Open Business Foundationが実践する「オープンソース・ビジネス・モデル」

 Open Business Foundation(OBF)は、「オープンソース開発コミュニティーのあり方はビジネスでも有効」「小規模企業でも結束してあらゆる種類の資源を共有すればさらなる成功が可能」という2つの信念のもとに活動している。

 「(OBFは)そうした設計理念とオープンソース・ソフトウェア・コミュニティの原理から生まれ、会員はその資源・経験・業務手続きを共有することによりコミュニティの持つ真の力を引き出そうとしています。ですから、実績があり信頼できる会員との協業を積極的に進め、活発でオープンなビジネス・コミュニティを目指すことができるのです」。設立者であるRavensong ConsultingのオーナーRobert Whetselはこのように説明する。

 Westelは起業家の家に生まれ、小規模企業の経営者に囲まれて育った。兵役を終えたWhetselが最初に定めた目標は自分の店を持つこと。しかし、Sonicレストランのチェーン店を始めたものの、「何のために働いているのかわからなくなるほど」の働き詰めだった。「そんなことをするために契約したわけではありません」

 そこで、ほかに生活費を得る方法を考え始めた。「子どもの頃、私はオタクだったんですよ。初めてコンピュータを組み立てたのは14のとき。そんなオタク少年でした。いろいろな人からよく相談され、それに応えられることに自信を持っていました。そこで、ITショップを始めたのです」。Whetselは一人で店を切り回すことになったが、それはWhetselの肌にはまったく合わない仕事だった。「何もかも一人でやるのです。マーケティングを考えるのも、帳簿を付けるのも、税金を払うのも。それは大仕事です」

 自分の土俵は業務管理ではなくITコンサルティングにあると賢くも悟ったWhetselは、伝統的なオープンソース開発コミュニティを範とする集団的ビジネスを構想した。それは何も秘匿しないコミュニティであり、技術を共有し合うことで事業を行うコミュニティであり、小規模企業が結束し協業して相乗効果を引き出すことにより大規模で間口の広い企業と互角に競うコミュニティだった。

 「あるとき、お互いに得意とするものを持ち補完関係にある起業家や企業があることに気づいたのです。これを天啓として、いろいろな業態や提携モデルを研究しました。そして、OBFの基本的な枠組みを考え出したのです」

 Whetselによると、OBFは仮想ビジネス孵卵器だ。会員企業は互いに指導し指導され、人材を派遣し合い、仕事獲得のためのネットワークとなる。「たとえば、私がクライアントと仕事をしていて、私には対応できないことが出てきたとします。しかし、私にはできなくても、OBFの中に必要な技術を持った会員がいるかもしれません。いれば、その企業をクライアントとの打ち合わせに呼んで正式に紹介し、とても和やかな雰囲気で引き合わせます。この場合、私はクライアントとその企業を橋渡したことになり、新しい仕事を得た企業から紹介料を得ることになります」。クライアントがその企業を気に入らなかった場合は、OBFを通じて人材派遣を受け「下請けとして使うことになります」

 旧来のビジネス・ネットワークと同じようにも見えるが、OBFは、Whetsel言うところの指導と紹介だけのビジネス・ネットワークを超えているという。「私は頻繁に新規ビジネスを指導していますが、逆に指導を受けることもあります」。OBFは、単純な親睦会ではありえない相互評価機能を持っているという。「もし私が会員企業のプロジェクトに参加し、そのプロジェクトをあらぬ方へ導き、大方の不評を買ったとすれば、それはOBF全体が知るところとなります。ですから、そうならないよう私は最善を尽くさなければなりません。会員企業は、誰もが常に評価の対象であることを自覚しているのです」。この機能があるために、OBFには相互評価のないグループよりも「強い責任感を持つ」会員が集まっているとWhetselは言う。

 OBFの機能の中で最も興味深いのは業務手続きの共有だ。なんと、競合企業が基本的な日常処理を支援するのだ。たとえば、「最近のことですが、私は製品の価格設定について他社のお世話になりました。というのは、私はアプリケーションの作り方は知っていますが、価格を設定する方法は知らなかったからです」。相談を受けた企業は、Whetselの製品に相応しい価格を決定する方法を手順を追って教えた。「お陰で、その企業が用いている手順に従って公正と思われる価格をその場で決定することができました」

 Whetselによると、会員企業の中には、自社アプリケーションのソースコードを他社と共有しているところもあるという。「OBFでは、アプリケーションを共同開発することもできるのです。プロプライエタリー派の人がこれを聞くと大概はビックリするでしょうが、いずれにしても私たちのほとんどはオープンソース派です」

 OBFには決まった料金体系はなく、各社が時々に応じて交渉で決める。「企業同士の交渉で決まります。当社の場合、必要なものはあらかじめ用意してありますから営業段階で最終的に手にできるものを予測することができます。ときにはすべてを回収できそうにないこともありますが、その場合でも、クライアントには、彼らがこれまでに受けたサービス以上の最良のものを提供します。この点、つまりクライアントに今度は自社が報いたいと思わせるようなサービスを提供することが重要なのです」

 OBFは、こうしたルールに従わない企業を除名したことがある。「7社、除名しました。共有しようとしなかったからです。他の会員からクライアントを奪おうとした企業もありました。クライアントに出向き、自社の方が良い仕事ができると言ったのです。もちろん、入会の際にこうした輩を排除しようとはしますが、見誤ることがあります」。そのため、OBFは、最近、入会手続きを変更した。「現在は、条件を厳しくしています。入会するには、まず、会費を払っている会員に招待してもらう必要があります。申し込みがあると審査し理事会が開かれます。通常、招待された企業は予備的な入会が認められ、その試験期間中に貢献したり紹介したりする姿勢が評価されます。何もせずにプロジェクトが持ち込まれるのを待っているのはたやすいことです。その企業がコミュニティの良きメンバーであることが確認されれば、会費を払って会員になることができます」

 Whetselによると、会員企業の26社がIT関連であり「OBFに対応できない技術はない」という。また、他の産業の専門的な企業を受け入れて間口を広げることを目指しているという。5年後OBFが「企業間連携の交換所として知られるようになっていること」がWhetselの目標だ。「この方式はどのような提携関係よりも優れています。会員の持つあらゆる製品やサービスを販売できるのですから。これは本当に驚くべきことですよ。OBFには、多くのプロジェクトで協力している企業が、すでに、3社あります。OBFはまさにオープンソース・ビジネス・コミュニティです。技術についてオープンというだけでなく、ビジネス自体もオープンソースであり、通常社外には開示されない実践を公開し、資源を共有しています。OBFはオープンソースのビジネスなのです」

Tina Gasperson ビジネスやテクノロジーに関する記事を執筆、業界で著名な雑誌に掲載されている。1998年からフリーランス。

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