Interclueに見るプロプライエタリ化の落とし穴

 Interclueは、Firefoxにおいてリンク先を訪問前にプレビューしてくれるエクステンションで、マウスクリックの手間を省き(クリックした方が早い場合が多いが)、同一ページ上の複数のリンク先をすばやく切り替えて表示することを可能とする。残念ながら、このアドオンで利益を回収し、ソースコードは非公開にするといった決断によって、悪くはなかったその基本的なアイデアは損なわれ、絶えず表示される寄付の要請のせいでInterclueはナグウェアにまで成り下がってしまっている。基本的な機能は有用なものであることからInterclueは、プロプライエタリ化という決断を下す際の難しさを示す典型的な例であるといえる。

 Interclueの使用方法は単純明快だ。リンクの上にカーソルを置くと、リンクの右側に10×10ピクセルのアイコンが1つまたは複数表示される。アイコンのうちの1つは、リンクで参照されるページのFavicon(ファビコン)か、またはInterclueの汎用アイコンである。その他に、それがページのアンカーへのリンクであることや暗号化されていること、またはリンク先のファイルの種類など、そのリンクに関する情報を示すアイコンが複数存在する。ただしそのようなアイコンが理論的には存在するというだけで、実際には目を細めることなくすぐに気が付くのは、アイコンがあるということだけかもしれない。アイコンの種類まですぐに見分けられたとしても、それらの意味は自分で覚えておかなければならない。実際のところ、ユーザが本当に欲しいのはプレビュー機能だけであるため、アイコンの種類による付加情報には大した価値はない。

 アイコンの上にカーソルを置くと、リンク先のサイトの小さなプレビューが表示される。このプレビューには、Interclueが主張するとおり、時間の節約という利点がある。しかしInterclueがうまく認識できないサイトも存在する。例えばSite Meterでは、より詳細な表示へのリンクを、より一般的なページへのリンクであると認識してしまう。さらにやっかいなのは、多くの場合においてプレビューページが小さすぎて、スクロールやリサイズをしなければページ全体を参照することができないため、スクロールやリサイズのタブを何度もクリックしなければならないことになり、あまり時間の節約にならないという点だ。つまり、プレビュー機能が便利かどうかといえば、便利である場合もあればそうでない場合もあるといえそうである。

 ClueViewerと呼ばれるプレビューウィンドウは、その中にマウスが存在する限り表示される。プレビューウィンドウでは、1つ前のリンクのプレビューか、次のリンクのプレビューへと移動することができ、Interconが指摘するように、検索結果ページを参照する際には特に便利である。リンクにブックマークをつけたり、リンク先を新しいタブに表示したり、リンクを電子メールで送信したり、デスクトップのクリップボードにコピーしたり、Inteclueのオプションを変更したり、バグを報告したりすることもできる。また、急に感謝の気持ちが高まったり気前がよくなったりした場合には、プレビューウィンドウのアイコンを使ってInterclueに寄付することができる。より実用的な機能としては、プレビューウィンドウ内を右クリックすることにより、通常のFirefoxのコンテンツメニューを表示し、画像や強調表示したテキスト部分を保存することができる。Interclueを使用すれば、最初にいたページから離れることなく、あるトピックについて調べて、メモを残すことができる。最初にいたページが検索結果一覧である場合には、特に便利である。

 Interclueは、Firefoxの下端のステータスバーの右側に小さなアイコンをインストールする。これをクリックすると、Interclueのちょっとしたチュートリアルや、全体的に、または現在閲覧しているセッションやページのみにおいて、同アドオンを無効化する機能を含むメニューが表示される。

 任意のFirefoxアドオンと同様に、Interclueは[ツール]→[アドオン]メニューにおいて設定することができる。ステータスバーからも同じ[Preferences(設定)]ダイアログを開くことができる。Preferencesでは、アドオンがより効率的に動作できるようにコンピュータに関する詳細情報を与えたり、アイコンやプレビューの表示速度を設定したりすることができる。Preferencesの最後には、クレジットタブと、金銭を要請する長ったらしい文章がつらつらと綴られた寄付タブがある。

プロプライエタリ化のジレンマ

 Interclue FAQのページでは、同ソフトウェアのダウンロードが無償であることを開発者らが説明している。しかしエンジェル投資を受けているため、オープンなライセンスの下にコードを公開することはできないという。これには罪の意識を感じているらしく、FAQでは、収益を上げることができればその一部をオープンソースプロジェクトに投資するかもしれないとしている。一方で、Interclueを使用するユーザはアフィリエイトプログラムに参加することができるという登録者サービスについて説明している。

 Interclueのこの立場について言及したのは、1つはフリーライセンスが存在しないことからInterclueの使用を避けるユーザがいるだろうと思ったためである。しかしそれ以外にも、これが不要だと感じるだけでなく、プロプライエタリなソフトウェアが陥りがちなジレンマを示す例だと思うからである。開発者らがこのソフトウェアを無償で提供できるとすれば当然、複数バージョンを用意してデュアルライセンスを導入することを検討するにちがいないのだ。

 さらに重要な点は、営利目的に走れば、間違いなくソフトウェア自体の価値は低下するということである。Interclueの背景にある基本的なアイデアは、便利なウェブツールを作成するには悪くないが、それを柱にビジネスを構築するにはいささか浅はかであるように思われる。ビジネスとして確立しようとすると、ただ煩雑になるだけで、基本的な機能の強化には全くつながらない。寄付の要請にいたっては不快なだけだ。フリーソフトウェアに対する自分の考え方に反することを理由にInterclueを避けるユーザがいなかったとしても、何とか金銭を得ようとするそのやり方は間違いなく拒絶されるだろう。

Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータ分野のジャーナリスト。

Linux.com 原文(2008年12月29日)