デスクトップを録画するLinux用ツール

 Linux上で利用可能なスクリーンキャスト用アプリケーションは数多く存在する。そのようなアプリケーションを使えば自分のデスクトップ上で起こっていることすべてをビデオとして録画することができるので、ブログやチュートリアルで使用するためのデモを作成したり、プロジェクトの説明に静止画以上の効果を持たせたりするのにうってつけだ。

 利用可能なアプリケーションは数多くあり、各アプリケーションでは異なる組み合わせの機能/オプション/出力形式が提供されている。したがってアプリケーションを選ぶ際には、ビデオの解像度をどれほど調整したいのかやLinux以外のオペレーティングシステム上でもビデオを利用可能にしたいのかどうかなどを基準にして検討しよう。例えばFLACやOgg Theoraなどよく使用されているオープンソースの出力形式は、Linux上ではネイティブに動くがプロプライエタリなオペレーティングシステム上で利用するためには追加のソフトウェアやプラグインが必要になる。また各アプリケーション間でユーザインターフェースも大きく異なっていて、システムトレイ上の一アイコンに過ぎないアプリケーションもあれば、多数のオプションを持つ大規模なインターフェースを持つものもある。

 今回、人気のある3つのスクリーンキャスト用アプリケーションを試して日常的な使用に向いているものを検討してみた。特に評価の際に考慮した項目は、ユーザインターフェース、出力形式の品質と種類、必要な依存関係の入手も含めたインストールのしやすさについてだ。各プログラムは、4GBのRAMを搭載したデュアルブート設定のMacBook Intel Core 2 Duo上のUbuntu 8.04 Hardy Heronで試した。

Istanbul

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システムトレイ上のアイコンで操作するIstanbul

 Istanbulはシンプルなデスクトップレコーダで、システムトレイ上に表示される。アイコンをクリックすれば録画セッションが開始して、もう一度クリックすればセッションが終了する。ビデオのエンコードはOgg Theora形式で行われる。録画は全画面、選択したウィンドウ、デスクトップのどこか一部分をそれぞれ対象とすることができる。また音声付きの録画も音声なしの録画も可能だ。

 ユーザインターフェースは複雑ではなくて使いやすい。ただしいくつかの難点もあって、解像度についてはある程度調整可能なのだが、ビデオファイルの出力形式を変更することができない。このことは、ビデオをFlashベースのビデオサイトにアップロードする場合などには大して問題にはならないものの、主なプロプライエタリのオペレーティングシステム上ではそのままではOgg Theora形式を利用することができないので、VLCメディアプレイヤなどのアプリケーションを利用する必要がある。そのため対象としているビデオの利用者からの要望があれば別形式に変換する必要があるだろう。

 インストールは簡単で、ほとんどのディストリビューションのリポジトリに含まれている。UbuntuではSynaptic Package Managerを使ってインストールすることができた。なおPyGTKGStreamerという、よくある依存関係を満たす必要がある。

Wink

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スクリーンキャスト作成に特化したWink

 Winkはチュートリアルビデオの作成を目的としているアプリケーションで、複数のスクリーンショットをFlash形式でまとめたり、ビデオを直接編集してテキストボックスやナビゲーション用ボタンや静止画像を追加したりすることができる。また、プレローダ(再生開始前に表示される内容)やFlash再生用のコントロール・バーを作成することができるなど、先進的な機能が数多く含まれている。

 インターフェースはIstanbulほど必要最低限ではないものの、比較的簡単に使用できる。Winkの主な難点はビデオの出力形式だ。FlashとWindowsの.exeプログラムは、ファイルがローカルや個人のウェブサイト上にある場合には問題なくビデオを閲覧することができるが、ソーシャルネットワークサイトやビデオ共有サイトでは大抵の場合はFlashファイルや.exeファイルをアップロードすることができない。Winkは、例えば従業員とチュートリアルを共有したい企業などで使用するには優れている一方、自分のデスクトップをYouTubeで自慢したいホームユーザにとってはやや利便性が薄れる。

 Winkはほとんどのディストリビューションのリポジトリに含まれていて、どのパッケージ管理アプリケーションを使用してもインストールすることができる。ただし残念ながら本稿執筆時点ではUbuntu 8.04では一時的な対処策なしでは使うことができなかったので、今回は前バージョンのUbuntu上で試した。

XVidCap

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XVidCapのツールバー

 XVidCapを使えば、デスクトップのビデオ録画や一フレームだけのスクリーンショットの作成ができる。選択用の赤い四角を録画したい領域にドラッグすることで、画面の一部分を録画する。出力形式としては、MPEG/AVI/Flash/QuickTimeなど幅広い形式を扱うことができる。

 インターフェースは小さなツールバーで、詳細なオプションはPreferences(設定)パネルの中にしまい込まれている。ビデオや連続画像の撮影にはFFmpegライブラリを使用していて、音声を埋め込むことも可能だ。なお広い領域を録画しようとするとコンピュータの速度が劇的に落ちるというユーザの声もあったのだが、今回テストしたマシンではそのような問題は体験しなかった。しかしこれは4GBのRAMを搭載していたからかもしれない。

 XVidCapはたいていのディストリビューションのリポジトリに含まれているので、インストールは簡単だ。依存関係についてはlibavcodec(ビデオ用FFmpegコーデックのライブラリ)と、グラフィカルインターフェースを表示するためのCairo、Glade Interface Designer、GTK+ というありきたりの依存関係を満たしている必要がある。

まとめ

 デスクトップを録画してスクリーンキャストを作成するためのツールを3つ試してみたところ、もっとも汎用的で実用的だったのはXVidCapだった。Istanbulは僅差の2位だが、サポートしている出力形式の数が少ないという難点がある。Winkは優れたアプリケーションだが、特定の目的についての有用性は高いものの自分のデスクトップを録画したいだけのユーザには向いていない。XVidCapはよく使われているビデオ形式を数多く扱えるため、WindowsでもMac OS Xでも問題なく利用可能なビデオを作成することができる。特定のウィンドウを録画する簡単な方法が、やや使いにくい選択用の赤い四角を使う以外にないという難点はあるものの、やりたいことを効率良く実現できる。

Kurt Edelbrockは技術記者/ブロガー/大学生。オープンソース関連の様々な出版物に執筆しつつ、大規模な公立大学の技術コンサルタントも務めている。

Linux.com 原文