Foresight Linux、3分の2なら悪くない
Foresightは、いくつかの形態で提供されている。完全装備のGNOME版はDVDのものと、CD 2枚組のものの2種類がある。CD 1枚のGNOME Lite版もあるが、これは英語版のみで、OpenOffice.orgが含まれていない。このほかにXfce版があるが、まだアルファー・リリースで今のところGNOMEリリースより数か月遅れだ。Foresightが従来掲げてきた看板を考えると、このディストリビューションを隅々まで味わいたいなら、いずれかのGNOME版がよいだろう。XfceやKDEは、Foresightが動き出してからでもインストールすることができる。
インストール
Foresightのインストーラーは改訂版Anacondaだ。言語、キーボード、パーティション分割、ブートローダー、タイム・ゾーン設定、ユーザーの作成は、すべて、Fedoraなどのディストリビューションとほぼ同じ。ただし、ダイアログ・ウィンドウは作り直されている。通常と異なるのは、カスタム・パーティショニング・ダイアログにあるジャーナル付きファイル・システムがXFSだけであることと、ブートローダーとしてGRUBのほかにExtLinuxが提供されていること。また、経験者ならパッケージを選択する場面がないことを残念に思うかもしれない。
DVD版を最新のコンピューターにインストールする場合、所要時間は約10~12分。CD版でも、これより数分長くかかる程度だ。しかし、どちらの場合も、インストール・プログラムがインストール完了を表示してから最終画面に進めるようになるまで少々時間がかかる。そのためプロセスが止まったか飛んでしまったのではと心配になるほどだ(筆者はそう思った)。しかし、5分待てばインストールは正常に完了する。
デフォルト・インストールの場合、ブート・パーティションとして196MB、スワップ・パーティションとして2GBが確保され、残りはrootパーティションになる。インストールの総量は3.6GB。現代の標準ではかなり小振りだ。パッケージの選択がないのはそのためかもしれない。
デスクトップとソフトウェアの選択
テーマカラー「緑」の徹底といい、GentiumやLiberationなど主要なフリー・フォントだけでなくMicrosoftコア・フォントがインストールされることといい、Foresightの作成には相当な配慮がなされていると想像される。デフォルトのソフトウェアは最新版で、カーネルは2.6.25、GNOMEは2.22.3、Firefoxは3.0、OpenOffice.orgは2.4。いまだ珍しさが残るPulseAudioも同梱されており、サウンドに利用することができる。
アプリケーションの中には、GNOME向けのものではなく一般に広く使われているものが採用されている例が若干ある。たとえば、GNOMEのデフォルト・ブラウザーはEpiphanyだがFirefoxが採用されている。しかし、それを除くとGNOMEアプリケーションが偏重されている。これには、BansheeやTomboyなど、Monoで書かれたものも含まれる。実際、この偏重ぶりは相当なもので、Pidgin、F-Spot、Glipperなどそれぞれの分野で人気が最高というわけではないものや、あまり知られていないものも含まれているほどだ。その一方、最新のマイナー・アップグレードが数週間ほど前にリリースされていても、リポジトリーにあるKDEは最新の4.1ではなく3.59のままだ。
ほかのディストリビューションでは種々のアプリケーションを搭載しているか、あるいはデスクトップ環境に依存しないアプリケーションを選択している例が多いから、ForesightのGNOMEへの傾倒ぶりは少々異例だ。Foresightの場合、所要の処理ができるアプリケーションはあるだろうが、欲しいアプリケーションがあるとは限らない。
Foresightのインストールを設定する際は、デフォルト・インストールではフリーのドライバーだけが使われる点にも注意が必要だ。プロプライエタリーのドライバーがすでにインストールされていても、あるいはPackageKitで見つかるはずの場合もフリーのドライバーだけが使われるのだ。もっとも、プロプライエタリー・ドライバーが必要な場合には、オンライン・ヘルプが詳細かつ明快に案内してくれるが。なお、PackageKitはパッケージ・システムによらないグラフィカル・インタフェースで、Foresightの場合はConaryにアクセスする。
欠点として、ForesightのデフォルトGNOMEデスクトップは動きが妙に鈍いことを指摘しておこう。
ソフトウェアのインストールとセキュリティー
Foresightの大きな特徴の一つは、Conaryパッケージ管理システムを採用していることだ。Conaryは依存性を解決でき、ソースからビルドすることもできる。その上、同じプログラムの2つのバージョンをインストールすることができるバージョン・コントロール機能も備えている。
とは言え、デスクトップではConaryを忘れていてもほとんど支障はない。アップデーターがあるし、新しいアプリケーションはPackageKitで追加できるからだ。ただし、PackageKitは今開発の真っ最中にあるため、一度に複数のパッケージをインストールすることができない。このため、KDEサポートの追加などではConaryを使う必要がある。
Conaryのコマンド体系はapt-getやyumと似ており、覚えるのは簡単だ。たとえば、パッケージのインストールやアップデートの基本コマンドは「conary update packagename
」。システム上のすべてのパッケージをアップデートするなら「conary updateall
」、逆にパッケージを削除するなら「conary erase packagename
」だ。conary-builderパッケージをインストールしておけば、「conary emerge packagename
」でソースからビルドすることもできる。そのほかの機能は「conary help
」を見てほしい。速度もそこそこで、yumより速くapt-getより遅い。
Foresightでインストール可能なソフトウェアには制約があるが、それは主としてリポジトリーの大きさによるものだ。Foresightは今もGNOMEを主としているので、KDEやデスクトップ独立のアプリケーションの多く、たとえばDigikam、Krusader、Bluefish、Pysolなどは使えない。とりわけ、デスクトップ環境の種類よりも機能でアプリケーションを選んでいる場合はForesightで使えるものが少ないと感じるだろう。
Foresightのセキュリティーは、大概のディストリビューションよりは若干よい。Ubuntuのように、sudoを利用してrootアカウントへのアクセスを制限している。また、デフォルトで起動するサービスについてもきわめて慎重で、外部ドライブを自動的にマウントするAutofsはデフォルトでオフになっている。Anacronとatdスケジューラーも同様。特定の時刻に特定のスクリプトを実行したい場合のためにcrondだけが起動される。スタンドアロンのワークステーションの場合、ブート時に起動したいデーモンがあれば、System→Administration→Servicesで設定することになる。
3分の2
どのような基準で見ても、Foresight Linuxは仕立てのよい、まったく現代的なディストリビューションだ。GNOMEはここ数年の間に使い勝手とカスタム化で着実に改善を重ねてきたが、その恩恵をフルに活用しているし、Conaryパッケージ・システムを採用しているディストリビューションとしても優れた例になっている。Conaryは、DebianやRPMのシステムで取り入れてもよさそうなアイディアと構造を備えている。
しかし、使い方が日常の範囲を超えると、主要ディストリビューションの多くに比べ使い勝手で劣る点が出てくる。Conaryでは最初となるグラフィカル・インタフェースPackageKitが同時に複数のパッケージをインストールすることができないのは大きな障害だ。特に、コマンド・ラインに戻りたくないデスクトップ利用者にとっては深刻だ。また、パッケージ選択の幅が比較的狭く、ほかのディストリビューションを使ったことがありほとんどのソフトウェア・カテゴリーでパッケージを選ぶことに慣れている人には制約と感じられるかもしれない。
こうした問題点はいずれ解決されるだろう。PackageKitは、今、急速に開発が進んでいるし、ソフトウェアの多様化についても、開発者たちに時間的余裕が生まれConaryパッケージを増やすにつれて改善されるだろう。しかし、今のForesightは、3枚看板のうちの2枚――ConaryとGNOME――だけが看板どおりであり、3枚めの使い勝手は看板倒れだ。3分の2は悪い数字ではないが、改善の余地があることも確かである。
Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comの常連。