ビデオカメラのテープにファイルをバックアップ
DV方式のビデオテープにデータを保存することには、それなりの利点がある。60分用のビデオテープには、理論的ではなく実際的な値として、SPモードで約10GB(LPモードでは約15GB)の情報を約3MB/秒の転送速度で保存することができる。さらに言えば、ビデオテープに重要な情報が入っていると考える人はあまりいないため、DV方式のビデオテープにファイルを移すことは機密情報を隠しておくのに良い方法でもある。
ファイルをテープにコピーしたり、逆にコンピュータに戻したりするためには、2つのアプリケーションが必要だ。一つはFireWire経由でのビデオカメラ/コンピュータ間のインターフェースの役割を果たす「dvconnect」で、libdvに含まれている。もう一つは実際の作業を行なう「dvbackup」だ。なおdvbackupのホームページ(またはマニュアルページ)に、バックアップの基本的な手順の説明がある。
それではまず、FireWireとビデオカメラを扱うために必要なモジュールがすべてロードされているかを確認しよう。私の場合はUbuntu Studioをインストールしたのだが、当初、コマンドラインで「dvgrab -i
」を実行してカメラを直接的に操作してビデオを撮ることができるのにも関わらず、dvconnectとdvbackupを使おうとするとデバイスエラーが出るのでやや途方に暮れてしまった。しかしlsmod
を実行してみると「video1394」というモジュールが自動的に読み込まれていないことが分かったので、このモジュールを読み込ませると問題は解決した。
必要なものが揃ったことを確かめたら、バックアップの準備ができた。ビデオカメラの中にテープを入れて巻き戻して、カメラがちゃんとコンピュータに接続されていてオペレーティングシステムがカメラを認識していることを確認したら、カメラの録画ボタンを押そう。次にコンピュータのコマンドラインから、コピーしたいファイルがあるディレクトリに移動して以下のようなコマンドを実行する。
find . | cpio -o -H crc | dvbackup --prefix=125 | dvconnect -s -b 500
このコマンドを実行すると、カレントディレクトリにあるファイルのデータがビデオカメラに出力される。コマンドの実行が終了したら、ビデオカメラを停止して良い。私の場合、初回のテストでは、カメラに2GBを送るのに50秒かかった。
それでは成功したかどうかを確認しよう。録画の停止後、テープを先頭まで巻き戻す。次にビデオカメラの再生ボタンを押して、コマンドラインで「dvconnect | dvbackup -t
」を実行してエラーがないかどうかを確認する。すべて問題なければ、「dvconnect | dvbackup -d | cpio -imV
」を実行してビデオカメラからコンピュータにファイルを復元する。
テープの別の部分にもファイルを保存することはできるが、どこにどのファイルを保存したかを確認するのは(テープ容量一杯の巨大な10GBのtar.gzアーカイブを作成した場合でない限り)ややこしいことになるかもしれない。そこでdvbackupの--set-backup-title
パラメータを使用すれば、各バックアップに個別の名前を付けることができる。また--set-picture
パラメータを使用すれば、各バックアップについて、ビデオカメラのLCD画面に表示される画像を指定することができる(デフォルトの画像はペンギンになっているが、独自の画像を用いることができる)。ただし画像ファイルはPPM形式で、大きさはPAL方式の場合は90×72、NTSC方式の場合は90×60でなければならない。
ビデオカメラにはエラー訂正機能が組み込まれているが、エラーの起こりやすいLPモードでファイルをバックアップしたい場合には、テープエラーやテープに損傷がある場合に、より優れたデータ保護を行なうことのできるrsbepを使用するのが得策だろう(もちろん、バックアップ用には品質の高いテープを用いるべきなのは言うまでもない。そうすればCRCエラーのほとんどは回避することができる)。rsbepのバージョン0.0.5には、テープにtarバックアップを作成するためのシェルスクリプト、バックアップをコンピュータ上に復元するためのシェルスクリプト、バックアップの完全性を検証するために使用するためのシェルスクリプトが含まれている。
ファイルを出力するには「find .
」の代わりに例えばtarや、さらに優れているstarを使用しても良いだろう。バックアップのセキュリティや信頼性を重視する人は、dvbackup、rsbep、star、gpgを合わせて使うと良いだろう。
なおバックアップの際に問題があれば、SourceForge.netにあるdvbackupのフォーラムを検索してみると良いだろう。私の場合は特にこの投稿やこの投稿が役に立った。
難点と感想
バックアップを作成したビデオカメラとは別のビデオカメラでバックアップを復元しようとするのはあまり勧められない。そのためdvbackupやその他のツールがうまく動くビデオカメラがあるのであれば、常にそのビデオカメラを使うようにした方が良いだろう。またあまり頻繁にバックアップに利用するとビデオカメラの磨耗につながるだろう。
dvbackupもrsbepも現在は開発が停止しているようだ。どちらも最新版は何年も前のものになっている。今回インストールしたバージョンはdvbackup 0.0.4とrsbep 0.0.5となっており、あまり完成度に期待しない方が良さそうだ。誰かがこれらのプログラムのコンセプトを受け継いで、できれば感じの良いGUIなども含めて完成させてくれることを切に望んでいる。
とは言え、ビデオカメラ用テープでバックアップするという手法が忘れ去られようとしている理由は分からなくもない。まず第一に、誰もがビデオカメラを持っているわけではない。さらにメディア代の問題もある。現時点ではMiniDV方式の高品質なテープ5本(最大75GB保存可能)を15ユーロで購入することができるのだが、20ユーロを出せば、DVDの100枚パック(450GB相当)を買うことができる。さらに言えばデータにランダムアクセスするのにも、DVDを使用した方がビデオカメラを使用するよりもはるかに簡単だ。
また、ほとんどすべてのメーカーのビデオカメラがデータの保存と転送にそれぞれ独自の仕様を用いているため、アプリケーションにとってはすべてのビデオカメラをサポートするのが困難であるということもある。私の家にはビデオカメラは簡素なCanon MV890(PAL方式)しかないのだが、このビデオカメラはUbuntu Studioシステムのdvbackupと連携させることができないので、バックアップを取りたいときにはその都度友人からSony製のビデオカメラを借りなければならない。
最後に、データを保存するためにDV方式のテープを使用するビデオカメラは今のところは市場に数多く出回っているが、ハードディスクやSSDを搭載したビデオカメラに市場を乗っ取られるのも時間の問題だろう。
しかし今のところ私は、機密性の高い情報を目立たない場所に置いておく方法としてMiniDVテープを使い続けるつもりだ。
Rui Lopesは、ポルトガルのウェブデザイナー兼映画制作者。技術分野における幅広い興味を持つ。