Pardus 2008:洗練の香り

 Pardusは、トルコのScientific and Technological Research Councilが資金を出して開発しているGNU/Linuxディストリビューションである。独自のインストーラ、パッケージマネージャ、設定ウィザード、コントロールパネルを持ち、開発者の独自性と細かな目配りにより、一見の価値あるソフトウェアに仕上がっている。

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Pardusのデスクトップ

 初めて使ってみたときから、筆者はPardusの細部へのこだわりに好感を持った。インストーラは信じられないほど簡単で、Microsoftファンでさえ粗探しをするのは難しかろう。インストーラ自体は7か月前に前回リリースをレビューしたときからあまり変わっておらず、説明は繰り返しになるので避けるが、実に使いやすいインストーラであることだけは言っておきたい。筆者からの苦言は1つだけ――Dvorakキーボード配列を使いたいのに、これがオプションになっていないことである。

 インストールとそれにつづくリブートがすむと、初期デスクトップ設定ウィザードKaptanが画面に現れ、背景イメージ、メニューの表示方向、ネットワークなどのオプションをセットアップできる。インストーラ同様、このウィザードも使いやすく、わかりやすい。

 Kaptanの終了後、筆者はTasmaを実行した。これはPardusの設定センタだ。レイアウトはおおむねユーザに優しく、直感的。システムオプションの変更をよく手助けしてくれる。筆者の気づいた範囲では、地域に”Canada”を選択すると、言語がフランス語に設定されるという問題があった。これはバグかもしれないし、Pardusチームのうっかりミスかもしれない(カナダ人の過半数は英語を第1母国語としている)。いずれにせよ小さな問題であり、簡単に修正できる。Tasmaでキーボード配列をDvorakに設定できたのもよかった。

 ディストリビューション開発者は、ときに法律的な理由から特定の機能を避けることがあるが、Pardusではそんなことはなかった。映画を観るのに必要なコーデックはすべて含まれていたし、Adobe FlashとJavaも含まれていた。多くのディストリビューションと異なり、Firefox用のFlashプラグインでは、特別な設定なしで音楽を聞けたし、なんとDVDさえも支障なく再生できた。こうしたマルチメディア機能は、システムに不可欠ではないかもしれないが、なければとても不便な思いをする。ただ、よいことずくめではなかった。筆者がFlash対応サイトを見ていると、Firefoxが何度かクラッシュした。Flashを無効にするとクラッシュもなくなったから、たぶん、Flashプラグインが原因だろう。

 Pardusに付随するデフォルトのパッケージだけでほとんどの用が足りる。たとえば、画像操作にはGIMPとKolourPaint、画像表示にはGwenview、デジカメ管理にはdigiKam、スキャナ管理にはKookaがあるし、オフィス事務のためにはOpenOffice.orgがある。その他の細々した機能は、各種KDEパッケージ(KontactKarmKalarmKnotes、Kpilot、その他)で十分に間に合うだろう。マルチメディア機能は、音楽プレーヤにAmarokJuK、映画鑑賞にMPlayerKaffeine、CDやDVDのリッピングと焼付けにK3bとKaudioCreator、録音にkrecordと、充実している。インターネットアプリケーションとしては、インスタントメッセージングにKopete、IRCにKonversation、WebブラウジングにFirefoxKonqueror、電子メールにKMail、KFTPGrabber、KTorrent、そしてUsenetニュースリーダのKNodeまである。ほとんどのアプリケーションは、Pardusの前回リリース以後に更新されており、いくつかは最新の安定バージョンになっている。

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Pardusのパッケージマネージャ

 ほとんどのユーザにはデフォルトのプログラム群で十分だが、ほかに何かが必要だという人もいるかもしれない。そんな人のために、PardusにはPiSiという独自のパッケージマネージャと、独自のパッケージリポジトリが用意されている。現在、インストールできるパッケージが1,200ほどもあると言うから、立派なものだ。もちろん、サイズではDebianリポジトリの足元にも及ばず(そのDebianリポジトリでさえまだ完全ではない)、筆者もいくつかのアプリケーションとライブラリがPiSiで見つからず(たとえば、Video4Linux Grab)、ソースからビルドしなければならなかった。Pardus自体には本格的な開発ツールが含まれていないが、これはPiSi経由でインストールできるから、アプリケーションをソースからビルドするのは簡単な作業である。パッケージ化され、PiSi経由で提供されるアプリケーションが多ければ、それに越したことはない。だが、現在のリソース水準から見て、そうしたパッケージ群を維持する労力が大きな負担となることもわかる。むしろ、すでにあれだけのパッケージが用意され、最新状態に保たれていることを褒めるべきかもしれない。今後、しだいにユーザ数が増えていけば、Pardusリポジトリも成長していくだろう。筆者のPardus経験からすれば、ユーザ数の増加にさほど時間はかからなそうだ。

 1つだけ、真に気になるバグがあった。それは、リブートのたびにKDEの仮想デスクトップの数が2に戻ることである。筆者はこの数を常に8に設定しておきたいのだが、リブートのたびに設定をやり直さなくてはならなかった。変更自体は簡単な作業だが、全体としてすばらしいディストリビューションであるだけに、余計に気になる。ほかにもいくつか問題が起こったが、カナダの言語がフランス語になるとか、FirefoxがFlashでクラッシュするというPardusチームの(たぶん)ミスなど、一時的な性格のものばかりだった。Pardusを使うことのメリット(インストールと設定が簡単、パッケージマネージャが単純かつ信頼できる、ハードウェア検出が正確、デフォルトでインストールされるアプリケーションに過不足がない)は、いくつかの小さなバグを補って余りある。

 Pardusを使用して、筆者は実によい印象を受けた。細部にまでよく目が行き届いているし(PardusカラーのAmarokスキン、など)、インストーラはエレガント、KaptanとPiSiは効率がよい。筆者の古いAMD Sempron 2800+(512MB RAM)でも、Pardusは高速で起動し、高速で動作した。類似の機能を持つ他ディストリビューション(たとえば、Ubuntu)ではそうはいかず、同じハードウェアなのに遅い。いま使っているディストリビューションに満足できないというLinuxユーザは、ぜひPardusを試してみてほしい。一見の価値があることを保証する。

Preston St. Pierreは情報システムを専攻する学生。カナダのブリティッシュコロンビアにあるUniversity of the Fraser Valleyに在学中。

Linux.com 原文