フリーとサポートとの狭間でオープンソースOSへの対応を進めるデル
フリーOSへの要望が強くなってきた
--企業活動としてフリーOSの対応を進めたのにはどのような背景があるでしょうか?
南部:私たちのお客様には、OSなしでサーバ(NonOSモデル)をご購入される方がけっこういらっしゃるという状況がございました。このような場合、サーバを販売する側としましては、お客様のハードウェアの構成は見えても、その中身に何のOSやアプリケーションをご利用されているのかを把握するには非常に難しいものがございます。マーケティング的な意味合いもあったのですが、このようなケースのお客様からできるだけヒアリングをさせていただいた結果、無償で利用できるフリーのオープンソースOSをお使いになられるお客様がけっこう多いということがわかりました。中には、お客様のほうから「このフリーOSを使いたい」というご要望も寄せられてくることもあり、ご指定のOSが動くかどうかが、ハードウェアを選択するうえで重要であるというケースもございました。現在、デルで認定しているオープンソースのOSは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)とNovell SUSE Linux Enterprise Server(SLES)の2種類ございますが、どちらも商用(有償)OSになります。またサポートという観点ですと国内ではRHELのみというのが現状です。
そこで、このようなサポート外のフリーOSについても、できる限り動作確認を行っていこうということになり、Linuxを以前から扱っていた私が担当になって、パートナー様などのご協力を得ながら、検証を行ってきました。サポート外のOSでも、RHEL、SLESに近いOSであれば大概は普通に動くのですが、中にはすんなり使えないケースもございました。そのような場合、こうすれば使えますよという対処方法、われわれはワークアラウンドと呼んでいるのですが、これを動作検証の結果と併せてお客様にご案内しております。
--いつごろからフリーOSへの対応を始められたのでしょうか?
南部:以前からも、個別には私どもだけでフリーOSの導入を支援することはあったのですが、広く行っていくことを決めたのは昨年の始めごろからです。デルのサーバ上でフリーのOSをご利用されるお客様が増えてきている状況をインテル様にご相談し、上位のオープンソースのミドルウェアやアプリケーションについても技術情報や検証実績を公開していこうということでNRI様にもご協力をいただきました。そして、3社共同でOSS全般の検証ができる施設としてOSS検証センターを立ち上げて活動していくことなりました。それが昨年の7月の発表です(デルのプレスリリース、Open Tech Pressの記事)。
矢嶋:デル様の特徴として、シンプルで、しがらみの少ないプラットフォームを持っている点と、いち早く最新の技術を採用し投入していただいている点があります。インテルとしては、そういった製品を検証することによって、その情報をいろいろなところで使っていただけます。たとえばオープンソースのユーザーなら最新のテクノロジを使っていただきやすいと思います。インテルでは、以前から発表前製品などの検証に使っていたセンターがありましたので、その場所やリソースを提供しています(検証センターへの問い合わせ・申し込み方法)。
検証センターは幅広いユーザーに利用され、情報が増えつつある
--検証センターでは具体的にどのようなことがなされているのでしょうか?
矢嶋:お客様によって異なってきますが、だいたい1週間、5営業日を一区切りとして、センターでセットアップした環境にアプリケーションを持ち込み、パフォーマンス検証や動作検証を行っています。センターではOSの導入まで手助けしています。
南部:検証機材は、可能な限りその都度ご用意しております。一般的にクラスタ構成を試したいというケースが多いため、サーバ以外にもストレージ装置も備えております。
--たとえば、新製品のR300なども?
南部:現在準備中ですが、新製品も随時ご用意していく予定です。
矢嶋:新製品ですと、業界先進の45nmプロセス技術によって低消費電力でよりパフォーマンスの引き出せる、クアッドコア インテルXeonプロセッサー5400番台の製品を搭載したプラットフォームも利用可能ですので、そのサーバで実際を検証していただいています。機材の更新もしていますので、新しい機材でテストいただけるようになっています。
--どういった方が利用されているのでしょうか?
矢嶋:ソフトウェアベンダー様やシステムインテグレーター様、そしてエンドのお客様まで幅広くご利用いただいています。
南部:機材のリソース調整は必要になってきますが、こちらに出向けない地方の方にも、環境をお貸し出しすることもございます。
--すでにいくつかの成果はあるのでしょうか?
矢嶋:OSのレイヤーの検証結果に関してはいくつか公開されていますが、だんだんと利用されるお客様が増えてきていますので、近いうちに、さらに成果が公開されていくと思います。お客様には、検証センターでの成果を広く共有できるようにお願いしています。
南部:デルのホームページ内には、OSS専用コーナー「Dell オープンソース・ソリューション」を立ち上げ、そこに検証情報やワークアラウンドなどを掲載しています。また、SourceForge.JP内の情報プロジェクト「Linuxサーバー情報室」にも協力しています。とはいえ、なかなか更新が追いつかない面もありまして、実際には掲載できていない情報もいろいろあったりします。そういったところは、直接弊社の営業などに問い合わせてもらえればご提供できると思います。
--実際に営業の方などを通じての問い合わせはあるのでしょうか?
南部:特に新しいサーバ製品が出荷されると多いですね。たとえば、フリーOSで一番ネックになってくるのが、古いバージョンのOSで動いている環境を、そのまま新しいハードウェアで動かしたいというご要望です。商用OSですと新しいハードウェアに対応したドライバやアップデートパッチが提供されていたりしますが、フリーOSでなかなかそうはいきません。私たちとしましては、できる限りお客様のご要望に沿ってご利用していただきたいという思いもありますので、ある程度は私どもでご対応させていただき、情報のご提供だけではなく、場合によってはバックポートを行ったドライバなどをご提供することもございます。
矢嶋:それ以上のトータルなサポートが必要であれば、有償サービスにはなりますが、検証センターで協業している、野村総合研究所様などからのサポートもひとつの選択肢になると考えています。以前に比べると、検証情報を公開してから、フリーOSを検証してくださいという要望は減ってきていますね。
OSSセミナーを四半期に1度開催中
--検証センター以外にはどのような活動を行っているでしょうか?
南部:すでに5回行っていますが、インテル様、NRI様に加え、OSS Tech様と共同で、オープンソースに関連したセミナーを開催しています。内容としては、デルからは先ほど挙げたようなオープンソースへの取り組みのほか、LinuxだけではなくFreeBSDや、インテル版のSolarisも検証していることをご紹介しております。
また、フリーOSは、サーバ台数が多い環境でご利用されるケースが多いため、これらのフリーOSのサーバー郡をどうやって管理するの? という話がでてきます。弊社ではハードウェア層のマネージメントツールとして無償利用でき、GUIでも操作できる「OpenManage」というものがございます。一般的には、このようなハードウェア層の管理・監視ツールは、各ハードベンダー認定のOSでしか動作できないのですが、このツールは、一部のフリーOSでも動作させることが可能であるため、セミナーの中で合わせてご紹介しております。OSの機能だけでは監視できない物理ディスクの状態やサーバ内部の温度、消費電力といった各ハードウェアのコンポーネント状態も知ることができ、複数台のサーバの管理も無償でできるのがこのツールの特徴です。
さらに実際の運用ではリモート操作がつきものです。弊社ですとサーバに搭載するリモート制御用のハードウェア「Dell Remote Access Controller(通称 DRAC)」があるのですが、このツールは、たいていのフリーOSの環境でも動作いたしますので、このDRACの機能についてもご紹介しております。カーネルパニックしたサーバの電源操作(リモート復旧)はもちろん、シリアルオーバLANやTelnet、SSHだけではできないXウィンドウシステム上での操作(GUIのコンソールリダイレクション)、仮想メディアという機能を使ったOSインストールなど、目の前にサーバがあるものと同等なオペレーションがこのDRACをご利用することでリモートから可能になります。
先ほど矢嶋様がおっしゃったように、デルはしがらみの少ないプラットフォームをご提供しておりますので、インテルアーキテクチャ(IA)対応のOSであればたいていはデルのハードウェア上で動作させることが可能だと思います。また、動作させるためのワークアラウンドなどについてもインターネットで検索すると結構情報が入手できますので、フリーOS環境でも弊社のサーバをご活用していただければと思っております。
矢嶋:インテルからは、今後のサーバーのプランニングをしていただくために、サーバーのプラットフォームとアーキテクチャのロードマップや投入される技術を解説します。また、ソフトウェア面での活動では、インテルのソフトウェア開発者向けのツールの利用方法や、アナライザを使うことによってアプリケーションのボトルネックを探す手法など、検証センターの利用も含めて紹介しています。いまはマルチコア化が進んできていますので、マルチコア化に向けたソリューション開発に注目です。例としては、C++のテンプレート、スレッディング・ビルディング・ブロックという製品があるのですが、インテルはこれをオープンソース化しました(Threading Building Blocks.org)。これを活用することによって、マルチスレッド化したアプリケーションをスムースに開発する手法などのお話をしています。また、今年の後半には次世代アーキテクチャの製品が登場してくる予定ですので、そのころは新しいアーキテクチャや技術の解説をしていくことになると思います。
--今後のセミナー予定はどのようになっているでしょうか?
南部:セミナーは今後も続けていきます。四半期に一度は実施したいと考えており、次は5月に入ってからになると思います。
矢嶋:セミナー内容は対象となる参加者や時期などを考えながら進んでいる状況です。活動の進み具合や技術トピックによりますが、技術解説セミナーにしたり、もしくはこじんまりとミーティングのような形で突っ込んだ話をする回を実施することも検討しています。前回はオープンソースを検討されているビジネスに近い人向けに、オープンソースはどういったものか、どういったところで使われているかなどを紹介しました。逆に前々回はアーキテクチャの詳細であったり、こんなことができるといった、すでにオープンソースを使われている方向けに実施しました。また、海外での消費電力対策などの活動も紹介していこうと思っています。R300など、以前のプロセス技術と比較して、より低消費電力で高性能な、45nmプロセス技術を使ったプロセッサーを搭載した製品がでてきましたので、そういったものの効果なども解説したいと思っています。
--本日はありがとうございました。
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