米IBM:グリッド・コンピューティングで難病治療薬開発
米IBMは8月23日(米国時間)、グリッド・コンピューティングを利用して難病の治療薬を開発する新プロジェクトを立ち上げたと発表した。テキサス大学医学部、シカゴ大学と協力して、現在、薬物療法が確立されていない病気の薬を開発するもので、西ナイル脳炎、C型肝炎、黄熱病などが対象。
個人や企業のコンピューターの未利用の処理能力を結集する同社の社会貢献プログラム「World Community Grid」(WCG)を活用するもので、解析期間を大幅に短縮することが可能となる。たとえば、4種類のデング熱のウイルスに対して有効な抗ウイルス薬を発見するには約5万年分の計算時間が必要だが、WCGによって1年以内に完了可能になるという。
プロジェクトの第1段階では、ウイルスが自己複製に利用する主要タンパク質の1つについて、600万以上の薬物分子データベースから複製抑制効果を持ったものを探し出す。第2段階では、ウイルスのタンパク質と最も強く結びつく薬物分子の候補を挙げる。数十種類の分子に絞り込んで、研究室や臨床試験の開発に引き継ぐ。
現在、WCGには31万5000人以上が参加して、70万台以上のパソコンが接続している。計算能力は、世界のスパコン番付で上位5位以内に相当するという。WCGではこれまで、エイズ治療薬開発など7件のプロジェクトに取り組んできた。【高森 郁哉/Infostand】