openSUSE 11.1がクリスマスより一足早くリリース

 今年もまたあの季節がやって来た。といってもクリスマスのことではない。我らがLinuxの本命ディストリビューションから最新版が出る時期なのだ。本日(12/18)、openSUSEのバージョン11.1がリリースされる。ポイントリリースというだけあって、新規インストールあるいはアップグレードを促す新機能が目白押しだ。

 openSUSE 11.1は複数の形態で提供されており、i586、x86_64の各アーキテクチャについてDVDとライブCDのイメージが用意されている。今回は、i586用のDVDで動作確認を行った。

 最初に気付く変更点の1つが、新しいライセンス契約だ。これまでのようなEULA(使用許諾契約書)ではなく、「同意する」ボタンのクリックを必要としないオープンソースライセンス契約になっている。ただし、このライセンスには依然として「GPLの下でリリースされておらず、実際に著作権や商標権が存在するopenSUSEおよびNovellソフトウェア」への言及が含まれている。openSUSEプロジェクトは、昨年秋にUbuntuでMozillaのEULAが批判を受けて早々に改定を余儀なくされたことを踏まえ、今回の変更によって世間の賛同やコミュニティからの支持が増えるとの期待を抱いている。このライセンス変更の目的を端的に表しているのが、openSUSEのコミュニティマネージャーJoe “Zonker” Brockmeier氏の「これで再配布や変更に何の制限もないライセンスになった」というひと言だ。

 バージョン11.0で一新されたopenSUSEの外観は、この11.1でさらに手が加えられ、新たなグラフィックやツールのアップデートが見られる。再設計された今回のパーティショナーでは、操作性向上のためにドライブとパーティションの一覧が左側ペインにまとめられ、より広い右側ペインには作業を行うドライブの詳細情報が見やすく表示される。インストール中は、推奨の設定内容がユーザに提示されるだけだが、ボタンを1つクリックするだけでこのパーティショナーの画面をカスタマイズのために開くことができる。

 デスクトップ環境は、インストールの途中で、openSUSE用にカスタマイズされたGNOME 2.24、同じくKDE 4.1、その他(KDE 3やXfce 4が含まれる)のなかから選択する。また、「Summary」画面で「Software」という見出しをクリックすれば、その他のソフトウェアや追加のデスクトップを選択できる。ブートや実行レベルなど、それ以外の設定項目も、該当する見出しをクリックすることで変更が可能だ。

 インストールで注目に値するのが、ネットワークの設定がまったく出てこないことだ。openSUSE 11.1では、ホスト名の設定も含めてネットワークのセットアップが自動的に行われる。こうしたネットワーク設定がインストール手順から消えたことは、新規または急ぎでインストールを行うユーザから見れば効率化といえるだろうが、ネットワーク設定をカスタマイズしたいユーザにとっては初回ブート後までその作業が行えないという制限になる。しかも、この自動設定には難点がある。システム管理ユーティリティYaSTによるホスト名の自動設定を3回ほど利用したのだが、リブート後に表示されるホスト名はいずれも英数字をランダムに組み合わせた不可解で憶えにくいものだった。そのほか、ファイアウォールやAppArmorといったセキュリティツールをオフにできるオプションもインストール中には出て来なくなった。

 だが、本当に驚いたのはインストールのあとだった。インストール作業が終わって1分ほど目を離しているうちに、いつの間にかデスクトップ画面が表示されていたのだ。実は、openSUSE 11.1ではインストール後の設定も自動化されている。これはある意味では進歩だが、カスタマイズはやはりYaSTが使えるようになるまでおあずけになる。実際、この時点ではシステムがrootパスワードを持たない状態になっていた。つまり、今回のopenSUSEは、Ubuntu同様、sudoの採用により、通常はrootでしか行えない高度な管理タスクがユーザでも操作可能になっている。確かに初心者にとって使いやすいものになったかもしれないが、セキュリティ保護のパーミッションの重要性を知る古参者としては気になる部分だ。以前のバージョンの動作に手っとり早く戻すには、初期インストールの「Summary」フェーズで「User Settings」をクリックしてrootパスワードを設定すればよい。

opensuse1_thumb.jpg
openSUSE 11.1のデスクトップ(SmoltとKDE)

 sudoの採用により、ユーザパスワードだけでソフトウェアのインストール、削除、アップデートがマシンに対して行えるようになった。パッケージ管理システムYaSTは、バージョン11.0の時点で完全にリライトされ、処理速度と信頼性が著しく向上した。この最新版では、さらなる機能強化が施されている。グラフィカルなソフトウェアマネージャの起動、アップデート、検索が従来より高速になったほか、リポジトリからのダウンロードやインストールにかかる時間もかなり短縮されている。また、検索を何度か行っていると、機能の向上につながる追加パッケージを提示してくれる。

 デスクトップ画面に文字どおりポップアップされる新たな要素として、Smoltがある。このハードウェアプロファイラは、Linuxシステムで使用中のハードウェア情報の収集を目的として、最初にFedoraで導入された。openSUSEのデスクトップでも今回から採用されており、インストール先のハードウェアプロファイル情報をsmolt.orgに匿名で送信する機能を備えている。

 openSUSE 11.1のデスクトップシステムは、すべて最新の安定版ソフトウェアで構成されている。KDEはバージョン4.1.3がバンドルされているので、KDE 4支持派も納得できるだろう。このKDEには、新機能の1つとして、ハードウェアでサポートされている場合にKWinのコンポジット機能をデフォルトで有効にする機能が含まれている。あるいは、付属のSimple CompizConfig Settings ManagerからCompizを選んで使うこともできる。デスクトップにフォルダのような働きをさせることも可能だ。フォルダビュー(Folder View)と呼ばれるこの機能を使えば、これまでずっとほかのフォルダで見てきた“ビュー”をアイコン、ファイル、リンクに持たせることができる。

 また、GNOME 2.24では、ファイルマネージャNautilusの機能が強化され、インタフェースのタブ化、Tasqueという新しいタスク管理ツールの導入、組み込み検索の改良が行われている。今回のopenSUSEはGNOMEとの統合化も進み、ウィジェットも洗練化された。

opensuse2_thumb.jpg
openSUSE 11.1のGNOMEデスクトップ

 openSUSE 11.1は、KDE 3.5が付属する最後のリリースになるだろう。この旧バージョンのKDE向けのパッケージは、11.1よりあとのopenSUSEではもうメンテナンスもミラーリングもされず、今後は重要度の高いセキュリティ修正しか実装されないことになっている。

 最新の安定版であるXfce 4.4.3も利用できるほか、一般的なアプリケーションについても最新かつ最高のバージョンが用意されている。私のお気に入りのアプリケーションだと、OpenOffice.org 3.0(Novell Edition)、Firefox 3.0.4、GIMP 2.6.2、Amarok 1.4 (2.0も利用可)、Totem 2.24、Evolution 2.24、FlashPlayer 10.0、Pidgin 2.5.1、GnuCash 2.2.7などが挙げられる。また、システム内部は、Linuxカーネル2.6.27、GCC 4.3、Xorg 7.4で構成されている。さらに、パワーユーザ向けにはXenハイパーバイザ、Apache Webサーバ、MySQLデータベースのほか、システムバックアップ(System Backup)とシステム復旧(System Restoration)のツールも用意されている。もちろん、これらは氷山の一角にすぎない。ほかにもすばらしいソフトウェアがたくさん付属するが、数が多すぎてここでは紹介しきれない。

ハードウェアのサポート

opensuse3_thumb.jpg
YaSTとXfce

 ここでは、2台のマシンでopenSUSE 11.1をテストした。1台はLinux用に構成されたデスクトップマシンで、そのハードウェア構成では基本的には何の問題も起こらなかったが、KWinだけはデフォルトで有効にならなかった。このマシンにはNVIDIA製グラフィックカードが載っており、その機能を有効にするにはプロプライエタリなドライバが必要だったからだ。それ以外は、初回のブートですべて動作した。

 続いて、意外に使える旧式のHewlett-Packard製ノートPCでもopenSUSE 11.1をテストした。やはりNVIDIA製のグラフィックカードが原因で3Dデスクトップ効果を有効にできなかったほか、Ndiswrapperを使って無線EthernetチップのWindows用ドライバを利用しなければならなかった。また、NetworkManagerはこのデバイスに対応しておらず、ifupを使った旧来の方法でのネットワーク接続を余儀なくされた。こうするとローミングが多少難しくなるのだが、設定した接続はブートの時点から使える状態になる。

まとめ

 全体的に見て、今回のリリースもよく出来ている。やはり安定性と完成度の非常に高いシステムの1つであり、あらゆるユーザのコンピューティングニーズに応えることができるだろう。私の環境ではいくつかの小さな問題に遭遇したものの、総合的には満足のいく結果だった。

 しかし、使いやすさ重視の風潮への極端な迎合には失望させられた。カスタマイズの利便性を犠牲にしてでも、とにかくLinuxを使いやすいものにしようとする最近のLinuxディストリビューション開発陣の傾向には、行き過ぎが見え始めている。確かに初心者ユーザのためには使いやすくすべきだが、そのために熟練ユーザにとって使いづらいものや、セキュリティをおろそかにしたものになってしまってはならない。openSUSEをはじめとするディストリビューションには、風潮に流されることなく、両者のほどよいバランスを見極めてもらいたい。

Linux.com 原文(2008年12月18日)