欧州委員会、Windowsの技術文書公開でMicrosoftに新たな要求

 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は11月15日、米Microsoftに対し、Windowsに関する相互運用情報を11月23日までに提供しない場合、1日300万ユーロ(380万ドル)の制裁金を科すと通告した。

 欧州委員会の広報官は、「技術文書の省略や欠如は11月23日までに是正され、11月末までにはライセンス取得予定者がすべての技術文書を入手し、検討できるようになると期待している」と述べている。

 欧州委員会は、Microsoft以外のベンダーが、Windowsが稼働するPCと相互運用可能なサーバ・ソフトウェアを開発できるように、Microsoftに対して、Windowsに関する技術文書のライセンスを促す取り組みを2年前から続けている。その間、今回のように期日を設定して同社に対応を迫るといったことが何度も行ってきた。

 文書公開命令は、欧州委員会が2004年3月に下したMicrosoftの反トラスト法違反問題に関する決定の一部であり、欧州委員会はその決定に基づき、Microsoftに対して4億9,700万ユーロの制裁金を科したほか、今年7月にも、情報の提出を怠ったとしてさらに2億8,050万ユーロの制裁金を追加した。

 欧州委員会の競争管理官ニーリー・クロエス氏は、11月15日付けのイギリスの新聞「The Guardian」に掲載されたインタビューで、Microsoftに対する不満を繰り返した。この記事の中で同氏は、「100%の情報を必要としているのに、90%提供していると言われても納得できない。(これらの情報は)数カ月前に提供されるべきだった」と発言している。

 この件についてMicrosoftは11月15日に声明を出したが、新たに設定された期日についてはコメントを避けた。声明の中で同社は、「2004年3月に下された欧州委員会の決定は完全に順守しており、目標達成に向け委員会や監視員と緊密に協力し合っている」と説明している。

 当初Microsoftは、欧州委員会が求める情報の意味がわからないと主張していた。2004年の決定は、Windowsについて十分な情報を提供し、ライバルのサーバ・ソフトウェア・メーカーが、MicrosoftのサーバOSと同様、Windowsとシームレスに連携できる製品を設計できるようにするようMicrosoftに命じた。今年初めに行われた聴聞の後、Microsoftは、欧州委員会の要望を最終的に理解したと表明し、7月19日には最終部分の情報とされるものを提出した。

 それ以来、欧州委員会は、監視員のニール・バレット氏とともに文書の検討作業を続けてきた。バレット氏は、2004年の決定の順守状況を監視するため、Microsoftが選任した監視員だ。

 欧州委員会は15日に出した声明で、「Microsoftは、現在のところ、2004年3月に下された決定を順守するのに必要な情報を提出していない」と主張している。

 欧州委員会の競争問題担当広報官ジョナサン・トッド氏は、「決定をほぼ順守するというのでは不十分。完全な文書でなければ、Microsoftが何を提出しても意味はない」と強調した。

 トッド氏は、来週に設定された期限を過ぎた場合、さらなる制裁金を科すかどうかについては明らかにしなかった。

 なお、Microsoftは今月、次期OS「Windows Vista」をPCメーカー向けに出荷する予定だが、トッド氏は、技術文書に関する議論がVistaの出荷に影響を及ぼすことはないとしている。

 一方、Microsoftは、欧州委員会が定めた技術文書に関する標準を満たすために、300人のスタッフで構成されるチームを設置し、「7月の期日以降は、さまざまな要望や問い合わせに迅速かつ完全に対応している」と主張している。

(ポール・メラー/IDG News Service ブリュッセル支局)

提供:Computerworld.jp