gelato――独自のtumblelog運営を可能にするソフトウェア

 tumblelogとは不精者専用に特化したブログである、という認識の人間は結構な数に上っているのではなかろうか。tumblelogもブログもコンテンツ管理システムとしてはその大部分が共通しているが、あえて言うならば、オンライン上で発見したアイテムや自分の意見を収集して第三者に公開するための物置がtumblelogであると見なせなくもないだろう。

 そしてブログとは異なり、tumblelogの読者側は掲載される記事に内容説明が付随することを端から期待していないので、投稿者側もそうした負担を負う必要はない。この場合は“その存在自身が暗黙裏にすべてを物語る”という性質のアイテムを掲載するか、“掲載する方法を少しひねることで投稿者の意見を物語らせる”ことがお約束になっている。

 こうしたtumblelogが具体的にどういう仕組みで動いているのかを知りたければ、オープンソース版tumblelogソフトウェアのgelato(アイスクリームを意味するイタリア語)が格好の教材となるだろう。これはPHP/MySQLスタックベースのアプリケーションで、tumblelogの基本機能がすべて備えられている。もっとも現状でバージョン0.85段階でしかないgelatoには若干のバグや不整合さが残されているが、わずか数分の作業で独自のtumblelog環境をセットアップできるのは非常に大きな魅力と言っていいだろう。

 PHP/MySQLベースアプリケーション(AJAXも一部使用)であるgelatoのインストール手順は、他の多くのWebベースアプリケーションのものと基本的に共通している。最初に行うのは、gelato用MySQLデータベースの構築である。次に最新版アプリケーションをダウンロードする。これを展開して作成されるディレクトリにはconfig-sample.phpというファイルがあるはずなので、このファイル名をconfig.phpに変更して、その中にデータベース接続用の設定を記述しておく。次にこのディレクトリ全体を各自のサーバにアップロードして、手元のWebブラウザからhttp://サーバ名/gelato/install.phpにアクセスする。これによりインストール用ウィザードが起動され、残りのセットアップ処理が実行される。インストール作業の終了後、gelatoのアップロード用ディレクトリにサーバ上での書き込み許可を与えれば(chmod 777)、これで準備完了である。

gelato_thumb.png gelato

 gelatoのインストールによって自前のtumblelog環境を構築したからには、ここにログインしてアイテムを追加しなければならない。その際に従来型のブログとgelatoとの最大の相違点として気づくのは、おそらくコンテンツの種類が複数に分かれている点であろう。つまりgelatoでは、単に記事を投稿するというのではなく、写真、動画、音声、リンク、引用、ダイアログという分類オプションが事前に用意されているのだ。通常のブログ型の投稿を行いたければRegularセクションを利用すればいい。こうした固定的な分類が行われている主目的は、それぞれに必要なフォーマットを指定することなく、簡単にコンテンツ発信を行えるようにしておくためである。実際、コンテンツ投稿に必要な操作は公開するアイテムへのリンクを張ることだけだが、簡単な説明を添えるオプションも用意されている。例えばYouTubeムービであれば、ユーザはそのURLだけを入力して、残りのエンベッド処理はすべてtumblelog任せにしておけばいい。写真の場合は、ユーザが手元にあるハードディスクからアップロードすることも、gelatoにURLを指定して該当する写真を取得させることもできる。

 従来型のブログおよびコメントという機能はtumblelogでは脇役扱いだが、gelatoの場合は軽量型マークアップ言語のTextileがサポートされているので、簡単なテキストフォーマット処理を施すことも可能である。簡単なテキストフォーマットとは言っても、単なる文字装飾だけでなく、表、リンク、インラインイメージの挿入も行えるので、従来型のブログ記事的な投稿をする際には重宝するだろう。

 gelatoの管理セクションに用意されている機能は豊富とは言い難いが、本来このソフトウェアは簡単な操作性に主眼が置かれていることを忘れてはいけない。いずれにせよ、投稿後の記事管理、tumblelog本体の動作設定、ユーザ管理といった最小限の機能は一通りそろっている。

 現行バージョンのgelatoでもテーマ機能はサポートされているが、プラグインの機能は次バージョンでサポートされるとのことだ。テーマの品揃えも貧弱といえば貧弱だが、中には見栄えのするテーマも用意されている。新規にテーマを入手する操作も簡単であり、テーマのパッケージをダウンロードして展開し、gelatoのインストール先にあるテーマ用ディレクトリに配置すればいい。後はSettingsセクションで追加したテーマを選択して、Modifyを押すだけである。

まとめ

 tumblelogも一時の流行で終わる存在なのかもしれないが、オンラインでの気ままな情報収集および、そうして見つけた新発見や自分の意見を第三者と簡単に共有する手段の1つを提供している点に間違いはない。こうしたtumblelogに興味があり、自分の手で管理運用してみたいという場合は、ここで紹介したgelatoが有力な候補に上るはずだ。

Dmitri Popovは、フリーランスのライターとして、ロシア、イギリス、アメリカ、ドイツ、デンマークのコンピュータ雑誌に寄稿している。

Linux.com 原文