違った味わいのディストリビューション SymphonyOne

 数年に及ぶ開発を経て、SymphonyOSは、今月、初の安定バージョンとなるSymphonyOne 2008.1をリリースした。SymphonyOSが初めて登場したのは3年前。そこに搭載されていたLinuxデスクトップは、従来のどのデスクトップとも異なっていた。それまでのLinuxデスクトップは(その「デスクトップ」という名に関わらず)要するに一種のシステム・フォルダーだった。これに対して、SymphonyOSのMezzoデスクトップ環境は現実のデスクにさらに似せて作られており、利用者に理解しやすいものとなっていたのだ。今回のリリースでは安定度が大きく向上し、KDE、GNOME、Fluxboxと並ぶデスクトップ環境になった。

 SymphonyOSは当初Knoppixをベースにしていたが、のちにDebian上での構築に切り替え、2008.1ではUbuntu 7.10がベースになっている。また、Jason Spisakが製作するMezzoはFVWM 2.5.21の上に構築されている。Ubuntu同様、このディストリビューションはLinux 2.6.22-14、Xorg 7.2、GCC 4.1.3を基盤としている。

デスクトップ

 Mezzoのメニュー・システムは、開発者たちが当初のリリースで考えていたものより少し従来型に近づいた。しかし、すべての操作が画面の最下段に置かれた1つのメニュー・ボタンから始まるのではなく、通常は使われていない部分を含む画面の四隅に操作ボタンを配置している点は変わらない。以前のリリースでは、四隅にあるボタンのいずれかをクリックするとメニューまたはタスク一覧がデスクトップ上のそれぞれ意味のある位置に透明な背景と共に開いたが、今回のリリースでは通常のメニューが現れる。

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SymphonyOS Tools

 右上の隅をクリックするとロケーションつまり場所のメニューが開き、System Drive、CD-ROM、Hard Drive、My Files、Documents、Downloadsなど、システムのさまざまな領域へのリンクが現れる。ただし、取り外し可能なメディアの項目をクリックしても自動的にはマウントされない。新たにセットしたCDはなぜか取り出すまで回転し続けるようだが、マウントされることはない。もちろん、CDやUSBキーをコマンド・ラインから自分でマウントすることはできる。

 左上のコーナーはシステム構成メニューで、Install/Remove Programs、Display、Network、Change Wallpaperなどの項目が並ぶ。そのほとんどはUbuntuのものと同じなので、お馴染みだろう。Install/Remove Programsは簡易なパッケージ管理アプリケーションだが、Synapticも含まれており、コマンドラインから起動することができる。新たにインストールしたアプリケーションは、デスクトップの再起動後にアプリケーション・メニューに現れる。試用では、デフォルトの壁紙など、画面の解像度よりも小さい背景にすると問題が発生した。拡大せずに、折り返されるのだ。幸い、SymphonyOneには、ほかにも素晴らしい背景がいくつか用意されている。

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SymphonyOS Apps

 左下のコーナーはアプリケーション・メニューで、VLC、Pidgin、Firefox、Terminal、Text Editor(gedit)などが用意されている。メディア・プレーヤーのVLCは音楽CDのほか、.bin、.avi、.mp3、.oggなど、さまざまな拡張子を持ったビデオも再生できたが、暗号化されたDVDを見ることはできなかった。SymphonyOneに付属しているアプリケーションはあまり多くないが、UbuntuのリポジトリーからInstall/Remove Programs、APT、Synapticでダウンロードすることができる。

 最後の右下のコーナーには電源ボタンがあり、Log Out、Reboot、Shut Downが選択可能。

 デスクトップには大きなアナログ時計ウィジェットが置かれている。移動や構成ができるほか、非表示にすることもできる。また、画面の上部中央には日付と時間が表示されている。ウィンドウを最小化すると従来のようにタスクバーに入るのではなく画面の最下段にサムネールとして並ぶが、この機能は気が利いている。

ハードウェア・サポート

 SymphonyOneはインストール可能なライブCDとして配布されている。使われているインストーラーはUbuntuと同じものだから使い方に困ることはないだろう。ウィザードが構成まで案内してくれる。試用ではインストールは問題なく完了したが、noapicをブート・オプションに追加しないとXが真っ黒な画面のまま止まってしまった。この点を除いて、試用に使ったHewlett-Packard dv6000ノートパソコンに装備されている基本的なハードウェアのほとんどは問題なく動作した。前述の通りにブート・オプションを変更すると、SymphonyOneは1280×800という最適な解像度で起動した。タッチパッドは正確かつ俊敏に動作し、USBマウスも問題なし。有線のネットワーク・ポートも起動時点で使用可能になっていた。サウンドも何も手を加える必要はなかった。グラフィカル・ミキサーはないが、ターミナルから使うalsamixerは同梱されている。

 しかし、ノートパソコン固有の特性についてはサポートはあまり良くない。CPUの速度調整はそのままで機能し有効になっていたが、バッテリー・モニターがなく、サスペンドやハイバネーションオプションも使えなかった。

 ノートパソコンに搭載されている無線機能のサポートは不安定で、改善はできなかった。チップセットはLinuxではネイティブ・サポートされていないものだが、通常、NDISwrapperやfwcutterなどのツールを利用すれば使用できる。しかし、私の経験によるとUbuntu系ではいつもそうした幸運に巡り会えるわけではないので、SymphonyOneでの試みは少々冒険だった。Ubuntuのコンポーネントの一つRestricted-managerはfwcutterを使って搭載されているチップセット用のプロプライエタリー・ドライバーをインストールするツールだが、私の経験では役立つことは滅多にない。SymphonyOneでも動いたが、案の定、役には立たなかった。そこで、NDISwrapperでWindowsドライバーをインポートし、ネゴシエーションにはwpa_supplicantを使ってみた。だが、接続はできるものの、使い続けていないと数分で切れてしまう。これ以上の改善はできなかった。

まとめ

 SymphonyOneは安定していて安心して使える。インストールも、Ubuntuのインストーラーを使うことで手順が簡易になり、ほぼ確実に成功する。その上、Synapticが同梱されておりUbuntuリポジトリーが使えるので、アプリケーションの追加も思いのままだ。システム・ツールも使いやすい。Mezzoデスクトップと、基礎となっているUbuntuのお陰で、一部お馴染みのところはあるが、ほかのディストリビューションにはない使い心地を実現している。その機能と速度は、SymphonyOneチームの素晴らしい仕事の結果だ。

 私はMezzoデスクトップの概念は良いと思う。しかし、実際に使ってみると、開発者たちの意図とは逆結果になっている部分がある。私の場合、通常、複数のアプリケーションを開き、ウィンドウを並べる。また、画面の下端の小さなパネルにメニュー(ボタン)、タスクバー、時計、システム・トレイを収めて、デスクトップの全域を使ってウィンドウを置こうと考える。デスクトップの要素を上端や両脇(こ場合はコーナー)に置きたくはないのだ。しかし、もちろん、それは個人的な好みの問題だ。それに、利用者のSymphonyOneに対する満足度は、詰まるところ、使う人の好みによるだろう。

 今回のリリースは、モバイル・コンピューター向けの高度な機能を使わないなら、日々の作業に使えるほど安定している。今までとは違う使い心地を味わってみたい人には、SymphonyOneはお勧めだ。

Linux.com 原文