LinuxWorld New York:親密な雰囲気で有用な情報を収集できる小規模なイベント(ビデオクリップ付)

IDGがアメリカ東海岸で開催するLinuxコンファレンスは、LinuxWorld OpenSolutions Summit(LWOSS)という正式名称に改められた。その最初の催しとなる2007年度コンファレンスは先の2月14日から15日にかけて開催されたが、その会場は大規模なコンベンションセンタの類ではなく、マンハッタンのマリオット・マーキス・ホテルにある会議施設が利用されている。このコンファレンスの様子であるが、厳めしい名称とは裏腹に“かわいらしい”という表現がよく似合う非常に小振りなイベントであった。だが“小さいことはいいことだ”という格言もあるように、確かに規模としてはボストンやニューヨークで開催された大会の方が大きかったことに間違いはないが、今回のLWOSSのように600名程度で収まる小振りなコンファレンスには、より親密な雰囲気の中でより多くの有用な情報を収集できるというメリットがある。

今回のコンファレンスを展示会としての内容から見ると、基本的にビジネス志向の強いものであった。例えばプレゼンテーションの内容も、オープンソース(およびLinux)を既に活用している企業、オープンソース(およびLinux)の運用規模を拡大しようと計画している企業、オープンソース(およびLinux)を小規模ながらも将来的に導入することを検討している企業が主なターゲットとされていた。逆に言えば、マネージメントやマーケッティングの職に就いた人間を除き、コンピュータマニア向けの展示会ではないとも表現できる。

オープンソース(およびLinux)に関連した製品やサービスについてのアナウンスも、今回のLWOSSではそれほど多くなかった。またHPによる講演では新型Itaniumブレードサーバが紹介されていたが、これは新たに標準化されたClass Cシャーシを用いており、Itanium化されたシャーシを別途必要としないとのことである。同じくIBMによる講演では、こまごまとしたLinuxデスクトップスイートを(ひっそりと)紹介する一方で、いろいろと悪名高いOpen Solutions Alliance(OSA)をアナウンスするパネルも当然のことながら設けられていた。

OSAパネルの終了後、私はOSAの設立企業の1つであるCollabNetの創業者にてCEOを務めるBrian Behlendorf氏に、インタビューをすることができた。

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その他の人々のコメントを収めたビデオ

今回のコンファレンスに出席者が少なかった理由の1つは、ニューヨーク周辺の天候が非常に悪かったこともあるだろう。その点私は幸運に恵まれていたようで、フロリダ州タンパからの航空便は雪が降り出す前に到着し、金曜日の朝も吹雪が治まってから出発することができた。もっとも金曜日当日のガーディア空港は、前日ないし前々日から足止めを食らっている乗客たちで混雑の極みにあったが、デルタ航空や運輸保安局の職員たちが、多少強引とも取られかねない態度ながらも搭乗待ちの列をさばいてくれたおかげで、乗客のほとんどは時間通りに搭乗することができた。私たち乗客側が多少不快な思いをさせられたことは事実であるが、それは最小限のもので済んだし、空港関係者たちも混乱して疲れていたことであろう点を割り引けば、そのお手並みは称賛に値する見事なものだったと評していいだろう。

今回むしろ手こずらされたのは、現地近郊での移動であった。例えばLinux MagazineのコラムニストであるJason Perlow氏などは、LWOSS初日に会場にたどり着くことを断念し、2日目にようやく到着できたくらいだ。もっとも同氏の感想によると、ニュージャージーにある自宅からニューヨーク市までたどり着くのは難儀したが、それだけの苦労をして出席した甲斐はあったとのことである。以下は、同氏のコメントを収めたビデオである。

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展示会としての規模が小さかったのは確かだが、だからといって参加したベンダたちを失望させたという訳でもない。EmperorLinuxのCEOを務めるLincoln Durey氏が私に語ってくれたように、彼らのブースも小振りなものであったが、より規模の大きかったLinuxWorldの時よりも多数の来訪者を得ることができたそうだ。またLWOSSを訪れた参加者に対する手応えとしては、関連アイテムのコレクタや見物目的の客ではなく、実際の購入意欲を持った人々であるという感触を得たと説明している。

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演者を務めた1人であるRuss Pavlicek氏によると、コンファレンスに参加した人たちの様子には好感が持てたが、それは集まった数の問題ではなく(同氏の担当したセッションそのものは人気が高かった)、「目的意識を持って参加した人々だったからです」とのことである。ところで、ビデオに収めたRuss氏の背後にテーブル席が並んでいる様子が分かるだろうか(リンクは下記)。これらはホテルの展示会場に備え付けの座席であるが、今回はこの施設が割り当てられていたおかげで、参加者同士がくつろいだ雰囲気で自由な歓談を楽しむことができたのである。この場所は、人脈を作るにしろ、単なる世間話をするにしろ、落ち着いた気分で会話をするのに、まさにうってつけの環境であった。こうした目的で利用できる区画は、他のコンファレンスや見本市でも用意されていて然るべきではないだろうか。この種のコンファレンスに参加する大きなメリットの1つは、数年来の付き合いであるのに電子メールでしか面識がなかったという人たちと実際に膝を突き合わせて言葉を交わせる機会を得られることのはずなのだが、たいていのコンファレンス会場にはそのための場が設けられていないのである。

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Ubuntuのオフィシャルスポンサを務めるCanonicalも今回小さなブースを出展していたが、同社の重鎮であるMalcolm Yates氏の説明によると、彼らのブースも来訪者で終日混雑していたそうだ。スポンサー兼出展者としては冥利に尽きる、といったところだろう。

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基調講演の収録ビデオ

LWOSSの主催者であるIDGからは、基調講演を収めたビデオが公開されている。Flash 8ないし9を使える環境からアクセスすれば、Bruce Schneier氏、NovellのCIOを務めるDebra Anderson氏、AMDのRandy Allen氏の講演内容をオンラインで再生できるが、これらの配信はNetworkWorld.comの好意によるものである(NetworkWorld.comもIDGの傘下にある)。

今回のコンファレンスに対するマスコミの注目ぶりは極めて小さかったが、その原因はLinuxをテーマとした小規模な展示会であったということ以上に、天候に恵まれなかったためであろう。例えばeWeekの執筆者兼エディタとしてその名を知られるSteven J. Vaughan-Nichols氏などは、ノースカロライナの自宅からニューヨークに赴こうとしたところ、フライトがキャンセルされたため断念したとのことである。

このように、小規模な展示会であって世間一般の注目もさほど集まらなかったという不利な条件に置かれていた割には、私がインタビューした参加者のほとんどが今回のコンファレンスは成功したと感じていたようであった。同様の感想を主催者であるIDGも抱いていることを、私としては願う次第である。これは私の個人的な意見だが、“ナショナル”レベルのコンファレンスは例年1回サンフランシスコで開かれるLinuxWorldがあれば充分であると思っているし、今回のような参加者同士が親密な交流をできる場をより頻繁かつ多数の場所で設けるようにすれば、Linux/FOSS系ベンダのメリットになることはもとより、これからLinuxないしFOSSを導入したり既存のIT環境におけるFOSS化を促進する方法を模索している多くの人々や企業にとっても大いに役立つと考えているからだ。

例えば、マイアミ、アトランタ、ダラス、セントルイス、シカゴなどは、ローカルなLWOSSイベントの開催地として最適な立地条件を備えているのではなかろうか。もっとも、これらの都市やFOSS系イベントの未開催地域においてコンファレンスを開くという発想にIDGが思い至らなかったとしても、おそらく今後は地元の起業家ないし非営利団体などが独自の開催をするようになっていくであろう。

FOSSがメインストリームとして通用するようになった今日、今回のような親密な雰囲気で有用な情報を提供するというタイプの小振りなコンファレンスの方が、これまで行われてきた年に数回しか開催されない重厚長大なコンベンションよりも、FOSSの推進イベントとしてはより適する形態になってきたと言えるだろう。もちろんローカルなコンファレンスという形態が普及するには、IDGその他の主催者がそれなりの収益を得られる(非営利目的の場合でも収支がトントンになる)ことが前提となるはずだが、今回のLWOSSニューヨーク大会において、主催者であるIDGが商用ベースという観点から(不可欠な)今後の再開催を検討するに足るだけの黒字を出せたのかについて、残念ながら確かなことを言えるだけの情報を私は得ていない。

NewsForge.com 原文