Linuxデスクトップ・アーキテクトたちが2007年の計画を立案

OSDL(Open Source Development Labs) 主催の 第3回 DAM(デスクトップ・アーキテクチャ会議) が米オレゴン州ポートランドで先週開催され、 Linuxデスクトップの開発を今後どのように進めていくのかについての議論が交わされた。 今回のDAM3にはHewlett-Packard社、X.org、Red Hat社、Nokia社、Intel社、 OpenWengo、AMD社、Xandros社、 Linuxprinting.org など多数の組織から40名を超える開発者が参加した。

われわれ編集部ではDAM3に出席し直接的にDAM3の様子をレポートすることを希望したが、 記者が出席しているとあらゆる情報が公になってしまう可能性があると参加者が懸念しているという理由で、 DAM3への記者の出席はOSDLから許可が下りなかった。 そこで代わりにわれわれは、 OSDL DTL(デスクトップLinux)ワーキンググループのイニシアティブマネージャのJohn Cherry氏、 Linux Terminal Server ProjectのJim McQuillan氏、 OpenWengoプロジェクトのDave Neary氏の3氏に話を伺うことにした。

ひどいサウンドシステムの修正

DAM3で持ち上がった優先順位の高い課題の一つは、 Linuxデスクトップ上でのサウンドシステムの修正だ。 現状のLinuxデスクトップのサウンドシステムと言えば、 ひどい状態なのであるが、 ここに来てとうとう開発者たちは、 この混乱状態に手を入れる気になったということのようだ。 McQuillan氏によると 「これまでのDAM3の最も重要な成果は、 音声/マルチメディアシステムの仕様を落ち着かせ 単一で安定したAPIを採用する必要があるということに関して 会議に参加した開発者の意見が一致したということです」とのことだ。

なお、ここでまったく一から始めるということではない。 McQuillan氏によると、計画では、 既存のAPIを基に始め「足りない部分を付け足していく」ようになるだろうとのことだ。

さらにMcQuillan氏は 「あることを行なうAPIの選択肢は無数にあるのに それとはまた別のあることを行なうAPIは存在しない などというような状態で、 ISV(独立系ソフトウェアベンダ)やISD(独立系ソフトウェア開発者)を 混乱させてしまうようではダメなのです。 うまく設計されたAPIがただ一つだけ存在するという状態にすることが必要なのです」 とも述べた。

今現在、そのようなただ一つのAPIがどのようなものになるのかということに関しては 確定しているわけではない。 今現在の計画では、 春までに音声関連の問題だけに限定した別の会議を開くということだけが確定している。 Neary氏によると 「Helix、OpenWengo、Audacity、MPlayer、Xineのようなアプリケーションを書く人たちと、 GStreamer、Phonon、PulseAudio、JACK、PortAudioのようなフレームワークを書く人たち、 そしてALSA、OSSのようにサウンドカードを扱う低レベル部分を担当する人たちを一同に集めた上で、 サウンドAPIが行なうべきことを決定する必要があります」とのことだ。

Neary氏はまた、 「近い将来」にメーリングリストを立ち上げる予定になっており、 「一年以内にはサウンドを取り巻く状況の改善」を期待していると付け加えた。

今回DAM3では、コーデックやデジタル著作権管理についての議論もあったとのことだが、 Cherry氏によると「これらのテーマは概ね非技術的な問題ですから、 あまり進展はありませんでした」とのことだ。

優先順位の高いその他の課題

サウンド関連の問題を解決へ向けて進展させたというだけでも、 おそらく多くのLinuxユーザが今回のDAM3は大成功だったという評価をするだろう。 けれどもDAM3に参加したデスクトップ開発者らはそれだけにとどまらず、 2007年における優先順位の高い課題をさらにいくつか掲げている。

Neary氏によると、DAM3ではパッケージングについての問題も議論に上ったとのことだ。 「パッケージングの問題も何度も話題になりました。 というのも現在、 ディストリビューションに含まれないアプリケーションを書くISDが パッケージングに苦労しているというのです。 つまり、.debと .rpmを作成すればそれで良しとするのか、 あるいはDebian、Ubuntu、Fedora Core(4、5、6)、RHEL(4、5)、 SLED 10、Mandriva、OpenSolaris… などのために多くの異なるパッケージを作る(さらにその後、保守をする)必要があるのかという問題です」。

Neary氏はまた、 ハードウェアのサポートの改善も「優先順位リストのトップ付近」に位置するのだという。 Neary氏によると「今現在は、 ハードウェアメーカにLinuxカーネル用ドライバを書くように説得するのは難しいことです。 しかもここでまたパッケージングについての問題もあるのです。 ハードウェアメーカはどのディストリビューション用にドライバを書けばいいのでしょう? そして、どのバージョンのカーネル向けに? そもそもしばしば議論になるようなライセンスの問題以前の問題として、 これらの問題があるわけです。 たとえ仮にドライバのモジュールをGPLでリリースして、 しかもそれがメインラインカーネルに統合されたとしても、 それでもなお、最新のメインラインカーネルと、 ユーザの手元にあるディストリビューションに含まれているカーネルとの間にはタイムラグ があり、大きな問題となるのです」とのことだ。

さらにDAM3では、 手元のハードウェアプラットフォームが今現在のLinuxですでに サポートされているかどうかの判別に使用することのできる ブータブルCDというプロジェクトについても検討された。 Cherry氏の説明によると、 このブータブルCDをブートすると Linux上でそのハードウェアプラットフォームの各デバイスがサポートされているかどうかを調査して そのハードウェアプラットフォーム全体のLinux上での対応状況を測定することができるので、 「意思決定者」が使うと便利なキットになるとのことだ。

Portlandプロジェクト

Portlandプロジェクト も進行中だ。 Cherry氏によると Portland 1.01のリリースが1月に、そして Portland 1.1のリリースが4月に予定されている。 そしてこれらのリリースには Xdg-utilsのアップデートが含まれるはずだ。

さらにCherry氏によると、 その後2007年中にPortland 1.5がリリースされる予定になっている。 そしてPortland 1.5には、 複数のデスクトップ間で共通のX.orgの設定を管理しやすくするXsettingsが含まれる予定だ。 なおOSDLによるDAM3概括文書によると、 Portland 1.5は7月までにはリリースされる予定となっている。

デスクトップ開発者たちはまた、 Portland 2.0までに間に合わせる目標で、 どのアプリケーションからも使用することのできる 共通の印刷ダイアログの作成に取り掛かっている。 現状では 多くのアプリケーションが独自の印刷ダイアログを使用しており、 それぞれのアプリケーションによって プリンタの機能のすべてを利用できたりできなかったりしている。 Cherry氏によるとLinuxデスクトップ用の開発を新たに行なおうとしているISVは、 プリンタが持つ先進的な機能をアプリケーションが利用できるようにするために KDE / GNOME上で利用できる統一的なサービスを求めているとのことだ。

2007年は会議数を削減

DAM3のように直接会うという形での会議は有益でもあるが、 毎年DAM以外の開発者会議にもすでに多く参加している忙しいFOSS開発者にとっては そのような形での会議は重荷でもある。 そのためCherry氏によると、2007年には会議の回数を一回だけに削減することを考えているとのことだ。 さらに開発者の移動時間を節約できるように、 別のイベントと抱き合わせて同時開催する形にしたいとしている。 どのイベントと同時開催するのかはまだ未決定だが、 Cherry氏によると4回目のDAMは2007年第4四半期に 「大きなイベントのどれか」と同時開催されるだろうとのことだ。

けれども、たとえかなりの移動時間が必要になるとしても、 McQuillan氏に言わせるとDAMには時間をかけても参加するだけの価値があるとのことだ。 「DAM3のミーティングは、 一人で机に向かっているときには忘れてしまいがちな コラボレーションの精神を思い起こす助けになります。 現に、 DAM初日の前夜に参加者同士が知り合うためのレセプションがあり、 私は短い時間参加しただけなのですが、 gconfやdbusなど私たちにとって重要な事柄に取り組んでいる人たちと お近づきになることができました。 そのことだけでも時間をかけてやって来た甲斐があったというものです」。

NewsForge.com 原文