Linux用会計ソフトウェアの現状レポート

この1週間は、GnuCashSQL-LedgerLedgerKMyMoney といった会計ソフト、あるいはフリーソフトウェアとして利用可能な各種スプレッドシートアプリケーションを用いてユーザ各自のスタイルで会計をする方法を紹介してきた。どのソフトも長所と短所があるものの、数年前の状況と比べれば、Linux用会計ソフトウェアが格段の進歩を遂げたことだけは間違いない。

Brian Jones氏の記事ではKMyMoneyに関する不満が色々述べられている一方で、Conrad Canterford氏の記事ではGnuCashを「堅牢で安定したオープンソースの会計ソリューション」と評している。

このように量的にも質的にも充実しつつある会計アプリケーションの分野であるが、税務申告ソフトウェアについては未だ空席状態が続いている。日々の業務をこなす上でフリーソフトウェア形式のアプリケーションは非常に有用な存在となっているのだが、その一方で、フリーソフトウェアないし商用アプリケーションとしてTurboTaxなどのLinux版を作ろうという動きを耳にしたことはない。

その原因はおそらく処理する内容の複雑さに起因するためであり、またLinuxユーザにとってその種の業務はさほどの負担として感じられない点が挙げられるだろう。Linuxユーザの大半にとっての税務計算とは年に1回行えば済むだけの行事であり、税務申請書の作成アプリケーションをわざわざ開発しようという動機に欠けているのである。また会計計算の手法はほぼ固定化されており、1年ごとに大幅な変更をされる性質ではないのに対して、税金関係の法律は適用される国や地域によって異なる他、同一地域においても頻繁な変更が施されるものである。実用的な税務申請アプリケーションを作ろうとすれば、そうした変更にすべて対応しなければならない。

なお読者からは、今回の一連の記事では取り上げなかったGrisbiLedgerSMBQuasar AccountingMoneydanceなどの会計アプリケーションに関する指摘が寄せられている。このうちGrisbiについては1年以上前に取り上げているが、会計ソフトウェアについては今後も追跡を行うつもりであり、その他のアプリケーションについても将来の記事で取り上げる機会があるだろう。

ある読者からは、「Moneydanceを取り上げないのはオープンソースのアプリケーションではないためであろう」という旨のコメントを頂いた。確かに今回は主としてフリーソフトウェアにスポットライトを当てたが、分野によってはフリーソフトウェアが最適なソリューションとはなり得ないケースがあることも承知しているので、プロプライエタリ系のLinux用アプリケーションについても適時取り上げることにしている。

プロプライエタリ系アプリケーションをレビュー記事で取り上げると批判的意見を寄せられることもあるが、Moneydanceについてはそうした理由で無視したのではなく、Linuxでの普及度が低かったからに他ならない。

LedgerSMBに触れなかったのは、登場したばかりのアプリケーションだったからである。LedgerSMBはSQL-Ledgerからの派生ソフトだが、その登場は数カ月前に過ぎない。LedgerSMBのコア開発者の1人であるChristopher Murtagh氏は同アプリケーションを作成した理由について、SQL-Ledgerには対処されていないセキュリティ上の問題が残され続けており、「コミュニティベースの開発体制、リビジョン管理に対するオープンなアクセス、自由に利用可能なマニュアルといったものが、すべて欠けていました」と語っている。このLedgerSMBについても、いつか機会があれば取り上げることになるだろう。

その他にも私どもが記事として取り上げるべき会計アプリケーションをご存じの読者がおられたら、是非とも御一報頂きたい。そうした“緊急報告”用のフォーマットを用意しておくべきかもしれないが、そうしたシステムについては現在検討中である。また、記事の執筆に関して改善すべき点あるいは今後も継続すべき点がある場合、忌憚のないご意見を聞かせて頂ければ幸いである。

一般的なコメントについては専用の送信フォームが用意してあるが、特別な要件などは読者の常用しているメーラーを使って件名を“special report”とした電子メールをeditors@ostg.com宛に送信して頂いても差し支えない。その他、執筆要項に関する提案も歓迎している。

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