OpenBSD Foundation設立

 OpenBSD Foundationが昨日(7/25)、カナダの非営利組織として誕生した。OpenBSD Foundationは、「個人や組織がOpenBSDを何らかの方法で支援しようとする際、対象となる法人格が必要となる場合に、単一の窓口」として機能することを目的としている。

 OpenBSD Foundationの理事は、開発者のBob Beck氏、Kjell Wooding氏Ken Westerback氏が務める予定だ。定款によると、メンバーは「本法人の目的の促進に関心を持つ者に限ることとする。また、メンバーとしての入会の申請が本法人の理事会から承認された者から成ることとする」とのことだ。ただしOpenBSD Foundationのウェブサイトは「現時点では新たなメンバーの積極的な募集は行なっていない」としている。

 OpenBSDと、非常にポピュラーなセキュアなネットワーク接続用のツール「OpenSSH」を含む関連プロジェクトの経済基盤は、この数年間不安定だった。その理由は主に、お金を支払ってソフトウェアのCDを購入するユーザが減り、ソフトウェアをダウンロードするユーザが増えたためだ。Marco Peereboom氏は2006年3月のOpenBSD Journalの記事の中で次のように述べていた。「今何が起こっているのかというと、CDの購入とFTPとの比率の悪化に歯止めが効かなくなってしまっている。ユーザはかつて行なっていたように大量にCDを購入することをほとんどやめてしまい、その代わりにFTPミラーを使用するようになった。この売り上げがなくなったことによってOpenBSDプロジェクトは、この2年連続で小規模だが赤字になってしまった」。Peereboom氏は、同プロジェクトが「開発の目標の大部分を実現する」ためには約10万ドルが必要だとしていた。

 それ以降、GoDaddy.comGoogleAdobe、そしてフランスの大学生の組合であるcr@nsなどからの相当の大きさのものを含め、寄付は上向きになっている。しかしOpenBSD Foundationは明らかに大きめの寄付をもっと多く集めたいようだ。発表文によるとOpenBSD Foundationは、「最初のうちは、機器、資金、文書、リソースについて、より大きめの寄付をしやすくすることに集中する」とのことだ。なお、小規模な資金やハードウェアの寄付については、既存の枠組みを利用して行なうことができるという。

 OpenBSDのルーツは、1970年代にカリフォルニア大学バークレー校で誕生したUnix派生物であるBerkeley Software Distributionにまで遡る。1995年にNetBSDからOpenBSDディストリビューションをフォークしたTheo de Raadt氏が、現在もプロジェクトのリーダーを務めている。OpenBSDは、現在利用可能なオペレーティングシステムの中で最もセキュアなものの一つだと広くみなされている。関連プロジェクトにはOpenSSHの他にも、OpenBGPD(「Border Gateway Protocol Version 4のフリーな実装」)、OpenNTPD(「Network Time Protocolのフリーで使いやすい実装」)、OpenCVS(リビジョン管理のための「Concurrent Versions Systemのフリーな実装」)などがある。

 昨年のLinux.comのインタビュー翻訳記事)の中でde Raadt氏は、OpenBSDプロジェクトの経済問題に触れていた。興味深いことに昨年の時点では、OpenBSDプロジェクトは非営利組織の設立を検討したものの、最終的には設立しないことに決定したと同氏は述べている。さらに、「実はOpenBSDプロジェクトにとっては組織の設立は節税対策という観点からは効果がない。特にOpenBSDプロジェクトに対する寄付のほとんどは、活動拠点(カナダのアルバータ州)の国外から寄せられているので。それに組織を作るには非常に多くの制約や規則がある。したがって現時点では、税金控除用の領収書も発行しない、分かりやすい現金による寄付という形式のままにしている」としていた。

どうやら時代が変ったようだ。

Shirl KennedyはDocuTicker/ResourceShelfウェブログの編集長。またInformation Todayの”Internet Waves”コラムも担当。1992年以来、技術関連の記事を執筆している。

Linux.com 原文