Googleの秘密──検索結果ランキングの“隠し味”に迫る──SEO専門家を悩ませるトップ検索エンジンの謎

 Googleのランキング・アルゴリズムには“隠し味”がある──こう指摘するSEO(検索エンジン最適化)の専門家は少なくない。検索結果の順位を左右する要素を洗い出し、顧客のサイトを上位にランクインさせるのが仕事の彼らでさえ、Googleにはまだわからないところが多いと口をそろえる。本稿では、Googleの最高機密とも言えるランキング・アルゴリズムに迫ってみたい。

 ランド・フィシュキン氏は、Googleでの検索結果の上位にランクインすることがいかに重要かを熟知している。だが、SEOベンダーの米国SEOmozで社長兼CEOを務める同氏でさえ、パネリストとして参加した「Search Engine Strategies Conference & Expo」で受けたオファーには意表を突かれた。

 それは、スパミングやクローキング、リンク・ファームといったブラックハット(汚い手法)を用いずに、純粋にホワイトハット(正攻法)だけで、ギャンブル・サイトをGoogle検索結果の上位にランクインさせることは可能か、というものだった。このオファーに対してフィシュキン氏は、他のマーケティング手法を駆使し、ある程度メディアの注目を集められれば可能だと答えた。

 フィシュキン氏の答えを聞いた他のパネリストらはあきれ顔で苦笑し、なかには「銃撃戦にナイフを持ち込んでも……」と同氏をたしなめる者さえいた。熾烈なSEOの世界でまともに勝負しても勝ち目はないと、そこに居ただれもが思ったのだ。

 だが、あるポーカー・サイトのオーナーはこの話に興味を引かれ、後日フィシュキン氏に接触を図ってきた。そのオーナーは、「もし正規のやり方で、 “online poker”や“gambling”のキーワードでGoogle検索のトップ5以内にランクインしてくれたら、あなたからそのサイトを1,000万ドルで買う」とフィシュキン氏に申し出た。

 フィシュキン氏は正直、このオファーに心を動かされた。だが、そのオーナーを信用しきれなかった同氏は、コンファレンスに参加していたギャンブル・サイトのオーナーたちに相談してみた。「もし本当にトップ5内にランクインできるなら、あと1,000万ドル上乗せしてもいいくらいだ」というのが彼らの答えだった。

だれもが認めるGoogleの影響力

 1 人の顧客から得られる収益は少なくとも1,000ドル──オンライン・ギャンブルの世界では、これが常識だ。“Texas Holdem Poker”の検索で164万件がヒットしたことを考えれば、ギャンブル・サイトのオーナーがGoogle検索ランキング・アルゴリズムのハッキングに数百万ドルを払ってもかまわないと考えるのも無理はない。Google検索で上位にランクインすることは、今でもオンライン・マーケティングの最高峰なのだ。

 競争が激しいオンライン・ビジネスにあって、Googleはサイト・オーナーと顧客の間に立ちはだかる手ごわい門番だ。「kinderstart.com」のように、意図的にランクを下げられたとしてGoogleを提訴したケースもあるが、今のところGoogleが敗訴したことはない。

 サイト・オーナーは、Googleのペイ・パー・クリック(1クリックごとに課金)プログラムである「AdSense」と「AdWords」に影響されないトラフィックにおいて、何とか検索結果の上位に食い込もうと必死だ。検索エンジン市場でシェア 47%を占め、月間30億の検索クエリがかけられるGoogleは、まさに検索エンジン界のキングなのである。

 「オンライン・マーケティングの最終目標は、おそらくGoogle検索でトップに君臨することだろう」と、検索エンジン・マーケティングとWebソリューションの世界的ベンダーである10e20 LLCの社長、クリス・ウィンフィールド氏は言う。「会社の業務を世間に知ってもらううえで、これ以上効率的な手段はほかにない」(同氏)

Googleが背負う責任

 競争の激しいWebの世界では詐欺まがいのブラックハットが横行しているが、そうしたサイトのほとんどはGoogleのスパム部門の厳しい監視下に置かれている。同部門は必要に応じて、だましの手口を判別してそのサイトのランキングを低くしたり、補助インデックスに渡して「優先度なし」に分類したりする。

 ただし、Googleによると、サイト側が問題点を突き止めて修正すれば、検索結果の候補に含まれるように元に戻すことは可能だという。今や、いかに合法的なやり方でGoogle検索の上位に食い込むかが、多くのWebサイトにとって最優先課題なのだ。

 Googleでの検索結果がWebの世界に及ぼす影響については、Googleも認めるところだ。そのうえで、「大きな影響力には大きな責任が伴う」ことを同社は認識している。

 Webサイトの価値を低くしたり省いたりする決定は、検索エンジンのアルゴリズムに委ねられている。したがって、Googleに批判的といった理由だけで、サイトが意図的にランクを下げられたりすることはない。同社の上級エンジニアで、サイト管理者コミュニティとの連絡役も務めるマット・カッツ氏は、「スパムと検索結果の品質、つまりサイトがわれわれの品質ガイドラインに沿っているかどうかについては、常に気を配っている」と強調する。

 とはいえ、Googleのランキング・ルールにいらいらさせられることも少なくない。ウィンフィールド氏は以前、「Googleに苦情を言ったことがある」と明かす。“translation services”を検索したところ、10件の結果のうち5件は同じWebサイトのもので、しかも翻訳(translation)とは何の関係もなかったからだ。「こういう結果を見ると、Googleのアルゴリズムに疑問を抱かざるをえない」と同氏は不満げだが、この問題をGoogleに問い合わせると、同社はすぐに回答をよこしたという。

 「Googleはユーザーの声に耳を傾けている。Googleの支配にはいらいらさせられるが、真剣に取り組んでいることは確かだ」(ウィンフィールド氏)

 ところが、そのあとで再度“translation services”を検索しても、10件のうち2件は以前と同じWebサイトのものだった。Googleのランキング・アルゴリズムには“隠し味”がある──ウィンフィールド氏はそう考えている。

隠し味の中身は?

 PageRankとは、サイトがWeb上でどれだけ重要かを数値で表した、Googleが登録商標を持つプロセスだ。しかし、これは調理法のごく一部でしかない。サイトの価値は、そのサイトへの各リンクにも置かれている。料理の世界のレシピと同様に、Googleの隠し味は、それぞれの材料がどれだけ使われているか、つまり各要素の「比重」で決まる。

 ランキング・アルゴリズムの主な要素や、検索結果の上位に食い込むためにマーケッターやサイト・オーナーが何をすべきかについては、Web上に掲載されている膨大な情報を参照すればよい。しかし、ランク付けの基準となる200もの要素に関しては、Googleは秘密にしたままだ。

 「もはや1つの答えはない。そうした要素の大部分は社外秘だ。セオリーを持っている人はたくさんいるが、そのセオリーをわれわれが確認することはない」(Googleのカッツ氏)

 カッツ氏はヒントとして、Webページのタイトルや見出し、さらにはURLにもキーワードを入れ、関連する単語を互いに近接して配置するようアドバイスする。また、ランクを上げる方法として、Googleのサイトに掲載されているヒントを参考にすることを勧める。

 だが、Googleが提示するヒントはわかりにくいとの声も多い。SEOマーケティング会社であるレッドアルケミの社長兼CEO、アトゥール・グプタ氏は、Google公認の正規テクニックを理解しているとしながらも、そこには曖昧な部分が数多く見受けられると指摘する。

 「例えば、『重要な情報がある古いページからのリンクは高く評価する』とあるものの、次の文では『最近更新されたページは新鮮な情報として高く評価する』となっている。では、Googleはどちらを優先するのか。これは自分で判断するしかない」(同氏)

ページ・リンクの不可解さ

 PageRankのアルゴリズムに使われる算式を熟知している数学者でさえ、数値以外の要素については苦闘している。このアルゴリズムに関する論文を発表したグランドバレー州立大学の数学教授、デビッド・オースチン氏によると、Googleの隠し味は、人気コンテストの優勝者を決める方法を線形代数学で表現したものだという。

 「コンテストの優勝者を決めるにあたり、審査員全員が1票を持っているとする。ただし、その1票を分割するのもありだ。つまり、10人に投票したら、10分の1票を1人ずつに投じたことになる」(オースチン氏)

 もっとも、これで票を集計すれば優勝者が決まる、というわけではない。Googleは、さらにその先を行く。「だれがだれに投票したのかを調べるのだ」と同氏。Googleは、票を投じる、つまりサイトにリンクするサイトの重要性にも価値を割り当てる。これにより、サイトは自身の人気と重要性をリンク先のサイトに渡すことができるわけだ。

 レッドアルケミのグプタ氏は、単純に最上位のサイトが何をしているかを見ることで、RageRankのアルゴリズムを解明しようと考えている。「サイトをランク付けする基準として、Googleが250のパラメータを用いていることまではわかった。われわれの研究所には各パラメータの重要度を常時監視するチームがあるが、サイトを自然な方法で上位に持ってくるにはどうすればいいか、そこが悩みどころだ」(同氏)

コラム:変化するアルゴリズム

 Googleのランキング・アルゴリズムは不変ではない。Googleは時々アルゴリズムを変えている。そのため、検索結果の上位に食い込もうと必死になっているサイト・オーナーの怒りを買っている。

 「Googleはこういったトリックを仕掛けるのが好きだ」と、レッドアルケミの社長兼CEO、アトゥール・グプタ氏は苦笑する。同氏によると、クリスマスの15日前にアルゴリズムが変わるといったことも過去にあったという。

 アルゴリズムが変わると、売上げの多くを検索ユーザーに頼っているオンライン企業は、突如としてSEOをゼロから練り直す必要に迫られる。「サイト・オーナーは過去に何度もこういう目に遭っているのでうんざりしている。だが、サイトを正攻法で作っていれば焦らずに済む」(同氏)

 またGoogleは、サイトの価値基準をリンク以外の方法で決めることも考えており、その1つとしてユーザーの振る舞いに関する研究を始めている。いわば、ユーザーがとった行動をサイトの価値基準に反映させるわけだ。こうした情報はいくつかの方法によって収集される。

 「Google Toolbar」をインストールしているユーザーは、情報の一部がキャプチャされてGoogleに送られることに同意している。例えば、ユーザーが検索結果の 3番目のリンクをクリックした場合、そのユーザーが1番目や2番目のリンクでなく3番目に興味があったことが記録される。

 さらに、ユーザーが特定のページでどれだけの時間を過ごしたかも記録される。ユーザーがサイトを再訪問した場合も同様で、記録の対象となる。

 トラフィックの過半数が米国外から届くことから、地域ごとにパーソナライズド・コンテンツを提供するというのも、Googleが掲げている目標だ。英国のユーザーが“football”と入力したときには、NFLではなくサッカーの情報を表示するといった具合である。

 ただし、これだと検索結果が以前とは異なるケースも出てくる。「以前は“football”でトップ表示されたのに、新しいアルゴリズムの下ではそうでなくなる可能性もある。そうした変更を不満に思うユーザーから苦情の電子メールが殺到するかもしれない」と、Googleの上級エンジニア、マット・カッツ氏は心配している。

創造性と豊富な情報がサイトの価値を押し上げる

 Googleのカッツ氏は、検索結果の上位にランクインするWebサイトを作るのはとても簡単だと言う。「目をくぎづけにする、あるいは読み手がブックマークを付けたがるようなコンテンツを作成すればよい」と、同氏は当たり前のことを強調する。

 例として、カッツ氏は2つの英和翻訳サイトを挙げた。一方のサイトはまるで小冊子のようで、4〜5ページしかない。もう一方のサイトは、英語の氏名を日本語に訳す方法や日本のさまざまな方言について紹介しており、こちらのほうが上位にランクインするはずだと同氏。「人々をつなぎとめるのは創造性と豊富な情報なのだ。このような魅力的なコンテンツこそ、Google検索でのランキングを高める秘訣だ」(同氏)

 音響装置とコンサルティング/デザイン・サービスを事業としているプロ・アコースティクスUSAは、Googleのガイドラインに従い、レッドアルケミの協力を得て、より上位にランキングされるようWebサイトを作り直したところ、過去4年間でアクセス数が毎年2倍ずつ増えたという。

 同社の社長兼CEO、エメリー・ケルテス氏は、上位ランクを獲得するためには、titleタグやmetaタグを含めて関連情報を正しく設定することが必要だと力説する。

 同氏のサイトは、カテゴリー内でほぼ常時トップ10以内にランクされている。だが、今のランキングに満足しているわけではない。「満足している人などだれもいない。順位は高ければ高いほど良い。どこの会社も、順位を上げて収入に結び付けようと必死なのだ」と同氏は話す。

 ところで、Google検索結果のトップ5以内にランクインするポーカー・サイトを開発すれば1,000万ドルを支払うというオファーの件だが、フィシュキン氏は「まだ様子見の段階だ」と慎重だ。

 「開発にかかる手間と時間を考えると、ほかの多くのプロジェクトや顧客を見捨てることになりかねないし、そこまでしてもトップ5にランクインできるかどうかの保証はない。おそらく、このオファーは断ることになるだろう」(同氏)

コラム:Googleが科すペナルティ

 ブラックハットのサイトに対するGoogleのペナルティを熟知しているSEOの専門家は、ばかげたやり方でランクを上げても、Googleの目をかいくぐることはできないと指摘する。

 Googleがサイトを評価する際に重視するのは、ユニークなコンテンツだ。大量のコンテンツを掲載し、頻繁に更新することも勧めている。そのほかの重要な要素としては、タイトルと本文にキーワードを含めること、リンク先のページに外部リンクを張ること、およびその分野におけるサイトのリンク人気度がある。

 SEOmozの社長兼CEO、ランド・フィシュキン氏によると、Webサイトへのリンクの価値に最も影響を与える要素は、リンクのアンカー・テキスト、リンク先ページへの外部リンク、およびリンクされているサイトの世界的な人気度だという。また、「.edu」や「.gov」、「.mil」といったドメイン拡張子は、「.com」や「.net」よりもウェイトが高い。

 一方、Googleが評価を下げたり、ペナルティを科したりする手法は次のとおりだ。

  • キーワード・スパム:関連性があると思わせるため、キーワードをスタッフィング/スタッキングしたり、過剰に使ったりすること
  • リンク・ファーム:サイトへの無関係なリンクを多用すること
  • サイトのクローキング:Googleのクローラに、まったく異なるサイトを認識させるようサイトを作成すること
  • サイト内の隠し文字:背景に白のフォントを使うことなど
  • 重複コンテンツ:サイトに重複コンテンツが多すぎること
  • 過剰に最適化したサイトや、過度にマークアップしたコンテンツ:クローラに見出しのテキストを重要だと判断させるよう、本文の代わりにたくさんの見出しを入れること

 では、こうした手口に対し、Googleはどのようなペナルティを科すのか。レッドアルケミの社長兼CEO、アトゥール・グプタ氏によると、通常はランクを大幅に下げられるという。「検索結果の1ページ目にランクインしていたものが、10ページ以降に順位を下げられることが多い」と同氏は話す。

 あるいは、補助インデックス、つまりGoogleが優先度なしと判断したインデックスに当該サイトが置かれることもある。Googleによれば、その場合はWebサイトの注目度がぐんと低くなるが、Googleのガイドラインに沿って修正すれば、再申請も可能だという。

(ステーシー・コレット/Computerworld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp