Kino、1.0のままメンテナンス・モードへ

 数週間前、ビデオ・エディターKinoがついに1.0に到達した。普通なら、これはアプリケーションの開発が新たな段階を迎えたことを告げる喜ぶべき出来事だ。しかし、過去1年以上にわたりKinoの機能面の開発に携わってきた開発者Dan Dennedyは、誰かがKinoを受け継がない限り次のメジャー・リリースに向けた作業は「少なくとも今後1年間」はないと述べた。その一方で、KDE向けノンリニア・ビデオ・エディターkdenliveには期待を寄せているという。

 Dennedyによると、Kinoは最小メンテナンス・モードに入る。「2年以上も前からアーキテクチャー・フリーズ状態にありましたから、当時からメンテナンス・モードだったとも言えます。しかし、機能については一通りのものを揃えるようにしてきましたし、アーキテクチャーによる制約の範囲内で足りないところを補ってきました。今後は、すべての機能をフリーズし、最重要なバグについてのみ対応することになります」

 Kinoの開発が始まったのは2000年の終わり頃で、Arne Schirmacherが立ち上げた。しばらくはほかの開発者たちも参加していたが、やがてプロジェクトから去っていった。しかし、Dennedyには思い当たる節はないという。「彼らが出て行くような論争とか対立とかはありませんでした。生活の上でほかに優先すべきことがあったのか――あるいは、何かあって関心が薄れてしまったのか」

Kinoはどうなる?

 機能がフリーズされたため、利用者が現実に使っているバージョンに沿った解説書やスクリーンショットが増えるだろうとDennedyは言う。「(Kinoには)多くの利用者が考えている以上にたくさんの機能があります。利用者にとって、こうした状況はまだ知らない機能を発見するよい機会になるでしょう。それに、翻訳も進むでしょうから、非英語圏の利用者にとってもよいことです」

 DennedyはKinoが備える多くの機能に満足していると言う。たとえば、キャプチャー・モードではデジタル・ビデオ・カメラの映像を簡単に取り込むことができる。また、編集のトリム・モードには「とても満足」しているそうだ。「クリップをプレビューして組み合わせ、3点挿入編集を行うことができますからね。ほとんどの利用者は使っていないでしょうから、この機能を紹介する説明用のスクリーンショットを作ろうと思っています」

 また、今回blip.tvに対応したので、Dennedy自身も、さらに多くのビデオを編集し投稿したいとも言う。

 Kinoが備える多くの機能に満足していると述べるDennedyだが、すべての利用者にとって十分だとは考えていない。今回のリリースに当たって次のように述べている。「まだ十分ではありません。編集可能な効果の付いたマルチトラック・タイムラインが必要です」。しかし、そうした機能があればとは言いつつも、「Kinoはそれができるようにはデザインされていません。デザインやアーキテクチャーについてはほとんど考慮されておらず、それが機能を制約しているのです」と述べた。

 そして、要望されている機能をいくつか追加しようとすれば「ほぼ完全な書き直し」が必要になると言う。

 「ユーザー・インタフェースにマルチトラック・タイムラインを追加するなら、……そうしたトラックをプロジェクト・ファイルの部品として保存したり、プレレンダリングせずに再生中にビデオを合成したりオーディオをミックスしたりするといったこともできなければなりません。それは今のアーキテクチャーでは不可能なのです。アーキテクチャーを多少壊すからというのではなく、アーキテクチャーが存在しないからなのです」

 Dennedyとしては、Kinoを改修する代わりに、別のプロジェクトに取り組みたいと言う。「(Kinoを標準レベルに引き上げるには)新しいコードを書く必要があります。しかし、Kinoを共同で開発してきたCharlie Yatesと私は、そのコードをMLTというプロジェクトですでに書いています。それに合わせてKinoを改造するとすれば作業は広範に及び、全面的な書き直しに近いものになるでしょう。MLTのもう一つのUI――kdenlive――が大きく進展しており、その開発者と協力できる今、そうする理由があるでしょうか」

 MLTはテレビ放送のための「オープンソース・マルチメディア・フレームワーク」を謳っており、ビデオの編集・コード変換・放送などのためのツールキットを提供する。

 kdenliveは「条件によっては」プロ品質のエディターになりうる能力を持っているが、第一級のプロプライエタリ・パッケージに追いつくには長い時間がかかるだろう――そして対価がない限りプロ向けにものを作ることに関心はないとDennedyは言う。

 「私が主としてこうした仕事をしているのは、責任をとやかく言われないプロジェクトで(利用者を含む)ほかの人たちとコラボレートしたいから――純粋に何かを作る楽しみからなのです。皆さんが使ってくれるのが嬉しいし、喜びや満足感が得られるでしょうし、フィードバックで作品を磨き上げることもできます」

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