エキスパートが教えるウェブサイト作りのポイント

 あなたの会社では自社のウェブサイトのリニューアルや、ことによると一からの立ち上げを検討していないだろうか。企業のウェブサイトが薄っぺらで静的な情報を記載した1~2ページでその役目を果すことができた時代には、ウェブサイト作りは割と簡単な作業だった。しかし最近では、顧客は企業のウェブサイトに対してインタラクティブで、情報満載で、楽しめるものであることを期待している。

 最近ではウェブサイト作りは、何から始めれば良いのか、どのような機能があれば良いのか、あるいはサイト作りの過程で誰に参加してもらえば良いのかさえも分かりにくくなってきている。当然ながら、機能を追加するということは、ウェブサイトの制作費や回線使用料がさらに増えるということだ。したがって顧客のユーザ体験の向上とコストとの間でバランスを取らなければならないが、そのためにはコツと優れた助言とが必要だ。

 インタラクティブなウェブサイトを作成するには、自社の製品やサービスをすでに利用している顧客のコミュニティを巻き込むというのも一つの方法だ。このタイプのソーシャルメディアは掲示板やフォーラムという形で数年前からすでに存在していたが、Web 2.0の到来により、ソーシャルネットワーキングはまったく新しい意味合いを持つようになった。最近のウェブサイトではユーザはプロフィールをカスタマイズしたり、写真やビデオをアップロードしたり、ブログを書いたりするなど様々なことができるようになっている。

 最近では多くの組織が、ユーザフレンドリなウェブ環境を低コストで作成するために、Pringo Networksのような企業に頼るようになってきている。今回、今時の顧客のニーズに対応するための様々な企業のウェブサイトのリニューアルを手掛けてきたPringoのGary Hall社長と同社CTOのHarvey Young氏に、自社のウェブサイトのリニューアル方法を検討中の組織に向けて、いくつかの助言をしてもらった。

ソーシャルネットワーキング・ツールには投資をするだけの価値がある:Hall氏は、せっかく顧客が自社のウェブサイトを訪れているのだから、顧客が自発的に提供してくれる情報をできる限り収集して最大限に活用することを勧めている。また、ソーシャルネットワーキング・ツールを備えたサイトに登録する際にユーザが提供してくれるデータからは、未開拓のまま眠ってしまっていたかもしれない情報を大量に得ることができるとも指摘している。「自社のウェブサイトを運営する企業は今や、自社サイトをよく訪れる個々のユーザとの間に関係を築くことが可能になった。また、顧客についての属性や嗜好などの重要な情報をより大量に獲得することもできるようになっている。そのような情報は、企業と顧客のどちらにとってもより優れた、魅力のある、双方向の関係を築き上げるのに役立てることができる。さらに言えば、ユーザがプロフィールを提供する場合、その情報は広告のターゲティングの確度を上げるのにも役立つ。このことは、ウェブでの経済の在り方をソーシャルネットワーキングがどのように変えるのかと考える上で非常に重要なポイントだ」。

Web 2.0はティーンエイジャーだけのものではない:ソーシャルネットワーキングは、ティーンエイジャーの放課後の暇つぶしから、多様な年齢層に対して用いることのできる、持続可能なマーケティング・ツールへと進化した。Hall氏によると「新世代のソーシャルメディアは、ニッチ、同窓会や同好会、協会などに手を広げている。その結果としてその種のサイトのUGC(ユーザー作成コンテンツ)の質が上がり、読者層のレベルも上がっている」とのことだ。

機能と機能性が鍵となる:Hall氏によると優れたユーザ体験を生み出す最良の方法は、デジタルメディア共有ツール、ニュースレター、イベント管理などの最先端機能を幅広く追加することだという。そのような機能は単に見た目が良いというだけではなく、新たな収入源を企業にもたらす可能性もあるとのことだ。ただしHall氏は、機能を追加する際には各段階において毎回、新たな設計がトラフィックの増加に対処可能であるということを確実にしておくことが重要だとも警告した。

アウトソーシングを検討する:Hall氏によると「早期に市場に参入してニッチを支配し、直ちに実際的な収入を得たいと希望している場合には、サードパーティを利用すべきだ」という。内部的にリニューアルを行なった場合には18ヶ月間程が必要となることもあるのに対して、適切なベンダを利用した場合には2~8週間でサイトの稼動開始が可能になることが多いとのことだ。

機能数の増加は必ずしもITスタッフの仕事量の増加につながるとは限らない:Young氏は、あらゆるウェブサイトにはある程度の保守が確かに付き物ではあるとした上で、しかし「実装されている機能群の内容にもよるが、サーバとバックエンドに関して言えば、追加したハードウェアを保守するために並外れた作業が必要になることはない」という。またYoung氏は、コミュニティ自体が自らをモデレートするような方向に持って行くことを勧めている。「Pringoには、ユーザが誰でもサイトのモデレータになることを可能にする機能が組み込まれている。モデレータは、役割を非常に具体的に決めた後、制限付きの権限を与えられてコントロールパネルにアクセスすることができるようになる。そしてコンテンツの管理/モデレートや、サポートの提供など、つまりはリソースとしてのコミュニティを強化するための活動をすることにより、コミュニティのために一役買うことができる」。

ソーシャルメディアは社内でも役に立つ:Young氏は、ソーシャルネットワーキングのためのプラットフォームは、顧客向けの製品/サービスを抱えている企業のためだけのものではなく、大企業や地理的に広い範囲に分散している組織などにとっても理想的だとしている。「ソーシャルネットワーキングは、ビデオやアニメーション画像を散りばめたプロフィールのページを作成するための暇な時間を持て余している人々のためだけのものではない。ソーシャルネットワーキングは、人々が話し合いを持ちやすくしたり、テレビ会議を行なったり、ビジネス上の人脈作りをしたり、ファイルを共有したりするためのコラボレーション・ツールへと進化した。つまり究極的には、人々のコミュニケーション能力を強化するものであると言える。そしてどのようなビジネスにおいても、コミュニケーション能力の強化は必ず成功をもたらす」。

上司の反対は最終宣告ではない:ウェブサイトのリニューアルにソーシャルメディアツールを含めるという案に対して、気乗りのしない反応を受け取るITマネージャもいる。Young氏によるとそれは、企業にとっての潜在的なメリットに上司がはっきりと気付いていない場合に予想される反応なのだという。「ソーシャルメディアは、『社交的』になるためだけのものではなく、コラボレーションやコミュニケーションを行なうためのものだ。自社の内部的なバグ追跡システムにリンクしていたり、salesforce.comと連動することが可能な、独自のソーシャルネットワークを想像してみると良いだろう。ソーシャルネットワーキングが何の変哲もない単なるツールではないということをITマネージャたちが上司に理解させることができれば、上司の反応もずっと良くなると思う」。

陥りやすい落とし穴に気を付ける:Young氏は「サイトのリニューアルにおける最大の障害の一つは間違いなく、明確に定義した目的と仕様の欠如だ」という。「私自身プログラマであることもあり、マネージメント側と開発者側との間の意思疎通の欠如を頻繁に経験してきた。プログラマたちは、非常にクールだが誰にも理解できないような何かをコーディングしたがる。マネージャたちは、彼ら自身が思い描く通りの結果にはなりそうにない機能を要求してくる。それ以外のメンバーは、とりあえずサイトを立ち上げて、その後に変更を行ないたいと言う」。

 「全体的な設計と機能とについて何度も修正を行なわなければならないのは、どちらの側にとってもひどく負担になる。そのため全体的な設計については最初の時点でよく考えて非常に綿密に計画しておく必要がある。そうしておけば、チームの全員が同じビジョンを共有することができ、またコーディングという観点から言っても、(一度にであれ段階的にであれ)プロジェクト全体を円滑にすることができるように舞台裏のアーキテクチャを開発することができる」。

 「グラフィック・デザインに関して言えば、よくある落とし穴は間違いなく、ごちゃごちゃとして取り散らかってしまうことだ。往々にして、シンプルな方が良いこともある。確かにPringoのようなプラットフォームが提供している機能をあれこれ見れば、人々は舞い上がってしまい、すべての機能を利用したくなることと思う。しかし目的を非常に明確にして、ユーザのために物事を単純にしておくことを身に付ける必要がある。とは言え、優れた計画、デザイン、技術を組み合わせることができれば、ソーシャルメディアというこの新世界においても成功は間近だろう」。

ITManagersJournal.com 原文