるような風景写真なんかがHDRによく使われる。この場合、画像を「ブラケットグループ」にする必要がある。推奨するのは3枚の画像を使うことだ。たとえば、カメラが推奨する最高露出の写真を1枚と、露出値がプラス2とマイナス2のものをそれぞれ1枚ずつ。これはそれなりのカメラならどれでもできるものだ。そのため、ユーザーベースが大きく拡大する可能性がある。
――使用しているプログラミング言語は?
Davide:だいたいはC++で、所々でCを使っている。Cの部分はレガシーなコードで、いずれは書き換えられることになるだろう。どちらにしろ、ほとんどのコードはC++だ。あとはGUIやウィジェットのライブラリとしてQTを使用している。そして当然ながら、画像を読み込んだり、色補正を行うのにほかのライブラリも使っている。あと、Francoが色管理システム周りを担当しているんだけど、その仕事っぷりは本当に素晴らしいんだ。彼は既にここ数が月間、ずっとこれに携わっていて、近日中に新機能も公開する予定だ。
――もう少し詳しく聞きたいんだけど、今度リリースされる次のバージョンはどんな感じなの?
Davide:実はたくさんの新機能があるんだ。さっき言ったように、Francoは色管理システムの構築を行っている。その間、私はBoost GILを基本ベースとした、Luminance HDR全体の新しいエンジンの開発を行っているんだ。そのため多くのプロジェクトが進行中であり、これらは将来的にLuminance HDRを大きく変えることになるだろう。ただ、そのリリース時期については私たちにもまだ分からない。想像できると思うが、このプロジェクトは私たちが第一に時間を割いて行っている活動ではないんだ。だから私たち自身でスケジュールを管理をしなくてはならない。DanielとFrancoも話すことがあるだろう。
Daniel:私はWindowsサイドのテストを担当している。メインの環境にWindowsを使っている開発者は私だけなんだ。なので主に幾つかテストを行ったり小さなパッチを作ったりしている。たとえばWindowsのプログレスバーを使用するといったような、Windows向けに小さな機能改善を行うようなものだ。
Franco:私はここ2か月間ほど、カラーマネージメントシステムに関わっている。モニターでもプリンターでも同じように画像が見えるようにするためのものだ。
――次のバージョンはいつ公開するんだい?
Davide:まだ日にちはハッキリとは分からないんだ。一か月のうちにベータ版のような何かはリリースされるだろうと思っている。私たちはだいたい6か月毎に安定したバージョンをリリースしている。前回の安定したバージョンは1月にリリースされた。通常のリリースは7月に1回、そして1月にもう1回となっている。その間、皆に機能を検証して貰いたいから、所々でベータ版を公開するんだ。私たちはユーザーと多くのことをやっている。Facebookグループ及びFlickrグループもある。ソフトウェアの周りに小さなコミュニティを形成しているんだ。どちらかでも参加すると面白いかもしれない。またこれらコミュニティから、素晴らしいフィードバックをたくさん得ているんだ。
――インタビューに答えてくれて本当にありがとう。
一同:ありがとう。
――受賞おめでとう!