小さくても充実しているZenwalk 5.0
Zenwalkは、完成度が高く評価も高いSlackware Linuxをベースにしている。含めるアプリケーションの数を抑えるための「1つの作業には1つのアプリケーション」というZenwalkのアプローチは特に好評だ。またできる限りXfceデスクトップなどの低資源のアプリケーションを選択するようにしているため、古いハードウェア上でも問題なく動く。
Zenwalk 5.0はカーネルに最近の安定リリースである2.6.23.12を使用している。またリリースアナウンスによると5.0リリースで初めて、freedesktop.orgのHAL(Hardware Abstraction Layer)を採用したとのことだ。ソフトウェアについてその他には、XウィンドウシステムX.Orgの最新版X.Org 7.3、Iceweaselウェブブラウザ、Icedove電子メールクライアント、Pidgin IMクライアント、AbiWordワードプロセッサ、Gnumericスプレッドシート、GIMP画像操作プログラム、GMPlayerメディアプレイヤ、streamtunerインターネットストリームブラウザなどがバンドルされ、すべてXfce 4.4.2のメニューから利用可能になっている。ウィンドウマネージャは最近のリリースで次第に洗練されたものになってきており、Zenwalkディストリビューション全体にプロフェッショナルな印象を与えている。
ZenwalkではSlackwareとよく似たテキストベースのインストールを行う。ただしパッケージの選択はなく、単にパーティションを指定してインストールするだけだ。さらにインストールが簡単になる自動インストールのオプションもあって、全ディスク領域を使ってZenwalkをインストールしても良い場合にはパーティション分割も任せることができる。今回1.3GHzのIBM製ノートPC上にインストールしてみたところ、約20分かかった。一方2.0GHzのCore 2 Duo E4400デスクトップ上でもまったく問題なく(飛ぶように)走り、1280×1024の17インチのLCDモニタ上でも非常にきれいに見えた。今回はZenwalkのブートローダはインストールしなかった(既存のGRUBの設定にZenwalkを追加した)のだが、Zenwalkは今もLILOブートローダを採用している数少ないディストリビューションの一つだ。
ただNum Lockキーについてはやや不安定だった。テンキーがないために一部のキーにテンキーのキーも割り当てているノートPCなどでは、パスワードを入力する前にNum Lockが無効になっていることを確認する必要があるだろう。私のノートPCではキー自体は無効になっているにも関わらずNum Lockのランプが常に点灯していた。なおそれ以外のランプは各々の状態を正しく示していた。
インストール後には、まずGPL(GNU一般公衆利用許諾契約書)バージョン2が表示されて、次にIntel PROワイヤレスファームウェアのライセンスが表示された。ノートPCでは古いLinksys PCMCIAワイヤレスアダプタを使用しているのだが、Zenwalkでは特に設定をしなくてもすぐに使用することができた。一方デスクトップマシンでは、LinuxでサポートされていないPCIワイヤレスカードとLinksys USBワイヤレスアダプタを使用しているのだが、ZenwalkにはNdiswrapperも含まれていたため、利用する際に大した手間は必要なく、単にプロプライエタリの .infドライバを指定するだけで使用することができるようになった。Zenwalk 5.0のワイヤレス関連の向上点としてはWicdネットワークマネージャもある。Zenwalkに含まれている他の部分と同様にWicdも軽量でシンプルなインターフェースでありながら、WEP/WPAキーを受け付けるだけでなく、ルータに接続/切断する際にスクリプトを実行することができる。
Zenwalkは、ワイヤレス関連のハードウェアを検出することはできたが、オンボードの、ワイヤレスでないEthernetアダプタを検出することはできなかった。そのため使用するには、カード用のモジュールを手動でロード(modprobe e100
)する必要があった。またNdiswrapper経由で使用しているワイヤレスカードについては、そのワイヤレスインターフェースをWicdのリストの中に表示させるために、Wicdの設定でWPA Supplicant DriverをNdiswrapperに変更する必要があった。
Zenwalkでは興味深いシステムツールが3つ提供されている。lshwはハードウェアの一覧を表示するツールで、マシン上のあらゆるハードウェアについての詳細な情報を提供する。grsyncはrsyncのGUIフロントエンドで、バックアップツールとして使用することができる。netpkgはパッケージマネージャで、Slackwareのpkgtoolとは違って依存関係の解決も行うので、ZenwalkとSlackwareを差別化する点の一つとなっている。Zenwalkのレポジトリのミラーには小型のディストリビューションにしては多種多様なソフトウェアが用意されていて、最新のopenoffice-2.3.1のようなオフィススイートからOpenArenaのようなゲームまでが揃っている。唯一の難点としては、新しいユーザでも見分けることのできるような分かりやすいカテゴリにアプリケーションのパッケージが分類されていない(「オフィス」、「ゲーム」、「ウィンドウマネージャ」などではなく、Slackware式のグループである「a」、「ap」、「extra/a」、「xap」などになっている)という点がある。そのため特定のアプリケーションを探している場合には、netpkgの検索バーを使用するのがもっとも簡単だろう。アプリケーションの大きさがKB単位で示されていることと、依存関係のリストで必要なものとインストール済みのものとが分けられていないということもあるが、これらの点はそれほど気にはならなかった。
USBデバイス(USBメモリ、カメラ、USB-PS/2変換器など)は、今回新しく採用されたHALシステムのおかげで、すべて問題なくマウントすることができた。NTFSフォーマットのUSBハードディスク(80GB)もあったのだが、 まったく問題なくファイルを書き込むことができた。またMP3、OGG、AVI、MPG、FLVの各ファイルの再生や、RARアーカイブの展開、PDFファイルの閲覧、DOC文書の編集もインストール直後からまったく問題なく行うことができた。ブラウザでは、Flashを必要とするウェブサイトを訪問した際に自動的にプラグインの取得/インストールが行われ、その後はまったく問題なくFlashビデオを再生することができた。ファイルとアプリケーションの対応も完璧に設定されていた。右クリックのコンテキストメニューからは、選択したファイルのアーカイブを作成したり、そのMD5sumを計算(これについては新たなウィンドウが表示される)したり、Braseroを使用してCD/DVDを作成したりすることができた。
Zenwalkではあらゆる種類のディスクやパーティションをマウントすることができるのだが、ローカルのハードディスク上のパーティションをマウントするためには、インストールの際にマウントポイントを手動で指定する必要があった。また、ローカルのNTFSパーティションは読み取りのみ可としてマウントされるので、書き込みもしたい場合には/etc/fstabを編集する必要があった。
Zenwalk 5.0は、CD 1枚に収まるディストリビューションにも関わらずかなり充実している。軽量/高速であるうえ、デスクトップユーザが日常的に必要とするアプリケーションがすべて揃っている。ただしコマンドラインの使用は避けたいというユーザにとっては、まだ最適なディストリビューションではないだろう。しかし私の場合は数年間Linuxを使用してきてコマンドラインにも慣れたので、所有しているすべてのマシンにZenwalk 5.0をインストールすることに決めた。