Microsoftは我々の愛を心から欲している

Microsoftに招かれて12月7~9日の3日間をシアトルで過ごした。フロリダからの飛行機代はもちろん、豪華な食事付きのすばらしいホテルの代金もMicrosoftが負担してくれた。今回、私を含む5人が無料招待されたのは、Vistaをはじめとする最近または今後のMicrosoft製品のすばらしさをプレゼンテーションによって披露する「特別カンファレンス」だった。Microsoftの人たちは懐かしいビートルズの名曲「Love Me Do」をBGMに流したりはしなかったが、そのタイトルがこのイベントのテーマを象徴していた。また、思いがけずMicrosoftからZuneを頂いたので、ZuneにLinuxを載せるかLinux PCとデータをやりとりできるユーティリティを作りたいという開発者に提供したいと考えている。

歓迎の夕食会では、食前酒が出てくる前にひと仕事しようと、このイベントを企画したNick White氏(名刺によれば、Windowsマーケティング広報部のプロダクトマネージャ)に、あなた方のCEO(最高経営責任者)はことあるごとに他のLinuxユーザや私に対して詳細不明な特許の侵害で訴えるぞと脅しているというのに、私がどうしてそんな会社を信用できるでしょうか、と問いかけてみた。

Nickはこう答えた。「それは昔のことだよ。我々は事態を前に進めようと努力している」

私は「さきほど話したのは、つい1、2週間前のSteve Ballmer氏のコメントのことなのですが」と返した。

すると彼は「さあ、それについては何もコメントできないな。私はプロダクトマーケティングに携わる人間だからね」と答えた。

厄介な質問をするといつもこの類の答えが返ってくる。GroklawのPamela Jones氏も、何度かそうした発言をしていた。私が出会ったMicrosoftの人々は誰も、Novellとの提携、Open Document Format(ODF)のサポート、法的なソフトウェアライセンスとしてのGNU General Public License(GPL)の受け入れ、VistaにDRMを組み込むことでどれだけユーザの怒りを買うか、といった読者の皆さんが関心を寄せそうな話題については一言も触れなかった。

いや、前文については少し訂正させていただきたい。というのも、Zuneのマーケティング担当者Tyler Welch氏は、映画および音楽会社の言い分を聞き入れてオンラインデバイス向けコンテンツを販売してもらうことと、消費者が求める制限のない利用とコピーの自由を与えることの間に微妙なバランスがあることを理解しているようだった。Welch氏は態度を一転させたり、予め用意された宣伝文句で応じたりすることなく、こうした立場の異なる支持者どうしの対立は容易には解決できないこと、この問題は時間をかけてじっくりと取り組む必要があることを彼は認めていたのだ。

Microsoft Home of the Futureの不思議

今回の招待イベントの参加者は、LifehackerのGina Trapani氏、CCIAのKen Kurokawa氏、都合がつかなかったthe InquirerのMike Magee氏に代わって彼の19歳の息子、氏名は書き留めなかったが技術的なブログか何かを運営しているボストンの老紳士、そして私の5名だった。

おそらく、全体としては10名ほどが招待客として厳選されたのだろう。というのも対象者はMicrosoftに好意的でない人々だからだ (Microsoftの担当者によるとeWeekのSteven J. Vaughan-Nichols氏も招待したそうだが、当の本人はそんな招待は受けていないと言っていた)。

とにかく今回の参加者は5名だった。夕食会の翌日、最初の公式イベントは秘密保持契約(NDA)に同意したうえでのMicrosoft Home of the Futureの見学ツアーだった。

Inquirerの若者はNDAに同意しなかったためにこのツアーに参加できなかった。私はMicrosoft本社での体験を満喫したかったのでNDAにサインしてツアーに参加したのだが、おかしなことに、NDAの対象になるような本当に新しいテクノロジを目にすることはなかった。「ですが、このようなテクノロジをまとめてご覧になったのは初めてですよね?」 とMicrosoftのマーケティング担当者が尋ねるので、確かに初めてだと答えておいた。だが、同じようなテクノロジが他の多くの場面で使われたり想定されたりしていたことは知っており、それもたいていはもっとさりげないものだった。

このNDAツアーで私の印象に残ったものといえば、Marshall Brainのオンライン小説『 Robotic Nation 』や『 Manna 』くらいのものだ。Kurt Vonnegutが1952年に書いた小説『 Player Piano 』の一部を彷彿とさせるものだった。

Microsoftは、そこに展示したテクノロジの多くとそれらの融合によって未来の生活がどのように変わるのかについて肯定的な見方をしていたが、NDAにより、その楽観的な考え方を読者の皆さんと共有することはできないので、彼らの思い描く未来像については、Brain氏とVonnegut氏の描いた悲観的展望を参考にしてもらいたい。

セキュリティこそが最優先事項だ!

確かにMicrosoftには、セキュリティプログラムのマネージャMichael Howard氏がいる。彼はブログの他に、記事も書いている。どんなに多くのチェックを重ねてもセキュリティのバグが尽きることはないが、Microsoftのセキュリティ開発ライフサイクル(Security Development Lifecycle:SDL)を適用した製品はどれも「セキュリティの欠陥が減少しているので、この方針は間違いなく追求の価値がある」と彼は述べている。

皮肉な見方をする人なら、Microsoftにはずっと前からHoward氏がいたのに、これまでのMicrosoftのソフトウェアにあれほど多くのセキュリティの問題があったのはなぜなのか、と不思議に思うかもしれない。その答え(少なくともMicrosoftの広報担当者が認めたもの)は、今や首脳陣がこぞって「セキュリティ教」に改宗し、最近になってあらゆる事情が変わったため、ということのようだ。今やIISはApacheよりもセキュリティ性が高く(パッチ数の比較による。ただしこれを評価の基準にすることには議論の余地がある)、Vistaに至ってはアンチウイルスソフトウェアが要らないほど、これまでのWindowsのなかでは卓越したセキュリティ性を備えている、とHoward氏は主張していた。

ということで、次はVistaそのものに話題を移すとしよう。

行け行けVista! Vista万歳!

Vistaはすばらしい。高精細ビデオ(HDV)のキャプチャや編集ができる。また、心臓の鼓動が高鳴り、コンピュータ上空が常に晴れ渡るくらいに、今よりずっと優れたコンピューティングを体験することができる。

困ったことにLifehackerのGinaが、Vistaのイノベーションと呼ばれるものの多くはずいぶん前からMac OS Xで利用できたものですよね、と指摘した。AppleのノートPCを携えていた彼女の態度は、明らかにVistaに対して懐疑的だった。

一方、私の質問は、Vistaの過大なハードウェア要件が私の使っているビデオ編集ソフトウェア(私がWindowsを個人的に利用するのはビデオ編集のときだけである)のハードウェア要件とあいまって、Vista実行のために新しいハードウェアへの多額の投資を強いることにならないか、というものだった。実際、SonyのVegasのようなプロレベルのビデオ編集ソフトウェアをWindowsで動かすためにハードウェアに追加投資するくらいなら、Appleのハードウェアを購入するほうがVistaを実行可能なビデオ編集用のハードウェアよりも安く上がるのではないか、と大いに疑問に感じていたのだ。

だが、まともな回答は得られなかった。名刺の肩書は「General Manager PMG Future(LH)」となっているShanen Boettcher氏の答えは、場合によりけりだろうが、アプリケーションが「Vistaに最適化されていれば」問題が緩和されることは間違いない、というものだった。

気の毒なことに、Boettcher氏の今回の主な役割は、5つ(「途上国の市場」にしか流通しないStarter Editionも含めると6つ)のバージョンのVistaに対する我々参加者の理解を深め、やがて入手できるようになるこれらのバージョンの価格とねらいがそれぞれに異なっていることをわからせることだった。

なぜそんなに多くの選択肢が用意されているのか、私にはまだよくわからない。ただどうやら、メディアタイプのアプリケーションとビジネスアプリケーションの両方を利用する人にとって役に立つのは、最も高価なUltimate版だけのようだ。それでも、頻繁にコンピュータに手を加える場合は、どのバージョンを使っていても問題が起こる可能性がある。というのは、VistaにはXPですでに問題になっているアクティベーションのユーティリティの機能強化版が組み込まれているからだ。

Microsoftは不完全なVistaのライセンス用語の使用を一部撤回したようだが、仮想化技術を用いて1台のコンピュータ上で複数のOSを実行する我々のような人々が増えていることに対しては何の条項も設けようとはしていない。コンピュータの最先端ユーザの多くにとっては、依然として大きな問題である。

Windowsは私の手には負えない、という態度を私はもう何年もとってきた。ただの1ユーザでしかない私にとっては、Linuxを使い続けることのほうが容易で安全なのだ。こうした多すぎる選択肢、不可解なライセンス、インストール上の制約といったあらゆるものによってVistaへの熱が冷めてしまった今、手の込んだビデオ編集のためにはMac OS X(単純に「Server」と「Desktop」の選択肢しかない)のほうがずっと魅力的に思えてきた。だが、コンピュータを必要とするそれ以外のすべての作業をこなしてくれるのがLinuxであることは言うまでもない。

今回の一連のマーケティングセッションにはVistaについて偏見のない心で臨んだので、Vistaが大成功を収めるとか、これまでのWindowsより劣るといった予想はまったくしていなかった。だが、セッションが終わったときには、総合的に考えて、Vistaのライセンス問題への対処に必要なクロスOSの互換性テストを行うのでもない限り、自分の所有するどのコンピュータにも絶対にVistaは入れたくない、という気持ちになっていた。Vistaの視覚的なデスクトップ効果は魅力的だが、私はその手のデスクトップを好まない。コンピュータは仕事のツールなので、画面は各種アプリケーションで覆われることが多く、いわゆる「デスクトップ」を私が目にするのは、ブート後のほんの数秒の間だけなのだ。

私はVistaなしでも幸せに暮らしている自分の姿が容易に想像できる。だがそれは、あくまで私の場合だ。Microsoftと競合するある企業がよく言っているように、「発想を変えて(think different)」見ることもできるだろう。

Vistaの各種ゲーム

ゲーム関連の話題には興味がなかった。コンピュータでゲームをしないからだ。すでに仕事でモニタを見る時間が長すぎて健康に支障が出るのではないかと心配しているくらいなので、ゲームマニアになったり、コンピュータやゲーム機の前にいる時間を増やしたりするつもりはない。だが、コンピュータゲームに興味のある人々のために言っておこう。確かにVistaはすばらしいし、XBoxも最高だと思う。Microsoftの担当者もそう言っていた。

研究とイノベーション

Microsoft ResearchのBehrooz Chitsaz氏は、Microsoftでの担当業務について興味深い小講演をしてくれた。彼が2004年の発表に使ったスライドは、パワーポイント形式のファイルとしてオンライン公開されていたので、OpenOffice.orgの幾分ぎこちない表示を通して眺めていた。直接聴いた今回の発表には若干新しい情報が含まれていたが、その講演の結論はこうだ。Microsoftの研究はオープンと共有の2語に尽きる。

最近Slashdotに寄せられた非難に関連して、Microsoft Researchの第一の目的はMicrosoftが競合他社に対する攻撃手段として利用できる特許を生み出すことのように思えることが多いのだが、と問いかけたところ、Chitsaz氏の答えは「特許に関する決定はすべて弁護士が行っている」というものだった。

私が言及したSlashdotでの議論を彼は当然知っていたはずだ。だが彼は、Microsoftがどんなふうに特許を「あらゆる人に対してオープン」にしているかについて強調するばかりだった。今度はGPLコードにおけるMicrosoftのイノベーションの利用について尋ねると、彼は肩をすくめて苦笑いするだけで 何も答えてくれなかった。一般的にソフトウェア特許が優れた考え方なのかどうかについても尋ねた。やはり答えはなかったが、マーケティング担当者のNick White氏が大声で、本題に戻るべきだと言った。

Nickは、不穏な方向へと進んだ会話(たいていは私が持ち出したものだが)にとても巧みに口を挟んできた。そうした彼の話題はいつも、的外れなものか貴重な時間や何かを取ってしまうものだった。私がまた別のややこしい質問を試みた後に、もう1人のマーケティング担当者が「我々の担当はプロダクトマーケティングなので、そうしたことは一切わかりません」と言った。奇妙なことに、その言葉は昨夜の夕食会における私の最初の質問に対してNickが答えたのと同じだった。おそらく予め用意された台詞なのだろう。

その後、我々はBlaise Aguera y Arcas氏に会った。自らが立ち上げた企業SeadragonがMicrosoftに買収されたため、今年初めにMicrosoftに加わった人物だ。彼が最初に口を開いたのは、MicrosoftのVirtual EarthがOpenGLや他のクロスプラットフォームの代替技術を利用せずに完全にDirectXに頼り、そのためにWindowsを使わない(その結果Explorerも使わない)人々にとって無意味なものにしておくのはなぜか、と私が尋ねたときだった。

Virtual Earthのマーケティング担当らしいAlex Daley氏が、DirectXだけが必要な機能を備えている、などと言い出したところで、Blaiseがその言葉を遮り、OpenGLでも同じことが可能だ、と答えたのだ。

どう見てもBlaiseは、完全にMicrosoftに取り込まれてはいないようだった。彼は、買収後にSeadragonの元メンバーらとともに同社のソフトウェアからGPL化されたコード(とJPEG2000)をどのようにして削り取ったかをあからさまに語ってくれた。今回の発表者全員のなかで、もっと話を聞かせてほしいと思えたのは彼だけだった。彼は非常に頭がいい。PhotoSynthに対する取り組みを見ればわかる。すばらしい出来なのだが、Windows/Explorerのユーザしか使えないのが非常に残念だ。

さまよい続ける企業

Microsoftは今のところ自らのあるべき姿や向かうべき方向を明確に意識していないのではないか、という印象を持ってその場を去った。その後、予定されたプレゼンテーションとは無関係の社員の何人かと話をする時間があった。「Microsoftキャンパス」はゲートや警備員によって外界と隔てられているわけではなく、普通の公道に一連の無機的なオフィスビルが立ち並んだ形になっている。そのため、いくつかの建物、とりわけ社員用店舗(従業員だけが利用できる施設。Microsoftのソフトウェアはアカデミックプライスで、Microsoftブランドのハードウェアは格安で販売している)の入口付近では、話し込んで疑問をぶつけられる社員を容易に見つけることができた。

ここではMicrosoft関係者の名前は一切出したくないのだが ― 実際、彼らは好意から話をしてくれた ― Ballmer氏が社内の全体から好かれているわけではないこと、少なくとも実際のソフトウェア開発者の一部は(多数派ではないが)すぐにでも彼が退任してRay Ozzie氏に後継者になってほしいと願っていることは、ここに記しておく。たとえOzzie氏でなくても、彼らが後継者に望んでいるのは、Microsoftを除く全世界をMicrosoftの顧客とMicrosoftの計画を邪魔する人々とに二分できるかのような言動だけはとらないことだ。

Microsoftを愛する人々がいる。この企業では、他のユーザを手助けする社外ボランティアを奨励するMost Valuable Professional(MVP)プログラムが実施されている。事実、今回のイベントの企画に協力したTerri Stratton氏は、Microsoftが支援するMVPS.orgというWebサイトの広報担当兼ニュース編集者としてMicrosoftに採用されるまで、数年間ボランティアをしていた人物だ。

Microsoftを嫌う人々も大勢いる。ソフトウェアセキュリティに関する実績に乏しい(また、全般的にソフトウェアの品質が低いことも多い)という理由で嫌う人々がいれば、ビジネスのやり方が気に入らないという人々や、その他の理由を挙げる人々もいる。これまでのところ、多くのコンピュータユーザはたとえMicrosoft製品を使っていてもただMicrosoftに我慢していただけであり、同社の顧客のなかにはあからさまに非難しながらも他に選択肢がないと感じている人々もいるはずだ、と言えなくもない。

多くの社会的な団体からせいぜい大目に見てもらえるのが関の山、という企業で働くことを想像してもらいたい。また、同窓会に出席したコンピュータサイエンス学科の卒業生が、お前はMicrosoftで働いているのかと言われ、まるで後ろめたい病気にかかった者を見るような目をした同窓生たちがゆっくりと後ずさりする様子を想像してほしい。

Microsoftには、熱心に働く聡明な社員が足りないわけではない。また、Microsoftが多くの点で立派な働き場所であることに違いはない。ただ、今回の訪問で耳にしたことや別の機会にMicrosoftの社員や顧客が話してくれたことから想像すると、Microsoftは勢いを失い、一丸となって同じ方向に動こうとしない、まとまりを欠いた組織体制に陥っているようだ。

企業のこうした混乱は、従業員が50名ほどのフットワークの軽い新興企業では予想できることだが、70,000人もの社員を抱える成長しきった企業では容認しがたい状況と言える。Microsoftほどの大企業であれば、インターネット上に気恥ずかしいモンキーダンスの映像が出回るような人物ではなく、それらしく振る舞うプロフェッショナルなマネージャを経営陣に据える必要があるだろう。

相互運用性の面において、Microsoftはここ何年かでいくらか進歩したように思えるが、それでも2歩進んでは3歩下がるといったことを繰り返している。一部の大企業がWindowsとLinuxとの併用を念頭に置いて、できるだけ痛みを抑えてその実施に踏み切りたいと考えて仕方なくMicrosoftを受け入れていたところに、怒りに満ちた抗議を呼ぶようなNovellとの特許協定を実現させたりしているのだ。

Microsoftは、2002年にBruce Perens氏がsincerechoice.orgサイトに掲げた原則にこだわっているように見える。Microsoftが自社のOSやブラウザを利用する人々に対してVirtual EarthやPhotoSynthなど新しいWeb指向テクノロジの利用の一部を制限したいというなら、そうすればいい。それがMicrosoftのビジネスのやり方なのだ。

Googleをはじめとする企業にも、Microsoft製品を使わない我々が利用できる同様の製品が存在する(もしくはすぐに現れるだろう)。MicrosoftがPerens氏による「誠実な選択(Sincere Choice)」フレームワークの範囲内で活動している限り ― 確かにそれは重荷にならず、そのフレームワークを知ってか知らずか、大半のソフトウェア会社はうまくそれに従っているが ― いつか我々はMicrosoftをそれなりのIT企業として認めることになるだろう。

その選択はMicrosoftに委ねられており、現状の経営体制、または新しくより賢明な首脳陣に生まれ変わるかのいずれかの状況において、同社が誠実な態度をとることを決めれば、これまでMicrosoftがとってきた多くの行動によって引き起こされた人々の怒りを静める方向に向かって長い道のりを歩んでいけるだろう、と私は確信している。

最後にZuneについて

今回、好奇心から費用向こう持ち(しかもお土産つき)の旅行に出かけた。報道関係者を対象とした企業の視察旅行に招待されたのは初めてだったので、どんなものか、この目で確かめたかったのだ。「タイムシェア物件のマンションを売り込む宣伝につきあえば旅行に無料でご招待」といった取り引きに似た体験だと思ってもらっていいだろう。私の場合は、タダで旅行ができた代わりに、説得力のない売り込みを聞かされたわけだ。

だが(定価で)250ドルするZuneは、非常にありがたいお土産だった。最初はもらえるとは思っていなかったもので、そのときMicrosoftのマーケティング担当者Tyler Welch氏は、本当はフィードバックがほしいのであって何の見返りも期待せずにプレゼントするわけではないよ、と我々に言っていた。つまり、彼はZuneについて我々がどう思うか、そして我々の読者がどう思うかを知りたかったのだ。そこで私は声を張り上げ、その趣旨に沿った発言をしてきた。「我々の読者の間で評判にしたいと思うなら、SourceForge.netにプロジェクトを登録して、Zune上でLinuxを走らせるか、Linux搭載PCでZuneを使えるようにするかのどちらかでしょう」

キーワードを”ipod”にしてSourceForge.netで検索を行なうと136件の結果が出たが、同じように”zune”で検索したところ、ヒット件数は0件だった。だがそれは2006年12月9日時点のことであり、時間が経てばこのヒット件数は変わるかもしれない。たとえそうなったにせよ、iPod用のオープンソースソフトウェア(いくつかのLinux用のインストーラを含む)を書く開発者は数多くいるだろうが、わざわざZuneのためにオープンソースソフトウェアを書く者はほとんどいないことは目に見えている。

そこで提案をしたい。ZuneにLinuxをインストールするか、ZuneをLinux互換にするユーティリティを書くかのどちらかに興味のある方は、今回手に入った無償のZuneが必要な理由を添えてeditors@ostg.com宛てにメールを送ってほしい。これまでの開発経歴と多方面にわたる要望に基づき、最も活用してくれそうだと我々が判断した人にこのZuneを提供し、開発プラットフォームとして活用していただくことを条件に、あとは自由に使ってもらおうと考えている。

その見返りに我々が求めるのは、成否に関わらずこのハッキング活動に対する納得のいく説明を無理のない期間内にしてもらうことだけだ。ただし、Zuneを受け取って90日後には作業を切り上げていただく。また、「誰がZuneを手に入れたんだ?」という問い合わせが延々と舞い込み続けるのを避けるため、申し込みは12月22日で締め切り、クリスマスの翌日となる26日に選考結果を発表することにしたい。その後、クリスマスシーズンで発送(とそのお返しの発送)の混雑が落ち着く1月2日頃にZuneを発送する予定だ。

以下に、今回のZune提供に際して我々が課す唯一の条件を示す。

  • 米国から郵送された小包を受け取れる国にいること。
  • 税関での問題や関税が生じた場合には、応募者の側で対処してもらわなければならないこと。

我こそはと思われる方はどうかメールを送ってもらいたい。それでは、大勢の方々からの応募を期待しているので、よろしく!

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