もっと参加しやすいコミュニティーに Fedoraの新議長が語る

 「コミュニティーにとって障壁となるものを取り除きたい」。新任のFedora議長Paul W. Frieldsはこのように抱負を述べた。数週間前に就任したばかりで職場環境や職員の理解に努めている最中だが、このビジョンはすでに発言の端々に折り込まれ、在任中に実現したいFedoraプロジェクトの目標について述べたあらゆる発言の基礎になっている。

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Paul W. Frields

 Frieldsは、同プロジェクトの前議長Max SpevackがFedoraの別の活動に専念するため議長を辞したのを受けて第2代議長に就任した。Fedora Project Leaderも兼任することになる議長はFedoraディストリビューションを後援するRed Hatが同社従業員の中から指名するが、Frieldsによると、選考の過程には「Fedora Boardも関わって」おり、フリー・オープンソース(FOSS)の精神を理解しない者や独断専行的な者がFedora Boardまたはコミュニティのいずれかに支持されることはまずあり得ないと言う。

 かく言うFrieldsは、さまざまな点でFedora議長にふさわしい人物だ。8歳からコンピュータを趣味とし、長年、科学技術や法廷での仕事にFedoraとその前身であるRed Hat Linuxを使ってきた。2003年11月にはその「恩返し」ができるだろうと、2か月前に発足したばかりのFedoraプロジェクトに参加。以来、パッケージ管理、解説書、リリース・ノート、アート作品、マーケティングの各部門で精力的に活動し、Fedora大使としてもFOSS全般、特にFedoraをフレデリックスバーグ(バージニア州)に普及させるべく活動してきた。2006年からはFedora Boardの委員となり、Fedoraプロジェクトを隅から隅まで知悉している。

 そのFrieldsの印象では、Fedoraはこの数年で自立を達成できたと言う。「Fedoraが2004年に始まったとき、多くの人はRed Hat Linuxの後継であり同じ道を歩むだろう、Red Hatの意向に従って動くのだろうと見ていた。しかし、このディストリビューションが今では、真実、協力関係に基づいて運営されていることは明白だ」。Frieldsはその功労者としてSpevackの名を挙げる。CoreリポジトリとExtraリポジトリの統合を指揮し、これによりRed Hatの従業員が管理するパッケージとコミュニティのボランティアが管理するパッケージの区別がなくなった。また、Fedoraのコミュニティ・カンファレンスであるFUDConをリリースを追うごとに発展させてもきた。

 実際、Fedoraの自立は明らかで、現行リリースFedora 8はRed Hat従業員から「コミュニティ・ディストリビューション」として認識されているほどだ。「これは、ディストリビューションの周囲にコミュニティが育ち、本当に花開いているということの、彼らなりの思いやりある表現だ」

全速前進

 Fedoraがコミュニティとして自立した今、「その精神を前進させ、コミュニティがFedoraの全責任を負うことで可能性を確実に押し広げていくこと」が自分の基本的な任務だとFrieldsは言う。

 FrieldsがFedoraプロジェクトのさまざまな部門を経験していることを考えれば、目標の一つが「参加障壁を低くすること」だとしても驚くには当たるまい。とりわけ非プログラマーが感ずる障壁をなくしたいと言う。「コミュニティを成長させ、開発者を増やしたい」。Frieldsはプログラマー以外の参加はほとんどのFOSSプロジェクトにとっての課題だと見ており、「Fedoraがその先駆けとなるようにしたい」と言う。

 Frieldsの見立てでは、問題は、コミュニティのメンバーになる手順がプロジェクトのwikiに十分説明されていないことではなく、参加の際に自分で行わなければならない技術的な手続きが多すぎることだ。この手続きを自動化し、技術に詳しくない人でも容易に参加できるようにしたいと言う。

 「世界のどこで開かれているカンファレンスでも、Fedoraブースに気軽に立ち寄れるようでなければならない。インターネットを使って、Fedoraプロジェクトに参加し、自分用のwikiやメール・アドレスやWebページなど、オンラインで活動する際に通常必要となるものをすべて入手できるようにする。煩わしいコマンドラインの実行はなくし、参加しやすくしたい」

 また、次のようにも述べた。「公式のメンターシップ・プログラムが必要という声が高まっている」。しかし、成功には経験豊かなメンバーが中核にいる必要があるが、FedoraプロジェクトにはそれがないとFrieldsは懸念している。結論はまだ出していないが、この種のプログラムは延期する方向にあるようだ。

 在任中に実現したいことはもう一つある。それは「グローバルなFedora」の実現だ。今でもFedoraには世界中の人々が参加しているが、「今は、全体に北米中心の傾向」があり、とりわけ欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋の参加を増やしたいのだと言う。いずれも、Fedoraの利用者が多い地域だ。

 Frieldsは、言葉の違いが障害になっているのであれば、ローカライズを容易にするWebシステムTransifexが答えになるだろうが、言語は大きな問題ではないだろうと述べ、Fedoraには今でも英語を母語としない参加者が多くいて活発に参加しているが困難な点はほとんどはないと指摘した。

 むしろ、すでにFedoraが普及している地域でFedora Ambassadorsプログラムの展開に力を入れたいと言う。「こうして話をしている今も詳細を詰めているところで、今年中に大々的に始める。その大部分は個人や企業がFedoraでできることを伝えるというわかりやすいものだ」

「消火ホースで水を飲む」

 Frieldsは、まだ就任まもないことを強調し、ほかにもやるべきことがあるだろうと述べた。

 「Red Hatのような企業に入ると言えば、それは消火ホースで水を飲むようなものだと多くの人に言われるだろう。私の場合は確かにそうだった。そして、いつだってそれを楽しんできた」

 これまでところ、就任して一番驚いたのは「誰もがオープンソースに深い思い入れがあることだ。経営陣も例外ではなく、Red Hatの文化の一部になっている。前にも言ったことがあるが、そうした思い入れが実際に機能し、すべての意思決定を特徴付けているのをこの目で見ようとは思っていなかった。その上、倫理的に行動しようと努めているのだ。企業のトップがそうした姿勢でいれば、それはおのずと社内のすべての人に広がっていくものだと思う」

 こうした姿勢を保てれば「Red Hatはこの先数十年間に非常に多くのことを成し遂げるだろうし、それはFedoraにとっても決して害にはなるまい。我々の立ち位置は今コミュニティにあり、これからもずっとそうだ。それはリソースを提供している特定の企業にどうにかできるものではなく、コミュニティが一緒になってこそ可能になるものだ。だが、我々のコミュニティにRed Hatのようなパートナーがいれば、我々の地平ははるかに広いものになる」

Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comとIT Manager’s Journalに多く寄稿している。

Linux.com 原文