ディストリビューションって何?
この「ディストリビューションとは何か」という問題は、Dellがデスクトップとノートパソコンのプレロード用にUbuntuを選んだことを巡って熱い議論――ほかに何があるのか――が戦わされていたときに持ち上がった。UbuntuはDebianをベースにしているので真のディストリビューションではないという主張に対して、メーリング・リストに参加していたDonald DavisがWikipediaによるディストリビューションの定義を引用して、この問題のスレッドを起こしたのだ。WikipediaはLinuxディストリビューションを「Linuxファミリー(Linuxカーネルと、カーネル以外の部分にGNUオペレーティング・システムを含み、その他さまざまなソフトウェアから構成されたUnix風オペレーティング・システムの全体)に属するオペレーティング・システム」と定義している。
メーリング・リストの大半は「ディストリビューション」という用語はLinuxの各フレーバーを指すという意見だ。たとえば、Red Hat、Slackware、Debian、openSUSEなどであり、これにはUbuntuも含まれるが、Linux限定だ。しかし、米国経済教育協議会のITディレクターShane Geigerの意見は違う。
この意見には賛成できませんね。FreeBSDやNetBSDやOpenBSD、それに今ではSolaris(現在は「フリーソフトウェア」)もディストリビューションだと思います。ディストリビューションという用語は、大概、別の言葉によって限定される形で使われます。「Linuxディストリビューション」という風にです。ディストリビューションという言葉は、元々、「フリーソフトウェアを集めてパッケージ化し、利用可能なシステムとして配布されたもの」という意味だったはずです。それは今でも変わっていないと思います。Linuxディストリビューションのことを話す際、用語を厳密に使わず、単に「ディストロ」と呼ぶ人もいます。もっとも、「ディストロ」(ディストリビューションの省略形)という言葉はLinuxコミュニティーが作ったのでしょうが。確かに「Linuxディストリビューション」を検索してみると、「FreeBSDディストリビューション」はもとより「Solarisディストリビューション」に比べてさえ多数のヒットがあります。しかし、Solarisの場合はフリーソフトウェア化されたのは最近のことですから、ディストリビューションと見なされるようになったのもつい最近からです。それに、こうした用語のヒット件数を比較する場合は利用者数の規模を考慮する必要があります。
BSDを含めるのは少々広げすぎだと思うが、そう言えなくもない。しかし、Solarisも含めるのは冒涜というものだ。こうした言語テロリストたちは、大胆不敵にも我々の用語をくすね取ろうとしている!
しかし、Geigerらメーリング・リストの若干名は降伏しようとせず、あくまでもディストリビューションという用語はLinuxに限定されないと主張して、次のように指摘した。BSDはBerkley Software Distributionの略語であり1970年代から使われている――これは先行使用にほかならない云々。う~む。ディストリビューションという言葉がLinuxコミュニティーの所有物でなかったことは認めざるを得ない。何と言っても、この用語が使われ始めてほぼ20年の間、Linuxは存在さえしていなかったのだ。かくして私は意見を翻し、反対陣営につくことにした。
何はともあれ、この議論から明らかになったことが2つある。一つは、コミュニティーの人間はほとんど何についてでも議論したがること。もう一つは、自分の見方を変えられるほど私には学ぶ力が残っているということ。たとえ、その知識が白熱した議論からしたたり落ちてくるものであったとしても。
さて、読者の皆さんはどう思われますか。「ディストリビューション」はLinuxに限る、あるいは、フリーソフトウェア・プラットフォームすべてを指す。どちらの定義が正しいとお思いでしょうか。