Flock 0.9、まもなく登場

 Flockプロジェクトは「ソーシャルウェブブラウザ」を2005年から開発している。次期リリースのFlock 0.9には、新たなブログ機能の追加、メディアストリームのブラウザへの統合、ブックマークシステムの抜本的な改良などが施され、まだ完璧ではないとは言え大幅な改善が見られるリリースとなっている。

 Flock 0.9はFlock 0.7シリーズからのメジャーアップデートであり、多数の変更点が含まれている。今回試したのはFlock 0.9ベータ版のプレリリースであるため安定性や性能については重要視しないことにして臨んだ。結果的には、実際にテスト中に何度かクラッシュを経験し、また多少の性能上の問題にも遭遇した。しかしそれらは0.9がリリースされる前に解決されるだろう。

 Flock 0.9では大幅な見掛けの変更が行なわれていて、「Firefoxを少しだけ独自のイメージに変えた感じ」という見掛けからは遠ざかった。ブラウザには、標準のロケーションバーのすぐ下に小さなツールバーが追加されて、ツールバーの中にサブスクリプション登録用のアイコンが新しく含まれるようになるなど、ユーザインターフェース関連の様々な改良が行なわれている。Flock 0.9の新しい見掛けは非常ににぎやかな感じになっていて、いわゆる「Web 2.0」風のルック&フィールが好きな人は気に入ると思われるが、そうでない人はうんざりするかもしれない。

 Flock 0.9の新しい見掛けは、GNOMEデスクトップではやや場違いな感じがする。Firefoxとは異なり、FlockのメインのツールバーはGNOMEのGTK+テーマを継承しないため、メタリックな雰囲気のテーマを使用していない場合には、Flockのデザインはデスクトップ全体のデザインとマッチしない。

マイ・ワールド

 Flockをはじめて起動すると、「My World(マイ・ワールド)」と呼ばれるユーザごとに自動生成されるホームページが表示される。My Worldは3段組みのコラムからなるページで、検索エンジン用のバーと、各ソーシャルサービスへのリンクなども用意されている。なお3つのコラムはそれぞれ、ブックマーク、フィード、メディアストリームだ。

 検索エンジンはデフォルトではYahoo! に設定されているが、GoogleやAsk.comやその他の検索エンジンに変更することもできる。また検索エンジンの設定をカスタマイズすることも簡単にできるので、例えばLast.fmを頻繁に検索する場合には、My Worldページのデフォルトの検索エンジンとしてLast.fmを設定することもできる。

 検索ということに関して言えば、Flockのライブ検索機能は気が利いている。ライブ検索では、ツールバーの検索ボックスに検索語を入力すると同時に、Yahoo! からの検索結果と、最近訪問したページからの検索結果と、お気に入りとして登録されているページからの検索結果とがプルダウンメニューとして表示される。またその他いくつかの検索エンジンで検索するオプションも表示される。このオプションについてはFlockの設定画面を通してカスタマイズすることも可能だ。なお、ライブ検索には、Yahoo!、Amazon、Craigslist、Technorati、その他いくつかから選ぶことができるが、Googleは選択肢に入っていない。

 My Worldページのコンセプトはかなり優れているが、実装にはいくらか改善の余地があるかもしれない。まず、カスタマイズがほとんどできない。例えばお気に入りサイトの順番が、お気に入りサイトの中で最近訪問した順になっている。そうではなくて、Favorite Sites(お気に入りサイト)欄の中に表示されるサイトは手動で選ぶことができた方がありがたい。そうなっていれば、たまたまその時に訪問した、週に数回、あるいは月に数回しか訪問しないサイトによって毎日訪問する必要のあるサイトが埋もれてしまうことを避けることができるだろう。

 とは言えこのMy World機能は、Flockが1.0リリースに近付くにつれて進化していくことは間違いないと思う。またMy World機能が気に入らないユーザは、Flockのデフォルトのホームページを別のサイトに設定し直してもまったく問題はない。

Flockからブログを書く

 Flock 0.9には、ブロガーのための改良点も数多くある。まず、サポート対象のブログ・プラットフォームとして、これまでのWordPress、Blogger、LiveJournal、Typepad、一部の自己運営ブログに加えて、今回新たにXangaとBlogsomeが追加された。

 エディタも改良され、プレビューの表示が可能になったり、ブログ記事のタグ付けがサポートされたり、画像を挿入したりすることができるようになった。またブログ用エディタをウェブ用クリップボードと連携させることが可能になった。したがって例えばウェブの閲覧中に後で自分のブログで使用したいものを見つけたら、単にそのテキストなり画像なりURLなりを後で使うためにクリップボードにドラッグしておけば良い。もちろんクリップボードはブログ以外の目的にも使用することができる。オンラインで論文を調べるときなどに役立つはずだ。

 とは言え、クリップした情報のクリップ元の情報についても、クリップボードが保存してくれるようになると良いと思う。現在私はウェブページからのスニペットを保存するためにGoogle Notebookを使用していて、テキストと一緒にページのURLとタイトルを自動的に保存してくれる点が気に入っている。なおFirefox用のGoogle Notebook拡張でも画像のクリップを行なうことはできるので、Flockのクリップボードの利点は、ブログエディタとの統合が優れているという点だけに留まる。

 FlockではFirefox拡張のサポートもかなり優れている。FlockでNotebook拡張を使用してみたが、まったく問題はなかった。さらにブログエディタとの間でドラッグ&ドロップすることまでできた(ただし画像についてはできなかった)。

 Flockが実装すべきである改良の一つは、ブラウザ終了時に書きかけのブログ記事を保存するかどうかをユーザに確認するための通知だ。Flockを試していたとき、私はブログエディタに半分書きかけの記事を置いておいたのだが、そのことを忘れてブラウザを再起動してしまった。再起動の後にFlockがそのことについて確認を求めなかったことに気付いたのだが、時すでに遅しだった。

ブックマーク

 Flock 0.9以前のリリースでは、ブックマーク(Flockでは「お気に入り」と呼ばれている)はソーシャルブックマークサービスのdel.icio.usShadows経由でのみ提供されていた。Flock 0.9では、Shadowsのサポートが廃止され、ソーシャルサービスには保存しないローカルのブックマークのサポートと、Ma.gnoliaのサポートが追加された。

 ローカルのブックマークがサポートされたのは歓迎すべきことだ。del.icio.usにはブックマークをプライベートに設定するオプションがあるものの、管理用のページなどをブックマークとして登録することはできれば避けたい。

 Favorites(お気に入り)メニューには、ローカル/オンラインのブックマークとフィードがまとめられている。Favorites(お気に入り)メニューからフィードを開くと、Feeds(フィード)サイドバーがポップアップして、(実際のサイトではなく)フィードがブラウザウィンドウで表示される。

 しかし現時点ではまだFlockでのdel.icio.usブックマークの扱いは、del.icio.usから提供されているFirefox拡張には到底及ばない。del.icio.usのFirefox拡張では、特定のタグを付けたすべてのブックマークを含むフォルダをツールバー上に作成することができる。例えば、私は仕事でよく使うブックマークにはfirefox:toolbarというタグを付けておき、UbuntuFedoraなどのオープンソースプロジェクトで起こっていることを知るために見る様々なPlanet翻訳記事)サイトにはfirefox:planetというタグを付けている。しかしオンラインブックマークと連携してこのようなことを行なう方法はFlockにはない。

 Flockでもユーザがブックマークを簡単に検索することができるようになっているので、フォルダごとにすべてのブックマークを自分の目で確認する必要があるわけではないが、もっとうまく管理する方法があった方が良いと思う。全体的にはFlockのブックマークシステムは向上しているのだが、本当に便利と言えるようになるまでにはまだ改善の余地がある。

メディアストリーム

 YouTubeが好きな人は新しくなったMedia Minibarを試してみると良いだろう。Flock 0.9ではMedia Minibarが刷新され、Flickr、YouTube、Photo Bucket、AOLのTruveoのメディア「ストリーム」を閲覧することができるようになった。

 ストリームの閲覧のオプションの一つに各サービスのデフォルトのストリームを閲覧するというのがある。すなわち例えばYouTubeに最も新しく追加されたビデオを見たいという場合や、面白いという評判のFlickrの写真を見たいという場合などには、Flockに用意されているそれらのデフォルトのフィードを利用することができる。また、これらのサービスの特定のユーザのメディアフィードを購読することもできる。例えば私は自分の一番下の弟のFlickrのフィードを購読しているので、弟が新しく写真を追加したときには、Media Minibarの中で簡単に閲覧することができる。

 ユーザインターフェースも気が利いている。写真の上にマウスをかざせば、より大きなサムネイル画像が表示されるので、写真を少し見やすくするだけのために時間をかけてフルサイズの画像を開く必要がない。またMedia Minibarには検索機能とフィルタ機能があるので、直接訪問することなく、Flockのツールバーから各メディアサイト内を検索することができる。したがって例えばYouTubeでXTCのビデオを全部見たいという場合には、必要なキー入力はほんの少しで済む。検索後はMedia Minibarでサムネイル画像を閲覧して、各ビデオの評価、タイトル、再生時間、これまでの再生回数を見ることができる。

 私はFlickrのユーザストリームを購読するようにFlockを設定できることが気に入っているのだが、現在のところFlickrのプールを購読するオプションは提供されていない。ただし、Flockベータ版テスト用のメーリングリスト上の議論を見る限り、この機能の追加の要望はあるようだ。各メンバーの個々のフィードを購読する必要なく、Can Has Cheezburger Poolのようなプールを購読するオプションがあった方が私も嬉しい。

 とは言えMedia Minibarは今のままでもオンラインの写真/ビデオサービスのメディアを閲覧するのに十分便利なツールだ。また、面白いビデオや写真を次々に見ることが非常に簡単にできるので、1、2時間をつぶすにはもってこいだ。

Firefoxをうまく利用

 Flock 0.9ではFlock独自の機能の他にも、Firefox 2.0にすでに登場した機能がいくつか新たに追加された。例えばFlock 0.9では、インライン・スペルチェック、フィッシング対策機能、セッションの復帰機能が取り入れられている。

 私はFlockを2005年の誕生当初の頃から見守っている(翻訳記事)のだが、Flockは興味深く進化してきていると思う。Flockプロジェクトが1.0に近付いているのを見るのは嬉しいことだ。

 Flockは万人向けではなく、また依然として開発途上でもあるが、しっかりとしたコンセプトを持ち、実装もしっかりとしている。Flockはソーシャルサービスとウェブの閲覧を非常にうまく統合している。Flockの開発者たちは、Firefoxというすでに優れているアプリケーションをさらに良いものにした。これはまさにオープンソースの醍醐味だろう。

 ちなみに、FlockとSongbirdがどちらもFirefoxをコードベースとしながら別々に開発されているのは残念なことだ。もしこれら2つのブラウザが力を合わせることができれば、Flockの「ソーシャルブラウザ」とSongbirdの「デスクトップ・ウェブ・プレイヤ」を合わせたものは真のキラーアプリケーションになれると思う。

 Flock 0.9は現時点ではまだクローズドベータテストの段階だが、正式リリースまでにそう長くはかからないだろう。最新情報についてはFlockブログで、最新リリースについてはダウンロードページで確認することができる。

Linux.com 原文