Sidux試用記:じわじわと良さが伝わるディストリビューション

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  Sidux は、比較的新しいデスクトップLinuxディストリビューションだ。Debianの不安定版の開発ブランチsidをベースとしている。最新のDebianの派生ディストリビューションとして、簡単にインストールできて使いやすいという点を念頭に開発が進められており、Debianプロジェクトの基本原則や価値を忠実に受け継いでいることを誇りにしている。Siduxを使ってみたところ、若干の不都合もあったものの、使うたびにその良さがだんだんわかってきた。

 Siduxには、構成の異なるLive CDが何種類かある。私は、KDEデスクトップをフル装備した、i686およびAMD64アーキテクチャ用の2GBのDVD版を利用した。このほか、デスクトップがKDE-LiteのバージョンやXFCEのバージョンも両アーキテクチャ用にある。いずれもサイズは500MB未満だ。ダウンロードページには、ISOイメージをディスクに焼くときの注意点として、高品質なメディアを使用し、ディスクアットワンスで書き込むようとの指示がある。だが、私がその注意書きに気付いたのは、既にシステムのテストに入ってからだった。そのため、書き込み方はふだんとまったく同じだったのだが、特に問題は生じなかった。

 いずれのアーキテクチャでも、DVDは正常にすばやく起動し、私が利用しているNVIDIAのグラフィックチップと液晶画面に応じた最適な解像度が自動で設定された。現在のリリースの背景画像に使われている明るい春色はなかなかいいと思ったが、ウィンドウの装飾やウィジェットのテーマは月並みだ。私が利用しているハードウェアはほとんどが自動認識され、正常に動作した。有線式のインターネットは、ブート時につないでおくとそのまま接続できた。CPU速度の倍率変更もデフォルトで有効になっていた。

 KDE3.5.9を利用したデスクトップとパネルはすっきりまとまっているが、メニューについては、4段階の深さを持つ冗長なDebianのメニューが踏襲されている。残りのメニューはKDEの標準的なものだが、多数の項目が追加されている。どうやら、KDEアプリケーションや設定ツールを数多く搭載しているようだ。

インストーラ

 そんな第一印象を抱きつつ、次にSiduxをハードディスクにインストールしてみることにした。Live CDのデスクトップ上のアイコンから、ユーザフレンドリなインストーラを起動して、インストール作業をスムーズに進めていくことができる。手順自体は、一般的なLinuxインストーラとおおむね同様だ。タブを利用したインタフェースなので、前の手順に戻って変更を加えるのも簡単だ。

 インストール作業は、タブか[Forward]ボタンをクリックして、順を追って進めていく。[Welcome]画面には、SiduxをUSBドライブにインストールするオプションがある。[Partitioning]タブには、パーティション分割を行うオプションがあり、ルートパーティションやファイルシステムを定義したり、オプションのマウントポイントを指定したりできる。[Grub/Timezone]タブでは時間帯とGRUBの設定を行い、[User]タブではrootパスワードとユーザアカウントを設定する。[Network]タブではマシンのホスト名を指定する。[Firmware]では一部の無線Ethernetアダプタ用のドライバをインストールできる。以上の手順を踏んだうえで、最後の画面で[Next]をクリックすると、指定した設定に従ってSiduxがハードディスクにインストールされる。

ソフトウェアとシステムツール

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Sidux

 Siduxはメインのデスクトップ環境としてKDEを利用しているため、標準装備のアプリケーションにはKDE用のものが多い。たとえば、KMail、Konqueror、Akregator、Kwriteといったアプリケーションは当然のように備えている。そのほか、画像の読み込み、表示、スキャン、編集用にはdigiKam、Gwenview、Kooka、Krita、Xsaneがあるし、オフィスアプリケーションにはOpenOffice.orgがある。マルチメディア関連にはAmarok、Kaffeine、TVtime、コミュニケーションツールにはKonversationとKopete、ファイルのダウンロードにはKTorrentとKGet、インターネット閲覧にはIceweaselを装備している。その他のアクセサリとして、KSayIt、KCalc、Kate、BasKet、Arkなどもある。

 搭載しているアプリケーション、ツール、ユーティリティ類は数が多すぎてとても全部は紹介しきれないが、特に目を引いたものをいくつか挙げていこう。まずは、システムトレイアプリケーションのHermes Upgrade Sentinelだ。Sidux.comのNewsセクションを監視し、dist-upgradeパッケージに関する問題が見つかると、画面に赤信号を表示して警告を通知してくれる。他にも、通常のニュース記事や、Siduxのパッケージに関する情報、更新パッケージなどについても通知できる。

 VirtualBox OSE 1.6.6は、通常のデスクトップ上で別のオペレーティングシステムを実行できる。Windowsの主要バージョン、Linuxの各種ディストリビューション、一部のUNIXなど、複数のゲストオペレーティングシステムに対応している。アップデートでVirtualBox 2.xの搭載を期待したいところだ。

 Debian Package Searchは、DebianおよびSiduxのソフトウェア用のパッケージマネージャだ。かなり細かなインタフェースでフィルタや検索を行い、結果に応じてインストールや削除も行える。標準状態では、パッケージ管理のバックエンドにAptitudeを利用するよう設定されているが、SiduxにはAptitudeが含まれていない。バックエンドをapt-getに変更するか、Aptitudeをインストールすることが必要だ。そこさえきちんと済ませれば、ツール自体はきちんと動作するようだ。もちろん、Synapticも用意されているので、好みに応じてそちらを使ってもよい。

 さらに、もう1つのソフトウェア管理の方法として、Metapackageインストーラがある。Disk、Education、Gamesなど、ソフトウェアがグループごとに表示され、その多くはさらに細かなサブグループに分かれている。チェックボックスをオンにすることで、Metapackage全体やサブグループをインストールできるため、時間を大きく節約できる。たとえば、Educationの下の3_to_10_yearsというグループには、Khangman、GCompris、GnuChess、TuxType、TuxPaint、TuxMath、Childsplay、Lletters、Lmemory、Gtans、Kanagram、Ktuberlingが登録されている。オプションにより、フリー以外のものを有効にすることも可能だ。

 Siduxは独自のコントロールセンターユーティリティを備えている。他のディストリビューションほど包括的なものではないが、気の効いたオプションもいくつかある。このユーティリティでは、ディスプレイの解像度の調整、デフォルトブラウザの選択、新しいカーネルとモジュールのインストールや削除が可能だ。さらに、ネットワークアダプタや接続の設定、サービスの設定や開始、アップグレード可能なパッケージの確認、基本的なシステム情報の参照も行うことができる。

使いやすさ

 現在のLinuxでは、ハードウェアの互換性は以前ほど問題にはならない。一般的なハードウェアであれば、自動で認識され、適切に設定されることが多い。私が試した限り、Siduxについてもそうだった。インストールの[Firmware]の項でEthernetドライバを追加して以降は、年季の入った私のノートパソコンのすべてのハードウェアが正常に機能した。無線接続だけは設定が必要だったが、どんなディストリビューションでもパスキーは自分で指定するしかない。

 Siduxには、ATIやNVIDIAの3Dアクセラレーションや動画の視聴に必要なプロプライエタリソフトウェアは含まれていないが、それ以外の面では表示のニーズをすべて満たしている。私は、Adobe LabsからFlashを、MPlayerのWebサイトからビデオコーデックを、Synapticでmozilla-mplayerプラグインを、それぞれインストールした。ディスクやインターネット上の動画を見るためだ。また、DVDナビゲーションを有効にし、Synapticのパッケージからライブラリを読み込んだ。libdvdcss2はdebian-multimedia.orgにある。

 世のディストリビューションの中には、こうしたプロプライエタリなファイルを備えているものも多いのに、わざわざSiduxを選ぶメリットはどこにあるのだろうか。1つ言えるのは、パフォーマンスが優れていることだ。Siduxは非常に高速で、かつ強固だ。すっきりとして見栄えのよいデスクトップ環境を備え、多数のアプリケーションを標準装備している。SiduxとDebianのレポジトリには、Linux用のソフトウェアで用意されていないものはほとんどない。また、Siduxは、活発で友好的なコミュニティがディストリビューションを支えている。ドキュメントも充実しているし、開発者たちも熱心だ。総合的に見て、プロプライエタリなソフトウェアをいくつか導入するという小さな手間は十分に報われそうだ。

Linux.com 原文(2008年10月8日)