HP、AlphaServerの新規販売を打ち切り――OpenVMSアプリの行く末は? Itaniumプラットフォームへの移行をためらうユーザーも

 米国HPは、AlphaServerシステムの新規販売を今週末で打ち切る。これにより、OpenVMSに最適化されたハードウェア・プラットフォームが30年の歴史に終止符を打つことになる。しかし、HPが進めるOpenVMSの移行パスは、独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)のそれとは必ずしも一致しておらず、一部のユーザーは困難に直面する可能性がある。

 ある医療機関で主任システム管理者を務めるデビッド・ハロルド氏は、「われわれは多大な苦労を強いられることになる」と苦渋の表情で語る。この医療機関は、4台のAlphaServer(いずれも32プロセッサ・マシン)を使ってISVのサーナーが提供する医療アプリケーション「Millennium」をサポートしている。

 ハロルド氏によると、サーナーは、Itaniumベースのサーバで稼働するHP-UX(HPのUNIX OS)への移行を推奨しているという。しかし、同氏や他のITスタッフは、HP-UXに精通していないうえ、HP-UXに移行するには、データベースもOracle 9iからOracle 10gにアップグレードする必要がある。

 ハロルド氏は、「いかなる場合でも異なるプラットフォームへの移行がスムーズに進むとは考えられない」と落胆の色を隠さない。

 HPは、今週金曜日でAlphaサーバの新規販売が終了した後、顧客にはItaniumベースのIntegrityサーバ・ラインに切り替えるよう推奨する方針だ。

 一方、サーナーの主力アプリケーション・スイートの最新バージョンであるMillennium 2007は、HP-UXが稼働するIntegrityマシンに対応している。しかし同社は、OpenVMSが稼働するItaniumベースのシステムに自社のアプリケーションを移植する計画は持っていない(少なくとも現時点において)。

 サーナーのテクノロジー・アーキテクチャ担当シニア・バイスプレジデント、マイク・ニル氏は、AlphaベースOpenVMSシステムに対応するMillenniumのサポートは2012年まで継続され、おそらくその後も打ち切られることはないだろうと語る。同氏は、ItaniumベースのOpenVMSをサポートする可能性も排除していないが、実現するかどうかはあくまでも需要次第としている。

 ニル氏は、「今は、市場の動向に注視しており、需要が大きければ検討することになるだろう」としながらも、サポートするプラットフォームが増えるたびにコストが積み重なると付け加えた。さらに同氏は、「OpenVMSを使い続けるのが最良の選択ではないというのがサーナーの立場であると解釈されてもやむをえない」とも語っている。

 ある米国企業のOpenVMSシステム管理者で、サーナーのアプリケーションを管理しているデビッド・ダクテラ氏は、サーナーがHP-UX支持を決めたことにより、同社もOSの変更を余儀なくされたと語る。

 ダクテラ氏は、「サーナーがItaniumベースのVMSシステムのサポートを確約しないため、Itaniumシステムに移行できなかった」とし、AIXが稼働するIBMサーバにMillenniumを移行させることにしたという。

 HPのワールドワイド・パートナー・ビジネス・マネジャー、ビル・ヘンドリックス氏は、サーナーの計画がどうであれ、Itanium上でOpenVMSをサポートするという同社の方針が揺らぐことはないと強調する。

 しかし、HPとサーナーとのパートナー担当も務める同氏は、顧客ベースがOpenVMSに関するサーナーの判断を受け入れているとの見方を示している。「同社は、(OpenVMSを導入している)ユーザーにきちんと説明しており、ユーザーがサーナーの対応を問題視しているようには思えない」(ヘンドリックス氏)

 IDCによると、今なおおよそ15万台のAlphaベースのシステムが使用されているという。同社のアナリスト、ジーン・ボズマン氏は、多くのユーザーが今後も長期にわたって(平均7~8年程度)Alphaシステム使い続けると予想している。

 今週の金曜日以降、ユーザーは新しいAlphaServerを注文することができなくなるが、今後もこのシステムのほとんどのモデルは、比較的容易に入手できると見られている。HP自身も修理調整されたシステムを販売する予定であるほか、中古マシンの強力なアフター・マーケットも存在するからだ。

(パトリック・ティボドー/Computerworld オンライン米国版)

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