FSGとOSDLが合併し、Linux Foundationへ
FSGはGNU/Linuxオペレーティング・システムの分断化を防ぐために定められた技術仕様Linux Standards Base(LSB)で知られるが、このところコミュニティー間の協力促進にも積極的だった。一連のサミット会議や現在も活動中の作業グループ――印刷を扱うものやパッケージ・システムとサードパーティー・インストーラーとの間のインタフェースとなるAPIの開発を扱うものなど――にも取り組んでいた。
同様に、OSDLもエンタープライズ・レベルとデスクトップ・レベルでコミュニティー間の協力を推進してきた。さらに、Linux Legal Defense FundやPatents Commons Projectを通じて、会員に対する公共的な法的支援に乗り出してもいた。この活動は、Linus Torvaldsら、カーネル開発者に対する支援でよく知られている。
新設されるLinux Foundationには、Hewlett-Packard、IBM、Intel、Novell、Oracle、Red Hatなど、オープンソース開発に関わる事実上すべての大手企業が資金を提供する。
FSGとOSDLは、活動についても会員についても相当程度の重複がある。実際、Zemlinは両団体が機能的に「相補的」な関係にあるとし、今回の合併により活動の重複がなくなるという。「FSGの会員は、個人にしろ企業にしろ、その多くがOSDLにも加入しています。両団体の活動を見れば分かりますが、両方合わせると市場競争に必要なサービスが丁度揃います」
Zemlinによると、合併理由はもう一つある。「ここ数年間両団体が行ってきた活動の多くは、ピークを過ぎています。スラムダンクとしての役割を果たしたオープンソース普及活動は浸透しました。今では、エンタープライズ・オペレーティング・システムの本命はLinuxだと誰もが考えています。ですから、今、人々が両団体に期待するのは、その次の段階なのです」
Zemlinは、次は共存環境――Zemlinの言い方では「複占」――になるという。コンピュータ市場はGNU/LinuxとWindowsの争いになるというのだ。
この環境で生き残るには、オープンソース・ソフトウェアは独自の特性を維持しつつ、Microsoftと同じ土俵で競う必要があるとZemlinは考えている。「Microsoftにも、敬意を表すべき点があります。自社製品の営業に巧みであること。プラットフォームをしっかり守っていること。誰もが入手可能で認定されたWindows標準があること。私たちも同じことをする必要があります。もちろん、Microsoft流ではありません。みんなのもの、みんなが競い合うためのものです」
GNU/Linuxを守り広げ標準化するために、Linux Foundationは「会員を代表する中立的な広報担当」であるべきだとZemlinは考えている。「このプラットフォームが、一企業の製品を売るためのものにならないように」
Linux Foundationがそうした役割を担うことを望むZemlinだが、独立した広報担当であることの難しさ、おそらくはその資質に欠けていることを認めている。「彼らは自分について語るのが信じられないほど上手ですから」
Linux Foundationは、45名程度の常勤スタッフによりオレゴン州ポートランドにある現OSDL本部で活動を開始する。さらに、サンフランシスコとインディアナにも人員を配置し、モスクワには開発センターを置く。
Zemlinによると、当面、余剰人員をレイオフする計画はなく、既存プロジェクトやSoftware Freedom Law Centerといった関連団体との関係を止める予定もない。既存プロジェクトは「Linuxディストリビューションのリビジョン・サイクルと緊密に連動しているため、現在の日程で進め」、FSGがこれまで取り組んでいなかった問題があれば、今後数週間以内に洗い出すという。
今回の発表に対し、Gartner GroupのアナリストGeorge Weissは慎重な姿勢を見せている。「不明な点がまだたくさんありますが、波及効果や市場への影響力は大きいでしょう。私はそう思います。指導力、実行力、マーケティング力もあるでしょう」
しかし、Linux Foundationがそうした力を発揮できるかどうかについては、肯定も否定もしなかった。「Jim Zemlinについては大いに信頼しています。前任者たちに比べLSBの運営に優れていました。非常に込み入った試みではありましたが」
しかし、OSDLのこれまでの実績については懐疑的だ。「オープンソース・コミュニティーの透明化と、近づきやすさを改善して欲しいですね。オープンソース・コミュニティーなのですから、できるだけオープンにしてもらいたい」
また、Linux Foundationが実効性を示すための持ち時間には限りがあると指摘する。理想的には「数か月以内に目的や使命を極めて具体的な形で示すこと。組織の概要や優先順位などを明らかにすべきです。そして、達成目標がいつ決まるか。目的公表から12~15か月経っても達成目標が明らかにされず、彼らが蛸壺に入ってしまったら、忘れてしまった方がいいでしょう」
Linux Foundationが自身の存在意義を明らかにする必要がある点については、Zemlinも承知している。「Linuxには革新的――アーキテクチャーの質が高くセキュリティーも高水準――というイメージがあります。しかし、技術に関わらない革新も多くあります。たとえば、ライセンス・モデルや配布モデルがそうです。Linux Foundationは、普通は思いつかないような分野でも改革を進めることでしょう。たとえば、標準の設定、公共的な法的防衛法、公共的な販売促進法。いずれも興味深く革新的で、来るべき新しい成長段階において私たちのプラットフォームが競争力を維持する役に立つでしょう。本当に楽しみです。私は、そうしたことに参加できるのを誇りに思います」
Bruce Byfield、コンピュータ・ジャーナリスト。NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。
NewsForge.com 原文