OpenOffice.org Calcへの入力を効率化するDataForm

 スプレッドシートを、ちょっとしたデータベースとして利用する人もいるだろう。データベースよりもユーザーフレンドリーで、データ量がそれほど多くなければうまく処理することができるからだ。データベース向けのツールの中には、スプレッドシートにも適用可能なものもある。たとえばOpenOffice.org Calcの新しいエクステンションである DataForm は、スプレッドシートのデータの入力と検索を容易にすることを目的に、フォームのようなインターフェースを提供する。

 DataFormは、Microsoft Excelにある類似の機能をベースとしている。どちらも、スプレッドシートのセルへの情報入力を容易にすることを目的としたものだ。スプレッドシートにデータを入力するには、ツールバーの入力フィールドを利用するか、または対象となるフィールドを直接クリックしなければならない。どちらの方法も非常に面倒である。カーソルがいずれかのセルにあるときは、タブや矢印キーによる移動が可能だが、それでも列幅を調整しなければ入力した情報がすぐには表示されない場合もある。DataFormは、3つめの入力手段を提供することにより、この制約を取り除く。つまり、OpenOffice.orgのBaseへのデータ入力用に小さなフォームを作成可能とする。

 DataFormの現バージョンは0.6.0だが、その開発は急ピッチで進められている。OpenOffice.org 2.1またはそれ以降と互換性があるとされているが、私のテストではOpenOffice.org 3.0でしか動作しなかった。ただし、StarOffice 8.0のUpdate 5でも動作可能ということなので、OpenOffice.org 2.4の最新版でも動作するかもしれない。

 他のエクステンションと同様に、[ツール] → [拡張機能マネージャ]によりDataFormをインストールすることができる。最近ではJavaを必要とするエクステンションが増えているが、DataFormはJavaを必要とせず、OpenOffice.org独自のマクロ言語で記述されている。最近私が調査した多くのエクステンションよりも高速なのは、そのためかもしれない。

DataFormの使用

 DataFormを使用するには、情報をシートの上にテーブル形式に並べる必要がある。つまり、最上行にヘッダやラベルが付いた行列形式にデータを整列させなければならない。ヘッダを作成したら、テーブルの任意の箇所か、ヘッダの下の空白行を直接クリックし、メニューの[Data] → [Forms]を選択することにより、DataForm入力ウィンドウを開くことができる。

 DataFormは、各列の第一行がヘッダで、テーブルの各行が1つのレコードであるとみなして、各列用の入力フォームからなるダイアログウィンドウを開く。フォームの横に並んだボタンの機能は一目瞭然だろう。[New]ボタンは新しいレコードを追加し、[Delete]ボタンは確認メッセージの表示後に、現在のレコードを削除する。

 同エクステンションを使用していると、いくつか奇妙な点に気が付く。特に、次の操作に移るまで新しいエントリがテーブルに追加されないのは不思議だ。次の操作に移ると、新しいエントリがテーブルの最初の空白行に追加される。通常は最後のエントリの下である。エントリの位置を変更するには、追加後にメニューの[Data] → [Sort]を選択しなければならない。

 DataFormにより削除したレコードは、Calcの「元に戻す」機能で復元することはできない。DataFormには[Restore]ボタンがあり、おそらく将来的には削除を取り消す機能が実装されるのだろうが、現バージョンではグレー表示されている。今のところ、誤って項目を削除してしまった場合は、保存せずにそのファイルを閉じるしかその項目を復元する方法はない。

 DataFormは、検索機能にも制約がある。[Find Prev(前方検索)]と[Find Next(後方検索)]のボタンは、テーブル内を順にたどるためのボタンである。あちこちに移動したい場合は、補完機能を持つ[Criteria(検索基準)]ボタンで検索するとよい。たとえば「T」と入力すると、Tで開始する最初のセルエントリに飛んでくれる。これらの機能はレコード数が中規模である場合には便利だが、広い範囲を検索する場合には、DataFormを閉じて、Calcの[編集]メニューにある、一般的な検索ツールを利用する方がよいだろう。

制約と有用性

 現時点では、現在のレコードから複数レコード分前後に移動するという、Excelには存在する機能がDataFormにはない。キーボードショートカットもない。また、アクセシビリティ機能の一環として、入力フォームのフォントサイズをコントロールから変更する機能もあるとよいと思う。

 とはいえ、これらはいずれも些細な機能であり、正式版リリースまでには整備されるだろう。現段階では、まだ正式版ではないものの、データベースのレコードの編集にフォームを使用することに慣れている人にとっては特に、十分に便利な機能を備えている。それ以外の人にとっては、このエクステンションになれるまでに少し時間がかかるかもしれないが、それでも20分もデータ入力をした後には、なぜ今までこれなしでやってこられたのだろうかと不思議に感じるかもしれない。現状のままでもDataFormは、Calcの標準ビルドに加えるべきと思えるほどのレベルにあるといえる。

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Bruce Byfieldは、Linux.comに定期的に寄稿しているコンピュータ分野のジャーナリスト。

Linux.com 原文(2008年11月24日)