iPhoneのSIMロック解除ソフト、訴訟の懸念でリリース延期に――理由はリリース前日にかかってきた深夜の“警告電話”

 英国ユニークフォンズは8月25日、米国Appleの「iPhone」のSIM(加入者識別モジュール)ロックを解除するソフトウェアのリリースを、無期限に延期することを明らかにした。同社では「米国AT&Tの代理人から、同ソフトウェアをリリースすれば、提訴される可能性があると警告を受けたため」としている。

 ユニークフォンズの創業者ジョン・マクラフリン氏によると、8月25日午前3時(英国現地時間)、国際法律事務所オメルベニー&マイヤーズの者と名のる男性から、マクラフリン氏の私用携帯電話に電話がかかってきたという。

 オメルベニー&マイヤーズは、過去にAppleと仕事をしたことがある法律事務所である。AT&Tの代理として電話をかけたと名のった男性は、マクラフリン氏に対し、ユニークフォンズがiPhoneのSIMロック解除ソフトウェアをリリースした場合、Appleへの著作権侵害と知的財産の無断配布で、提訴される可能性があると告げたという。

 電話でたたき起こされたマクラフリン氏は、相手の氏名を確認しなかった。声の主は電話の趣旨を“親切なアドバイス”と説明したが、午前3時という時間と、私用携帯電話あてにかけてきたことから、マクラフリン氏は“脅迫的な警告”に感じられたと語る。

 「彼が私にアドバイスをしたいなら、電子メールで済むはずだ」(マクラフリン氏)

 なお8月25日時点で、オメルベニー&マイヤーズ、AT&T、Appleの広報担当者から、本件に関するコメントは得られていない。

 iPhoneを利用するには、AT&Tに加入している必要がある。しかし、ユニークフォンズはiPhoneが発売された直後に、iPhoneのSIMロックを解除し、AT&T以外の通信事業者でもiPhoneが利用できるソフトウェアを開発する計画を明らかにしていた。

 同社によると、同ソフトウェアのリリースは、8月25日午後2時(米国東部夏時間)を予定していたという。

 マクラフリン氏は、「AT&TやAppleと訴訟で争うことになれば、われわれは大ダメージを受ける。一方、ソフトウェアはすでに完成しており、リリースを待ち望んでいる顧客もいる。しかし、ソフトウェアをリリースすれば、われわれはすべてを失うだろう」(マクラフリン氏)

 ちなみにユニークフォンズが立ち上げたiPhoneのSIMロック解除に関するWebサイトは、英国時間の8月25日午後の時点で、登録者数が約55万人となっている。

 マクラフリン氏は、「(iPhoneのSIMロック解除ソフトウェアを)いずれはリリースしたい」としているが、リリース時期のメドはまったく立っていない。

 iPhoneのSIMロックを解除する方法は、これまでに2つ報告されている。ブロガーのジョージ・ホッツ氏は8月24日、iPhoneのSIMロック解除の手順を、解説付きで自身のブログに公開した。また、「iphonesimfree」というWebサイトでも、iPhoneのSIMロックを解除できたと公表している。

 iPhoneのSIMロックを解除する試みは、発売直後から複数のグループ/個人が行っている(関連記事)。その理由は、iPhoneの注目度の高さもさることながら、通信事業者がAT&Tに限定されているからだ。米国では、通信事業者が自社で販売する携帯電話端末にロックをかけるのは一般的だが、無料または安価な料金で、あとにロックを解除するケースが少なくない。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service ニューヨーク支局)

英国ユニークフォンズ
http://www.uniquephones.com/
米国Apple
http://www.apple.com/

提供:Computerworld.jp