FBI、個人の行動追跡にデータ・マイニングを利用――テロの兆候発見や個人情報盗難の動向分析などが目的

 米国連邦捜査局(FBI)が個人の行動追跡にデータ・マイニングを利用していることが、米国司法省(DOJ)の報告書で明らかになった。データ・マイニングは、テロリスト容疑者や自動車保険の不正請求者などの行動を追跡するのに使われている。

 この報告書は、2005年愛国者改正再授権法(Patriot Improvement and Reauthorization Act of 2005)で提出が義務づけられているもので、DOJとその下部機関が実施または計画しているデータ・マイニングを、6つのパターン別に詳細に説明している。

 DOJの広報担当者は、「データ・マイニングへの取り組みは捜査上、きわめて有益だ。捜査官はデータ・マイニングを利用して、合法的に入手された情報をより効果的に分析・処理し、犯罪の兆候発見とリソースの適切な配分に役立てることができる」との声明を発表した。

 だが、上院司法委員会の委員長を務めるパトリック・レーヒー上院議員(民主党、バーモント州選出)は、DOJの報告書に対する声明の中で、4カ月遅れて提出された同報告書は現状の問題点を明らかにしたと指摘した。「ブッシュ政権が米国人の個人情報を収集するために、データ・マイニングの適用範囲をしばしば秘密裏に著しく拡大してきたことを、この報告書は示している」(レーヒー氏)

 レーヒー氏はさらに、議会が有意義な監督を行ううえで同報告書が手がかりになると述べ、「数週間以内に司法長官、およびFBI長官とともに、報告書の内容を徹底的に検証する」との方針を示した。

 DOJの報告書に記されているデータ・マイニングへの取り組みは以下のとおりだ。

  • 近く開始されるSystem to Assess Riskプログラム:テロリスト捜査の観点から詳細調査に値すると考えられる個人を、FBIのアナリストが重点的に追跡できるようにすることを目的としている。DOJによると、このプログラムは、追跡対象の個人にテロリストのレッテルをはるものではなく、重要人物として特定済みの個人を重点的に追跡できるようにするのがねらいだという。
  • 個人情報盗難分析プロジェクト:個人情報盗難に関する顧客の苦情を調査し、特定分野で大規模な個人情報窃盗が組織的に行われていることを示唆するパターンの発見につなげる。このデータ・マイニングは、2003年からFBIで個人情報盗難の動向分析と容疑者特定に活用されている。
  • 不動産取引の公的記録の調査:FBIが1999年から家屋取引詐欺の兆候発見のために行っている。

 このほかの3つの取り組みは、それぞれインターネットを使った薬物販売詐欺、自動車保険関連詐欺、医療関連詐欺の発見を目的としている。

 DOJは声明で、どの取り組みでも、プライバシーと個人的自由の保護を確保するために適切な配慮がなされていると述べている。

 データ・マイニングは、従来の捜査方法に取って代わるものではなく、捜査を補完するものと位置づけられている。DOJは、データ・マイニングの成果だけに基づいて捜査活動が行われることはないと強調している。

(ジャイクマール・ビジャヤン/Computerworld オンライン米国版)

米国連邦捜査局(FBI)
http://www.fbi.gov/
米国司法省(DOJ)
http://www.usdoj.gov/

提供:Computerworld.jp