1Gbpsの高速なネットワークをゆったり利用できるNTTPCコミュニケーションズのVPSサービスを試す
NTTPCコミュニケーションズが提供するホスティング/データセンターサービス「WebARENA」が、さらにより手頃感のある「WebARENA VPSエントリー」を4月12日からサービスINする。そこで本記事では同社のVPSサービス「WebARENAのVPS」についてその使用感やパフォーマンスをチェックするとともに、ファイルサーバーとして活用する例を紹介する。
ホスティングの老舗によるVPSサービス「WebARENAのVPS」
NTTPCコミュニケーションズは日本でインターネットが普及し始めた1990年代中頃よりWebARENAブランドでサービスを提供している、ホスティング業界の老舗である。VPSサービスについても、まだ日本ではVPS自体が普及していなかった2005年より「WebARENA SuitePRO」というサービスを開始している(図1)。
WebARENAブランドではレンタルサーバーやデータセンターサービスなどが提供されているが、企業向けのサービスが中心ということで、サービス品質が高いのが特長だ。WebARENAのVPSにおいても同様で、1Gbps共有のネットワーク回線が利用できるほか、メモリ容量やストレージ性能にも余裕がある構成となっている。
サーバーは免震構造や電源設備の冗長化などを備えた国内データセンター内にあり、セキュリティ面や施設面での安全性も高い。実際、2011年に発生した東日本大震災でも、データセンターに問題が起こることはまったくなく通常通り稼働し続けたという。
WebARENAにおけるVPSサービスのプランと料金設定
WebARENAのVPSは月額8,820円(税込)からの1プランに加え、今回、新たに月額1,450円(税込)からのVPSエントリーが追加される。それぞれのプランで利用できるVPSのスペックは表1のとおりだ。両者とも特長としては高速なネットワークや潤沢なメモリ容量が挙げられる。
構成要素 | VPSハイスペック(SuitePRO V3) | VPSエントリー |
---|---|---|
メモリ(CPU) | 2GB(1コア共有) | |
HDD容量 | 50GB〜 | 10GB |
対応OS | CentOS 5および6、Scientific Linux 6 | |
ネットワーク | 1Gbps(共有) | |
転送量 | 無制限(追加課金なし) | |
月額料金(税込) | 8,820円 | 1,450円 |
仮想マシンの基本スペックは、VPS ハイスペック(SuitePRO V3)はディスク容量が50GB、メモリ容量が2GBで、CPUについては1コアを共有するというものになっている。VPSエントリーではディスク容量は10GBとなるものの、メモリ容量および利用できるCPUは2GB、1コア共有と同じである。利用できるOSはCentOS 5/6およびScientific Linux 6となる。
ネットワーク面では、主要なIXやISPと高速接続したNTTPCのIPバックボーンを使用。サーバーとバックボーン間は1Gbpsの回線で接続されている。1Gbps回線を複数のユーザーで共有する形ではあるが、大容量ファイルのやりとりや大量のアクセスにも十分に対応できる。また主要なネットワーク回線は二重化されており、ネットワーク関連のトラブルに強い構成が取られている。
また、WebARENAのVPSハイスペック(SuitePRO V3)では管理や運用を容易にするため、表2のようなサービスも無料で提供される。バックアップやリソース拡張といった有料オプションサービスも用意されている。新プランのVPSエントリーでは一部のサービスは利用できない。
サービス | VPSハイスペック(SuitePRO V3) | VPSエントリー |
---|---|---|
管理用コントロールパネル | 無料 | |
ウイルスチェックゲートウェイの利用 | 無料 | |
Symantec製迷惑メールフィルタ「Symantec Brightmail」 | 無料 | |
ポート監視機能 | 無料 | |
独自ドメイン/マルチドメインの利用 | 無料 | |
ドメインの逆引き設定やセカンダリDNS利用 | 無料 | |
フェイルオーバー機能 | 無料 | なし |
サービス品質保証制度(SLA) | 無料 | なし |
バックアップオプション | 2,100円/月〜 | VPSハイスペックへ移行可能(※1) |
Web改ざんチェックサービス | 2,100円/月〜(別途初期費用2,100円が必要) | |
DNSアウトソーシング | 525円/月〜(別途初期費用1,050円が必要) | |
オンデマンドのリソース拡張 | 1,050円/月〜 | VPSハイスペックへ移行可能(※1) |
※1 VPSハイスペックへの移行は、オンラインでIPアドレスの変更なしにスムーズに移行できる
コントロールパネルや「あると便利」なセキュリティサービスが利用可能
「管理用コントロールパネル」は、VPSの起動や停止、稼働状況の確認、各種設定などをWebブラウザから行えるという機能だ(図2)。詳細については後述するが、SSHサーバー設定の変更や各種サーバーの簡易設定といった機能も備えている。
無料で利用できるセキュリティ関連機能としてはウイルスチェックゲートウェイや迷惑メールフィルタ、ポート監視機能が提供されている。
ウイルスチェックゲートウェイ機能は、VPSとインターネット間に設置されているゲートウェイで自動的にメールのウイルスチェックを行うものだ。SMTP(25番および587番ポート)、POP3(110番ポート)、IMAP4(143番ポート)を利用してやりとりされるメールが対象となる。ここでウイルスが検出された場合、自動的にウイルスが取り除かれ、メールの本文がウイルスが検知された旨に置き換えられるようになっている。Symantec製の迷惑メールフィルタ「Symantec Brightmail」も提供されており、基本的な設定のみで容易に迷惑メール対策が可能となる。ただし、提供されるのは現在のところCentOS 5向けのみであるため、これ以外のOSを選択した場合は利用できない。SymantecからCentOS 6用のパッケージ提供がいつ始まるかが利用可能になるかのポイントだろう。
「ポート監視機能」は、サービスの動作状況を一定間隔でチェックし、サービスが停止していた場合にあらかじめ指定しておいたメールアドレスにアラートメールを送信する機能だ。専用の監視システムが用意されており、サービスが停止しているかどうかの判断は監視用サーバーがユーザーのサーバーにアクセスしてその応答を確認することで行う。複雑な設定やパッケージ/ソフトウェアのインストールなどは不要で、監視用サーバーがサービスにアクセスできるよう設定するだけで利用可能だ。
また、有料のオプションサービスとなるが、あらかじめ指定しておいたURLやドメインを定期的にクロールし、悪意のあるスクリプトやコードの埋め込みなどを自動的にチェックできる「Web改ざん検知サービス」も提供されている。
オンデマンドでメモリ容量やHDD容量を変更可能、変更は即座に反映
WebサイトやWebアプリケーション、ソーシャルサービスなどを運用する場合、突然アクセスが急増するなど、想定外のリソースが必要となる場合も多い。このような状況に対応できるよう、VPSハイスペック(SuitePRO V3)ではリソース変更オプションも用意されている。変更できるのはHDD容量およびメモリ容量/CPU数で、それぞれの料金は表3、4のようになっている(メモリの容量とCPU数についてはセットでの変更となる)。
容量 | 追加料金(税込) |
---|---|
150GB | +1,050円/月 |
250GB | +2,100円/月 |
500GB | +4,200円/月 |
1000GB | +8,400円/月 |
メモリ容量 | CPUコア数 | 追加料金(税込) |
---|---|---|
4GB | 1コア共有 | +4,200円/月 |
8GB | 2コア共有 | +8,400円/月 |
16GB | 4コア共有 | +16,800円/月 |
これらは必要なときにオンラインで申し込みでき、変更は即座に反映される(ディスク容量を変更する場合はVPSの再起動が必要)。一度変更したリソースをあとから減らすことも可能だ。
信頼性を高めるバックアップ機能やフェイルオーバー機能
ほかのVPSサービスではあまり見られないオプションとしては、バックアップオプションがある。ユーザーが利用しているサーバーとは物理的に異なる場所に用意されたバックアップサーバーにディスクのフルバックアップを作成できるというもので、設定したスケジュールで自動的にバックアップを作成でき、最大3世代のバックアップが可能という仕様となっている。特定のバックアップを削除しないように保護することもできるため、柔軟な運用が可能だ。
この機能はディスク容量の変更オプションで「バックアップあり」を選択した場合で利用でき、料金は表5のとおりだ。
容量 | 追加料金(税込) |
---|---|
50GB | +2,100円/月 |
150GB | +5,250円/月 |
250GB | +8,400円/月 |
500GB | +16,800円/月 |
1000GB | +33,600円/月 |
バックアップオプションを申し込むと、コントロールパネルの「初期設定」項目に「バックアップ」が追加され、バックアップ関連の設定を行えるようになる(図3)。
バックアップの頻度は「毎日」および「毎週」、「毎月」から選択でき、「毎週」を選択した場合は実行する曜日を、「毎月」を指定した場合は実行する日を「1日/5日/10日/15日/20日/25日/末日」から選択できる(図4)。
また、VPSハイスペックでは、フェイルオーバー機能やサービス品質保証制度(SLA)も用意されている。フェイルオーバー機能はVPSが収容されているホストサーバーが故障した場合、自動的にほかのホストサーバーでVPSが再起動するというものだ。また、サービス品質保証制度(SLA)は障害によってサーバー稼働率が100%を下回った場合、月額基本料金の一部を減額するというものとなる(予告されたメンテナンスについては障害時間に含まれない)。
WebARENAのVPSの制限
WebARENAのVPSでは「OS仮想化」という方式を採用しており、Linuxカーネルを複数のユーザーで共有して利用する形となっている。そのため、カーネルに関する操作は一部使用できないという制限がある。具体的にはカーネルのカスタマイズができないほか、独自のカーネルモジュールは利用できない。また、ハードウェアへの直接アクセスやファイルシステムのマウント、swap領域の利用、SELinuxの利用などもサポートされない。一般的なサーバーの運用においてこれらの制限が問題となることはないと思われるが、swapが利用できないため、メモリを使い切るとソフトウェアの動作が不安定になる可能性がある点には注意したい。